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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世代の勇者「短編シリーズ」

世代の勇者「産まれてきた意味」

作者: グミ

本編「世代の勇者」に登場するキャラクターの過去編です。

///???



「何でお前は!言われた事が出来ないんだ!!」


「お前って、何で生きてんの?」


「あんたなんて…産まなきゃよかった…」


(俺って…何なんだろう)


        「産まれてきた意味」


最初は…些細なきっかけだった。箸が持てない。人と話せない。勉強が出来ない。仕事が出来ない。出来ない事が多いと殴られる日々。

いつからか痛みもなくなって…人間じゃないと言われる様になった。


(何で…生きてんだろ…)

痛みが分からなくても心が苦しい。一刻も早く解放されたい。でも。どうやって?


「みんなは将来どんな大人になりたいですか?」

小学校の頃。よく先生がみんなに聞いていた。みんなが元気に将来を語る中…俺は…


「○○○君は将来どうなりたいの?」

(………)

「##############!」

なんて言ったんだっけ?思い出せない。でももう良い。大人になっても役立たず。夢を叶える力も勇気も行動力もない。


(俺なんて…産まれてこなければ…)

電車の音が鳴り響き、目を閉じた俺は線路に飛び出した。助かりたい。解放されたい。やり直したい。…死にたい。




でも俺は死ねなかった。




目が覚めたら薄暗い部屋の中に倒れていて、青い肌の怪物が笑いながら俺を見ていた。


「ヤッタゾ!ヤハリ試シテミル価値ハアッタ!!」

「………」

ここは死後の世界なのだろうか?見た事ない怪物に日本とは思えない様な壁。地下?なのだろうか…


「オイオマエ?言葉ハ分カルカ?タテルカ?」

「………」

見るからに悪者サイドの怪物は意外な事にこんな俺に手を差し伸べる。歪な手だ。俺はその手を掴み立ち上がる。


「シャベレナイノカ?文字ハカケルカ?」

「………」

喋れないわけじゃないが…何年も声を出していないし、声を出せない環境だったから直ぐには喋れない。……いや…信用出来ないから喋らないだけか…


「ナニカクウカ?パンクウカ?」

「………」

お腹はかなり空いていた。俺の手を握ってトコトコ歩き始める怪物に俺はついていった。


薄暗い部屋の扉を抜け、広い廊下に出た。後ろを振り向くとさっきまであった扉は消えていた。


「………」

「マズハ挨拶カラダナ!広場ヲトオルゾ!」

「………」

長い廊下の右側に扉が出現する。怪物は扉を開け、俺を案内する。


「ミンナ!新シイ仲間ダゾ!!」

「………」

広場には4人の子供がいた。


一番先に近付いて来たのは赤い髪の少年。名前は「レト」。彼は数秒先の未来が見えるらしい。故郷は山深くにあったが、土砂崩れで故郷は崩壊。未来を見たレトだけが生き残り、拾われたらしい。


「ほら見ろ!おれの言った通りじゃん!!」

「あーもーまた負けたぁーーー!!」

「未来予知に勝とうとするなよな」

同時に来たのは青髪の少女と少年。名前は「ソラ」と

「ルーブ」。二人は双子らしく、ソラは物と物の位置を。ルーブは互いの位置を入れ替えることが出来るらしい。昔は二人で一人の二重人格だったせいで酷いいじめを受けていた所を助けられたらしい。


「まってよーー。どこぉ?ひとりはいやぁ…」

遠くにいる薄緑色の髪をした男の子の名前は「アイ」。生まれつき目が見えず、家族に捨てられたらしい。


「………」

「デハアイサ…」

「俺レト!好きな事は人を守る事!後ろの奴はソラとルーブとアイ!宜しくな!」

「ぇえ!!私達の扱い酷いぃーーー!」

「…ツハ終ワッタナ。次ハコッチダ」

またもや俺の手を握った怪物はトコトコと歩き始める。

するとルーブが近づいて来て話し始めた。


「ヒーチャさん?新しいこの人の配属は僕達と同じですか?」

「マダ決マッテナインジャ。後デ教エヨウ」

「分かりました!」

「えぇー!!ヒーちゃんもう行っちゃうの?!」


どうやらこの怪物は「ヒーチャ」と言う名前らしい。名前…俺の名前は何だったか…思い出そうとしても思い出せない。


「………」

「コッチダ」

考えていると赤い扉の部屋に着いた。


「コノ先ハ一人デ進メ。行ケルカ?」

「………」

怪物に言われた通りに俺は扉を開けて歩き始めた。

薄暗いその部屋に俺の歩く足音がコツコツと響く。もしここが死後の世界だとして、さっきの広場が天国で、この部屋で判決が下されるのなら、恐らく俺は地獄に行くだろう。などと考えていると、部屋の奥から女性の声が聞こえた。


