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 デミルトンの頭部を見たレダーの判断は迅速だった。

 撤退の合図である石笛を取りだし、すぐさま吹くとその音は戦場全体に響き渡る。

 それを見てベルモンドは感心する。

「オーガのわりに決断が早いな」

 レダーはベルモンドを睨み付けた。

(わざわざデミルトンを殺した証拠を持ってきたのは俺達に退かせたいから。あいつがいないとここで戦って勝っても骨を持ち帰れない。この男も死闘は望んでないと見える。なによりガキ共だけではこの劣勢はひっくり返せない。ここは逃げるのがベストだ。だが)

 レダーはオーガの本能をなんとか抑え付けていた。

 戦いこそオーガ。そこから逃げるのは最も忌避すべきことだ。

 しかし今のレダーは生徒達を管理する立場だった。

(優先すべきはあいつらが生き延びること。マナが使えない今、俺はここでこいつを足止めするしか……)

 そこでレダーは気付いた。

 マナが使える。

 確認すると先程まで手首にあったネリングがなくなっていた。

(ない……。そうか、あのタップか……)

 レダーはすぐさまコンラッドの方を向いた。

 コンラッドはネリングを懐に戻す最中だった。

(これが魔族に渡ったら危ないからな……。回収できてよかった……。マナが使えるってことは……分かるな?)

 コンラッドはレダーを見つめた。

 レダーはその意図を理解する。

(逃げろということか……。こいつも本気のオーガと戦うことにリスクを感じている……。骨が手に入れば勝利だからな……。気に入らない……が……)

 レダーは自分の後方をチラリと見た。

 そこにはリネットを必死に看病するルシールがいた。

(あれを人質に取ればまだ――)

 そうレダーが考えた瞬間だった。

 ゾッとするほどの殺気がベルモンドから発せられる。

 かと思えばレダーの肩を魔力の矢が射貫いていた。

「があっ!」

 痛みに叫びながらレダーが向き直すとベルモンドは冷たく告げた。

「馬鹿なことを考えるな」

 その圧力にレダーは左肩を押さえながら冷や汗を流した。

(全く反応できなかった……。こいつは……ヤバい……)

 レダーはゴクリとつばを飲むと、マナを足に纏い、素早く森の中に飛び込んだ。

(この借りは必ず返す!)

 復讐の決意をするとレダーは深い森の奥へと消えていった。


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