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「すいませんでした!」

 家の中へ案内されたルークはコンラッドに頭を下げた。

 その横で赤髪のアレンはニコリと笑う。

「まあ、こいつもそう言ってるんで。悪い奴じゃないんです。ただ妙にプライドが高くて行動力があるだけで」

「別にいいよ。でも二十万は払えないからな」

 コンラッドは気まずそうにする。そして十年ぶりにあった弟子の変化に少し驚いていた。

「それにしても大人になったな」

「そりゃあそうですよ。師匠はもうすっかりおじさんですね。あの頃はまだ三十歳とかでしたっけ?」

「二十八。だから今は三十八だ。まだギリギリ四十手前だよ。そっちは教師なのか?」

「そんな感じです。次世代を育てる必要があると思って仲間と一緒に養成学校を作ったんです。そこにいる責任者の一人という感じですかね」

「偉くなったんだなあ。俺も歳を取るわけだ」

 コンラッドはしんみりしてさっき淹れた紅茶を飲んだ。

「それで? なんでこんな田舎まで来たんだ?」

「あれ? 聞いてませんでした? 手紙は?」

「まだ読んでない」

「そうですか。元々は郵送するつもりだったんですけど、ルークが持っていくと言って。でも一人だとトラブルになりそうだし、依頼も依頼なんでやっぱり俺が行くことにしたんですよ。そしたらこいつが勝手にいなくなりましてね」

 ルークは申し訳なさそうに頭を垂れていた。

「すいません…………」

「もういいって。自分の弟子が随分慕われてるみたいで安心したよ。それで、依頼って?」

 アレンの顔から笑みが消え、真剣な表情になった。

「……ドレッドノート討伐から十年経ちました。人間は魔族や魔獣を追いやり、土地を奪い、繁栄しました。再開発が進み、今では急速に街が広がっているんですよ」

「へえ。そうなのか。うちとは縁遠い話だな」

 窓の外には十年前からなにも変わらない風景があった。

 アレンは肩をすくめた。

「何事も急速に推し進めれば反発があります。各地では魔族や魔獣による強襲が増えました。しかし人間はそれを追い払い続けています。そして更なる土地を求め、多くの魔族を殺し、彼らの地を奪っています。だけど人間は魔族を追い詰めすぎてしまった」

「と言うと?」

「ドレッドノートを失った魔族は新たな力を欲しました。そして古に葬り去られた神を見つけた。正確にはその骨をです」

「それってまさか」

 アレンは頷く。

「ええ。魔神プルート。千年前に世界を滅ぼしかけたと言われるそれを魔族は復活しようとしているそうです。もしそんな代物が復活すれば」

「人類は滅びる……か」

 コンラッドは小さく溜息をつき、アレンはコクリと頷いた。

「まあなんか、大変なのは分かったよ。でもそれと俺にどんな関係があるんだ? あの時なにもできなかった俺と」

「魔王討伐戦ですか」

 十年前のことを思い出し、アレンは苦笑した。

 コンラッドもあまり思い出したくはないらしく、口を尖らせる。

「そうだよ」

「あれは大変でしたねえ」

 アレンはやれやれと肩をすくめて続けた。

「なんせ討伐直前になって師匠がお腹を壊すんですから」

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