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「開発権の譲渡ですとッ!?」

 ピエールは思わず声を荒らげた。

 だがコンラッドは笑顔のままだ。

「ええ。あの森が気に入りましてね。王に頼んで譲ってもらったんです」

「し、しかしあの森は私の――」

「この砦まではそうです。でもこの先は誰のものでもない。そう言ったのは他でもないあなたでは?」

「そ、それは…………」

 ピエールは反論できなかった。

 誰の土地でもないから勝手に奪い取り開発していたのだ。

 それと同じことをコンラッドにやられてしまった。

「いやあ、大変でしたよ。昨日あなたの通信機をお借りしましてね。あの森が欲しいから正式な文書を届けてくれと言ったら隣町まで来いと言われまして。どうもここまでは魔術速達が及んでないそうで。だから今日の昼に取りに行ってたんです」

「そ、そうだったんですか…………」

 ピエールの笑みがひくつく。

 内心は勝手に森を取られて激怒していた。しかし王の勅書があってはなにもできない。

 コンラッドは人差し指を立てた。

「ああ。それとあなたのことも報告しておきました。どうやら相当阿漕なことをしているとね。その証拠となるものもあなたが留守の間に揃えておきましたよ」

「なっ! そ、それじゃああの襲撃は私を砦と屋敷から離れさせる為にッ!?」

 ピエールは青ざめながらも一連の流れを理解した。

 コンラッドは面白そうに笑う。

「おや。察しがいい。まあ、あれはあなたの覚悟を見極めるテストでもありましたけどね。屋敷に残り、この町や砦を守るのなら不正の件は言わないでおこうと思ったんです。でも残念だ。あなたにはそんな気高さは微塵もないみたいでした」

「ぐうぅ…………」

 ピエールは悔しがった。

 そしてそれは怒りに変わった。

「農夫風情が貴族の私をハメただと!? 王の直属かなにか知らないが思い上がるのもいい加減にしろッ! おい! お前達! こいつを殺せ! 今ならまだ間に合う! こいつさえいなくなれば全て元通りだ! なあに、やりようはいくらでもある。また賄賂を渡せば全てなかったことにできるんだからなあっ!」

 コンラッドは肩をすくめた。

「残念だがそれは無理だ」

「なんだとッ!?」

 コンラッドの後ろにはかつての弟子であるロンが立っていた。

「俺が頼んだことはもう一つあってね。俺の土地であるこの森を勝手に開発させないように見張りを立ててもらった。そしてその役にロン達を推薦し、王は了承した。だから今こいつらの役目はあなたの砦を守ることじゃない。俺の森を守ることだ」

「そういうことです」

 ロンは凄みのある表情でピエールを見下ろした。

 部下がいなくなったピエールは尻餅をつく。

 ロンは冷たく告げた。

「不正の証拠は大量にある。これは国家反逆と見なされます。ご同行を。どうか、手荒なまねをさせないでください」

「ひいっ!」

「連れていけ!」

 ロンの部下達がピエールを取り押さえ、連行する。

「やめろ! 私は貴族だぞ! 軽々しく触るな! ああ……。なぜこんなことに…………」

 喚き散らすピエールだが、耳を傾ける者は誰もいなかった。

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