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「カジノ、ね……」

 コンラッドは悩ましげだった。

 クロエは不快そうに眉をひそめる。

「ギャンブルで大金を稼ごうなんて不純です」

 ガルシアは呆れて笑った。

「手っ取り早い方法はそれしかないからな。この街でだって大金を稼ぐのは難しい。盗みか殺し、それが嫌なら商売だが、高額なものを売るには縄張りを仕切ってるマフィアに認められなきゃならねぇ。ちょっとしたミスが命取りになるのがグロリアーナだ」

 コンラッドは顎に手を当てる。

「心配してるのはそこじゃない。勝てるのか?」

 ガルシアはニッと笑った。

「俺を誰だと思ってる? 勝とうと思えばいくらでも勝てるぜ」

「……まあ、そうか」

 納得するコンラッドにクロエは驚いた。

「やるんですか?」

「う~ん……。それしか素早く大金を稼ぐ術がなさそうだしなぁ。マフィアの事務所に強盗するよりは現実的だ」

「強盗!?」

「例えだよ」

 ガルシアは面白がって骨付き肉を食べた。

「いいねぇ。おっさん。やる気あんじゃねぇか」

「ここまで来たんだ。それくらいの覚悟はあるさ」

「ククク。さすがだな。昔からあんたは俺よりよっぽど悪人だぜ。アレンのカスもかわいそうにな。ぶっ壊されちまったんだから。ああはなりたくねぇぜ」

「人聞きが悪いな」

「事実だろうが」

 コンラッドは明確に否定はしなかった。 

 それを見てクロエは不思議がる。

(どういうことだ?)

 レオンは料理をもぐもぐ食べながら言った。

「よく分からねぇけど英雄になれたんだ。多少ぶっ壊れてもいいだろ」

 ガルシアは苦笑する。

「そんな態度じゃお前も壊されるぞ?」

「ああ? 俺は最強だ。壊しはするが壊されはしねぇ」

「だといいがな。このおっさんは一筋縄じゃいかねえ。気を付けろよ」

 コンラッドは気まずそうに笑った。

「俺も昔とは違うさ。今は生徒にも優しくしてる」

 ガルシアは笑い飛ばした。

「ハッ! 通りでガキ共が弱いわけだ。大変だな。誰かを育てるってのは」

「それが大人になるってことさ」

「なら俺はガキのままでいい」

「俺もそうだよ。でもどこかで許されなくなる。年貢を納める羽目になるんだ」

「ククク。おっさんの年貢は多そうだな」

 コンラッドは肩をすくめた。

「話を戻そう。カジノで稼ぐとして、どうやるんだ?」

「決まってるだろ。イカサマだ」

 クロエは目を丸くした。

「イカサマ!?」

「おうよ。俺らがいればカジノなんて楽勝だ」

 コンラッドは苦笑する。

「そこに俺は含まれてるのか?」

「当たり前だろ。おっさんのアレなんてカジノでこそ役に立つだろ」

「お前はなにか誤解してるな。俺のはそんなに便利じゃないよ。戦闘特化だ」

「だとしてもマナは扱える。それも桁外れな上手さだ。それで十分だよ」

 コンラッドはうーんと唸った。

 それを見てクロエは考える。

(先生もなにか能力が使えるのか……。だけど使ってるところは見たことないな……)

 コンラッドはシャオマオが撫でている白黒の獣に気づいた。

「あれは?」

 ガルシアはコンラッドの視線を追った。

「ああ。パン吉だ。シャオマオが連れて来たペットだよ」

 シャオマオはパン吉に抱きついた。

「パン吉はすごい子ヨ。天才パンダネ」

 コンラッドは納得していた。

「あの能力か。どういうものなんだ?」

 ガルシアはフッと笑った。

「おっさんなら一度見れば分かるだろ」

「まあ、大体な」

 するとシャオマオが説明した。

「パン吉の能力『客寄せパンダ』(パパンがパン)はすごいネ。パン吉の手拍子を聞いた人間は絶対に音がする方を向くヨ。ねぇ」

 パン吉は無表情のまま頷いた。

「パン」

 鳴き声を聞いてレオンが納得する。

「あー。パンって鳴くからパンダか」

 クロエは怪しんでいた。

「本当にそうなのか?」

 コンラッドは納得していた。

「たしかに便利そうな能力だな。それとお前の『狼少年』(ダウト)も加われば稼ぐことは可能か……」

 クロエは尋ねた。

「どういう能力なんですか?」

 レオンはムッとする。

「なんとなくは分かるけどな」

 ガルシアはニッと笑って近くにあったマネキンを触った。

「こういう能力だ」

 するとマネキンの姿がガルシアに変わる。

 それを見てクロエは驚いた。

「なっ!? 変身したっ!?」

 ガルシアは得意げに笑った。

「そう。俺の『狼少年』は触ったものの姿を変えることができる。カジノでこれほど便利な能力はねぇぜ!」

 実際その通りだった。

 それが分かっていたからこそコンラッドは腕を組んで天井を見上げた。

「教育的には悪そうだが、それしかないか」


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