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 アレンは腕を組んであれこれと考えていた。

 魔神の復活を阻止するには計画を目論む魔族を倒すしかない。

 しかし彼らは人間が入ったこともない土地の深くに潜んでいた。

 全ての魔神の骨と血肉となるものの素材を集めるのにあと一年はかかるだろうというのがアレンの計算だ。

 その間に若者達を鍛え上げ、選抜し、魔神復活阻止の作戦に向かわせるはずだった。

 そこにコンラッドかアーシュラが加われば計画達成の可能性は高くなる。

 アレン達が動けない中、これがベストなのは間違いない。

 だがアーシュラが身重となれば話が違ってくる。少なくともアーシュラ自身は動けないだろう。

 そしてコンラッドも腰痛で直接活躍するのは難しい。

(となると……)

 アレンはコンラッドに照準を合わせた。

「師匠は仕事と腰のことを気にしてるんですよね?」

「それと嫁さんな」

 コンラッドはアーシュラをチラリと見た。

「分かりました。その点はなんとかしましょう」

「なんとかってなんだよ?」

「腰痛に関しては基本的な指導だけならそれほど問題ないはずです。加えて人を寄越します。畑仕事に家事手伝い、子供の面倒まで。何人になるかは分かりませんが完璧にやれる人材と人数を揃えますよ。あとはもちろんですが報酬も弾みます」

 報酬と聞いてコンラッドとアーシュラの耳がぴくりと動いた。

 隙を見つけたアレンは微笑む。

「子育て、大変ですよね? これからお子さんも色々とお金がかかってくるでしょうし」

 コンラッドとアーシュラは互いを見た。

「そりゃあ……」

「まあ……」

 アレンは引き続き笑顔で告げる。

「なら効率的に稼ぎましょうよ。農業もいいですけど、うちで講師をしてくれるならその十倍は出しますよ!」

「十倍……」

 アーシュラは思わず復唱した。

 アレンは畳みかける。

「しかもお子さん達の学費もタダにします。もちろん産まれてくるお子さんもです。滞在費も全て出しますし、辞めたあとには退職金も出します。更に成功報酬として家が一軒建つだけ渡しましょう。今なら高枝ばさみも付けますよ!」

「高枝ばさみ! 欲しかったのよねえ」

 アーシュラの目が輝く。

 ルークはそこかよと内心呆れていた。

 アーシュラはコンラッドに言った。

「行ってきなさい」

「ええ! でも子供は?」

「産むのはわたしだしなんとかなるわ。どうせあなたは慌てるだけでなにもできないしね」

「それはそうだけど……」

「産まれるまで七ヶ月はあるし、その間にさっさと終わらせてくれたらいいわ」

「…………いや、でも子供を置いて行くなんて」

 コンラッドは窓の外で遊ぶ息子二人をチラリと見た。

 決めきれないコンラッドを見てアレンから笑顔が消えた。

「ですが来てもらえないなら先ほど砕いたルークの剣代として二十万ギル払ってもらいます」

 それを聞いてアーシュラは眉をひそめてコンラッドを見る。

「そんなことしたの? そんなお金払えないから十ヶ月お小遣いなしってことで」

「行きます」

 コンラッドは即答した。

 こうして英雄達を育てた師範の再指南が決定した。

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