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ガタイのいい短髪で細目の若者であるロンは驚いていた。
突然現れて敵味方関係なしに倒しのけた男が昔の先生だったのだから当然だ。
コンラッドが魔王討伐に連れてった四人以外にも多くの生徒がおり、ロンはその中の一人だった。
コンラッドは久々に教え子の顔を見て呆れていた。
「おう。ロン。なにやってるんだ。こんなところで」
「それはオレの台詞ですよ……」
げんなりするロンの背後でピエールが叫んだ。
「なにをしてる! 奴らが逃げるぞ!」
「んなこと言われてもなあ……」
ロンはコンラッドを見て頭の後ろを掻いた。
エリンを捕まえるにはまずコンラッドを倒さないといけない。
結局追うことはできずエリン達は森の中に消えてしまった。
それを見てピエールが激怒する。
「見ろ! 奴らが逃げたではないか! ロン! 邪魔をしたその男を捕らえろ!」
ロンはピエールを横目で見てからコンラッドに向き直した。
「……だそうなんですけど」
コンラッドは余裕げ笑う。
「やってみるか?」
「……勘弁してください。でもこれも仕事なんですよ」
「仕方ないな。俺も聞きたいことがあるし、雇い主のところまで連れてってくれ」
「すいません……」
ロンは謝るとコンラッドを砦まで先導した。
そこへ部下のウィーラーがやって来る。
「捕まえなくていいんですか?」
「お前がやるか?」
鎧姿のウィーラーはコンラッドをチラリと見た。ただならぬ気配を感じ、ゴクリとつばを飲む。
ロンはさも当たり前のように言った。
「全員でかかっても傷一つ負わせられないよ。それにオレはまだ死にたくない」
「王都から派兵されたあなたにそんなことを言わせるなんて……。何者ですか?」
「オレの先生だよ」
「それってつまり……」
ロンは頷いた。
「ああ。英雄を育てた男だ。ま。オレはなれなかったけどな」
ロンは肩をすくめて苦笑した。
「ならなくていいよ。なったらなったで大変だってアレンも言ってた」
砦に入るとコンラッドは周囲を観察しながらぶっきらぼうにそう言う。
先導していたロンは苦笑した。
「たしかにアレン達は大変そうですしね。でも、やっぱり羨ましいもんですよ。英雄と言われるのを見ると」
コンラッドはふっと笑った。
「連れてかなかったことを恨んでるか?」
「いえ。全然。オレは全く足りてなかった。それだけです」
「全くはいいすぎだよ。お前はよく努力していた」
コンラッドは褒めるが、ロンは昔を思い出して複雑そうだった。
「褒め言葉として受け取っておきます」
ロンはそう告げるとピエールが待つ部屋の扉を開けた。




