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「………………は?」

 まさかの事実を知ったルークは驚いていた。

 コンラッドは昔のことを思い出す。

「あの時は寝不足だったからな。俺って遠足前とか寝られない子供だったから」

 話を聞いていたアレンは抗議した。

「いや、それだけじゃないでしょう? だから俺が言ったじゃないですか。知らない土地になってるよく分からない実は食べない方がいいって」

「だって腹減ってたし、旨そうだったじゃねえか。お前も俺が食えたら食うつもりだったんだろ?」

「まあ、それはそうですけど。でもやっぱりやめといた方がよかったんですよ。全然虫とかがいなかったじゃないですか。おかしいですよ。あの実だけ残ってるんですから」

「そこは俺も思った。でも行動食も飽きたし、仕方なかったんだ」

 二人の話を聞いてルークは動揺していた。

「え? え? え? じゃあコンラッドさんが伝説に一度も出ない理由って」

 アレンは呆れて頷いた。

「最後の戦いの前に拾い食いをしたせいで腹を痛めて休んでいたからだ。それがあまりにも恥ずかしかったから誰にも言うなってことになり、俺達も黙っていた」

「ええ…………」

 ルークに唖然としながら見られ、コンラッドは両手で顔を覆った。

「だって恥ずかしいじゃん」

 伝説の裏にこんな与太話があったとは。ルークは呆れざる得ない。

 それはアレンも同様だ。

「師匠がいたら、ドレッドノートを倒していたのは俺じゃなかったでしょうね」

「予定では俺のサポートだったもんな。あの時は本当に悪かった……」

 コンラッドも失敗した自覚は大いにあり、反省していた。

「もういいですよ。結局誰一人として欠けることなくドレッドノートを倒せましたから。それよりも更なる困難が今まさに起ころうとしているんです。こっちの方が問題ですよ」

「それで? 俺になにをしろと?」

 訝しむコンラッドにアレンは言った。

「単刀直入に言います。うちの学校に来てください。そして魔神を倒せる次世代の英雄を育てていただきたい」

「やだ」

 即答かよ! とルークは驚いた。

 アレンは嘆息した。

「即答ですか。理由は?」

「二つある。一つは畑。俺が働かないと家族がメシを食っていけない」

「もう一つは?」

「……腰痛」

 コンラッドは自分の腰に手を当てた。

「腰を痛めてな。仕事くらいは大丈夫だけど戦うのは厳しい。今の俺が全力を出したら三分も保たないよ」

「情けないですね」

「ほっとけ」

 コンラッドはムッとして言い返した。

 アレンは少し考える。

「腰ですか。でも教えるくらいはできるでしょう?」

「だから畑があるんだよ。それに嫁さんがなんて言うか……」

 コンラッドは明らかに怯えていた。

 こんな男を怖がらせるなんてどんな嫁だとルークは訝しんだ。

 すると入り口のドアが開き、話していたコンラッドの奥さんが帰ってきた。

「ただいまー。あら。来てたの。アレン」

 コンラッドの奥さんは黒い長髪をさらりと揺らしていた。大きな胸とお尻が麻の服とエプロンで隠れており、手には買い物で買った商品が入った袋を持っている。

 アレンはその姿に少し驚きながら挨拶を返した。

「久しぶりだね。アーシュラ。元気そうでよかった」

「アーシュラ? ってまさか!」

 ルークはアレンが口にした名前を驚きをもって繰り返す。

 それは魔王討伐の英雄の一人、伝説の黒魔術師の名前だった。

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