「あなたは、何故ここへ来たのですか?」

「………」

答える必要はない。姿も見せずに質問してくる人間は信用以前の問題だから。

俺は声の主に警戒する。その時だった。部屋は突然明るくなり、俺の視界にはピンク髪の天使の様な女性が立っていた。


「………!」

「これなら、答えて頂けますか?」

白いドレスを身に纏い、ピンクの長い髪が微かに揺れる。

[この人なら信用出来る]と、直感で分かるほど、優しい顔立ちで落ち着く声。ただそれが不気味でもあった。


「………」

「ここに来る者は、皆辛い過去をお持ちです。もし、お話なさって下さるのなら、その辛い心を、私は微小なりとも支える事が出来るでしょう。」

「………」

「答えて…頂けませんか?」


恐らく…彼女の言っている事は本心で、心から寄り添ってあげようとしているのだろう。ただ、俺の心には届かなかった。


「………」

「無理に話して頂こうなどとは考えておりません。もし、信用が出来ないのであれば……」

彼女は少し俯き考えた後、手を叩き、笑顔で俺の方を向いて話し始めた。


「私とあなたで旅に出ましょう。少し長い旅になりますが、私達が普段行っている事をご理解して頂ければ、信用して頂けると思います。」

「………」

咄嗟の話の流れに、俺は戸惑った。旅?なんで俺が??信用を勝ち取る為にわざわざ旅に出るのか?



この時に、少しでも反対の意思を示していれば俺は旅に連れて行かれなかっただろう。そして…変われなかっただろう。



旅の話が出た5時間後ぐらいにはその場所を出発した。

馬車が走り、荷台に俺と彼女が乗って居る。馬を走らせているのは「ジン」と言う銀髪で50歳ぐらいの剣士。振り向くと壁や屋根全てが石で出来た大きな城が建っていた。


「………」

「驚きましたか?この土地は悪い魔物が多く生息しています。広場の子供達を守るにはあのくらい頑丈で大きな城を建てないといけなかったのです。」

「おいおい!その説明書みたいな喋り方はやめろよ。吐き気がする!」

荷台の外からジンが大きな声を出した。後から聞いた話だが、彼女とジンは昔、四人のパーティーを組んで旅をしていたらしい。


「申し訳ありません。」

「それの事だよ!」

「………」

「後お前!」

「………!」

「過去に辛い思い出があるのなら同情する。でも言ってくれないと力になれないからな!」

「………」

「フフッ…ジンもお節介ですね」

「お前には負ける。……そう言えばヒーチャから聞いたんだが、そいつ召喚されたんだって?」

「はい!数ヶ月間部屋から出て来なかったから何ごとかと思えば…」

「生物の召喚って莫大なマナと時間と運が必要だろ?やっぱあの爺さん凄いんだな」

「元が元ですからね。」

「そうだな」

二人の会話は途切れる事なく、馬車が走って居る間は常に話していた。2週間ほど馬を走らせ、近くの村から順番に回っていく。


道中二人の子供と白髪の男性を拾った。二人の子供は兄妹で、父親に虐待を受け続けた兄の身体には酷い傷が残っていたり、目立った傷はないが精神が酷く不安定な妹は、風が少し吹く度に小さい体を震わせながらうずくまる。

旅の帰りに拾った白髪の男性は左手に剣を持ち、立ったまま森の中で気絶していた。


この世界には[魔王]と[勇者]がいるが、どちらともあまり良い話を聞かない。どうやら俺が召喚された場所は第二魔王軍の城だったらしく、俺達は俗に言う[魔王軍]と呼ばれる側らしい。正直、魔王も勇者も興味はないし、魔王軍の彼女らの方が良い人である事に間違いはない。白髪の男性が意識を取り戻したのは8年も後になる。森の中で気絶していたのは勇者との戦闘の途中で意識を別世界に飛ばされていたらしい。詳しい話は分からないが、彼は少なくとも勇者に狙われる様な罪人には見えなかった。


世界には色んな人がいて、恵まれない環境や、理解されない人。生まれ付き目が見えない人。特別な才能のせいで一人になった人。この世界に来なければ知ることもなかった事が俺の心を動かしていた。


[人を助ける]


そうだった。子供の時に俺が語った将来の夢は「困ってる人を助けれる人になりたい」だったんだ。その夢を実現して居る人が俺の目の前に居る。


旅が終わり、助けた人達を治療する彼女を見ながら俺は決意した。[人を助けて、守りきる]これがこの世界に産まれてきた俺の。


「生きる意味だ。」















------------

「そう言えば!お前とかそいつとかばかりで呼びにくいから名前教えろ!」

「………」

「思い出せないみたいですよ?」

「あーー。分かった。お前無口だし、喋らないからムシャって名前で呼ぶ!異論はないな?」

「………」

「よしムシャ!守る為には強さが必要だ!俺が鍛えてやる!」

「………」

「嫌か?」

「喜んでますよ」

「………!」

「よし!早速特訓だ!!」

第二魔王軍幹部「ムシャ」

産まれた意味が分からなかった彼は、この世界に来て意味を見出す。



登場人物詳細:一部の人物の情報は控えさせて貰います。


ムシャ 男(24歳)


青い肌の怪物「ヒーチャ」 男(167歳)

未来が見える少年「レト」 男(11歳)

元二重人格の双子「ソラ」 女(10歳)

元二重人格の双子「ルーブ」 男(10歳)

目の見えない男の子「アイ」 男(7歳)


女神のような女性「シャネス」 女(?歳)

お節介な剣士「ジン」 男(?歳)


拾われた兄妹 「カイ」 男(9歳)

拾われた兄妹 「ヒューラ」 女(7歳)

森で気絶していた剣士 「ブラッド」 男(27歳)




登場人物詳細に書かれて居るキャラクターは本編「世代の勇者」で大きく関わります。

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