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数年たった。王都には女遊びの公爵と気狂いの公爵令嬢の話が囁かれていた。






「聞きました?池にいる蛙を手掴みして食べたのですって」




「私は道端で奇声を挙げて一人踊り狂っていたって聞いたわ」




「前の公爵様もかわいそうね。突然何者かに襲われたのでしょ?あれから6年は経つわね」




「公爵令嬢はその時に気が狂ったのですってね」




「可愛そうだけれども弱すぎるわよね。逃げた上に気が狂うなんてね」




「もう、貴族学校へ通う歳なりますわよ。私の娘と同い年なのよ。同じところに通うなどとんでもないわね。迷惑よ」






映水晶から流れる王都の茶会の会話に失笑が漏れる。思惑通りすぎて高笑いしたくなるけれども、執事長とマーサがいるとは言えだれが見ているやら。




ヘラリとした表情を貼り付けた。






「ああ、腹ただしいですわ。お嬢様、いくらなんでもやりすぎたのでは」




「やり足りないくらいよ。まだあいつには疑われてるようだもの。昨夜も暗殺者が来てたらしいわ。私の"花隠密の者"がすべて片付けたけれども」




「しつこいですわね。あの侯爵家も。聞くところによると候爵令嬢は体が弱いとか。王子妃を狙ってるのでしょうけども、我が公爵家の力を削いだくせに未だお嬢様を狙うなんて」




「でも、"花"からの報告ではね、公爵令嬢は体が弱いのではなくて別の家の間者に毒を盛られていたらしいわよ。足元も見ずに他の家に暗殺者を送るなんて滑稽だわ」




「左様ですな。しかしながら噂腹立たしいものですな。蛙を食べたのなど、食料を止められてしまったからでありませぬか。生き延びねばならぬ故ですのに」




「ふふ。ねぇ、ふたりとも」






私はカーテンを開けた。光が私の顔を照らす。






「王都へ行くわ。お父様あの男からどんなに反対されても。貴族として認められるためには通うしかないのもあるけれども、何よりもっと噂を広げなければね」






ニヤリと笑う。






「何をしようかしら? 私の擬態を見破れるものもいるかしら? 楽しみねぇ」






私の高笑いに二人は表情を引き締めた。さあ、もうすぐ復讐を始めましょう。待っていなさいませ。お父様という名の裏切り者。




ああ、屋敷についたら愚か者のふりをするけれども、学園では本来の姿に戻るべきかもしれないわ。いや、戻るのは愚策ね。もっと後ほどにしなければ。あの場は閉じられた世界。夏までは流石に情報が確定するほど漏れることはないはず。




だって学園は5年前から私の支配下にあるもの。理事長は私の腹心、教師も選ばれし者のみ。私の"花"が潜む学園から私の情報が漏れる前に敵は捕らえるわ。




我が家は祖父の代まで知の公爵家。父が愚か故、祖父から私へ、あの逃げ出した日までにほとんど受け継いだと気付かぬ奴等が悪いのよ。




用心はやり過ぎてなんぼのものであるけれど、愚かな小娘と侮っているのはもろ分かり。




学園では庶民のふりをしても良いかもね。表情をくるくる変えて走り回る姿など、淑女とは正反対よ。




流した噂から遠からずあたっていると評判になるかしら?もしかしたらそのほうが良いかもしれないわ。




そうしたら化粧も野暮な姿にしなければね。




あと2年でデビュタント。それまでに私の本当の姿は隠しましょうか。

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