2 地球平面説
「いつでも陰謀論同好会に来て下さいとは言いましたが・・こうも早く来るとは思いませんでしたね・・」
椅子に座り、少し呆れたように呟くのは陰謀論同好会の会長である日影 読子であり、その正面の椅子に座ってゲームをやっているのは前日に読子にシミュレーション仮説の話を聞かされた笹川 浩史であった
「いや〜っ、日影先輩からシミュレーション仮説の話を聞いてからゲームキャラと自分が重なっちゃって、しばらくはゲームは控えようかなって思ったんですけどね〜」
読子からシミュレーション仮説を聞いて、ほんの少しゲームから離れた笹川であったが、半日経つとその感情も忘れたようにゲームをプレイしていた
「このゲームのこのステージを百回クリアすると隠しステージが現れるってネットで噂になっていて、俺もそれを確かめたくて昨日の夜にネット購入したんです」
「それで徹夜でゲームをしていると・・」
「分かります?」
「ええ、目の下に隈が出来ていますから」
笹川の目元を指差す読子はふと思い出したように言葉を続ける
「そういえばゲーム関係の陰謀論でそのような話がありましたね」
「陰謀論?ゲーム関係にもそんなのあるんですか?」
「はい、ゲーム会社が実際には存在しない「隠し要素」の噂を広めているという陰謀論ですね」
「ゲーム会社がウソの噂を広めているって事ですか?なんでそんな事を・・?」
「その噂を信じたプレイヤーが熱心にゲームをプレイし、隠し要素を探し出そうと時間やお金を費やす事を狙っていると考えられていますね」
「・・それが本当だったら、俺が今やってる事ってゲーム会社の思惑通りの事で、いくらクリアしても隠し要素なんて出てこないって事ですよね?」
「さあ、それは分かりません、本当に隠し要素があるのかもしれませんからね」
フォローを入れる読子ではあるが、笹川のやる気は完全に霧散していた
「・・もうやめておきます」
「そうですか?そのゲームはもうやらないんですか?」
「いえ、噂の真意はともかくとしてゲーム自体は面白かったので、しばらくはやり続けようと思ってます」
「そうですか、いったいどういったゲームなのですか?」
「日影先輩、ゲームに興味あるんですか!」
読子がゲームに興味を示した事に眠そうだった笹川の表情が明るいものになる
「ゲームはパズルゲームしかやらないのですが・・笹川君が気に入ったというゲームがどのようなものなのかには、興味はありますね」
「そうですか!このゲームは元々ラノベ原作で漫画も出版されていて、アニメのメディア展開もされている人気作のゲーム版なんですよ!」
「小説ですか、どういった内容なのですか?」
「異世界転移モノです!」
「異世界転移ですか?」
「そうです!思わぬ事故で異世界に転移してしまった主人公がそこで偶然出逢ったエルフの女性に助けられながら冒険者として活躍していくんです!現代知識を使って、その世界の常識を覆す発明をして、異世界無双で多くの人を助ける英雄と呼ばれる存在になる話なんです!」
笹川は普段の眠そうな態度からは考えられないほど情熱的に作品の魅力を読子に熱弁する
「現代人が異世界転移して、無双する作品ですか・・」
「そうです!すごい面白いんですよ!あ~、俺も異世界に行けたらなー、そうしたら今みたいな退屈な生活とはおさらば出来るのになぁ〜」
目を瞑り、お気に入り作品の主人公と自分を重ね、笹川は異世界へと思いを馳せる
「それなら海外に行くのはダメなのですか?」
「えっ?海外・・ですか?」
読子の素朴な疑問に笹川は目を丸くして固まってしまう
「いやいや、何言ってるんですか、海外旅行と異世界転移はまったく違いますよ、ネットもスマホもない異世界じゃないと!」
ないないと手を振り答える笹川にさらに読子は言葉を続ける
「世界のネット普及率は65パーセント程度だと言われていますからネットのない国もありますよ」
「いや、ほら・・そういう国って危ないじゃないですか・・」
「異世界は安全なのですか?」
「えっ!?い、いや、異世界にはモンスターがいて、危ないんだろうけど・・で、でも外国に行くのとはやっぱり違くて・・俺、英語は話せませんし・・!」
額に汗を流しながら、なんとか言い返そうとする笹川だが、読子の口撃は止まらない
「ん?異世界に転移した場合はその世界の言語は最初から覚えているものなのですか?イチから言語理解するよりも、ある程度の教育を受けている英語の方が習得は楽なのではありませんか?」
「えっ?い、いや・・それは・・その、転移する時に自動で言語は翻訳されているというか・・」
「自動翻訳ですか・・確かに今ではスマホでも自動翻訳機能が付いていますからね」
「そ、そうですよ!そ、それに海外に一人旅行なんて親が許可してくれませんよ」
「異世界なら親が許可をしてくれるのですか?」
「あっ、いや・・許可をもらう前に異世界に行っちゃうんで・・」
「許可をもらわないというのなら海外でも変わらないのでは・・?」
「それは、そうなんですけど・・海外に行っても冒険者にはなれませんし・・」
「冒険家なら世界中にいますよね?エベレスト登頂や北極探索、ボートで世界一周などを行っていると聞きましたけど・・」
日本にも多くの有名な冒険家がおり、エベレスト登頂や南極大陸を横断などを成功させている
「いや、俺がやりたいのは魔物を凶悪な魔物を退治したり、村を山賊から守ったりする冒険者で・・」
「そうなると野生動物と対人戦を想定した戦闘技能が必要になりますね、笹川君は何か軍隊式戦闘術を習得しているのですか?」
「い、いや・・ネットでジークンドーやシステマの動画を見た事はありますけど・・」
「格闘術ですか・・ですか、それでは武器を持った山賊や野生動物と戦う場合には不利なのではありませんか?やはり刀術や銃などの鍛錬が必要になるのでは?」
「それは・・その・・そういうのを覚えるのは異世界に行ってからで・・その・・異世界行ったら本気出すっていうか・・」
「それでは遅いのではないですか?技能を覚えるのには長い年月がかかるのではありませんか?もし簡単に覚えられるのなら山賊も同じようにスキルや魔法を覚えられるのではありませんか?」
「いや、そこは・・俺だけ特別にあっという間に覚えられる的な・・」
もし読子に悪意があって言っているのなら笹川もすぐに話を切り上げる事も出来たかもしれなかった
しかし、読子にあるのは純粋な疑問であり、それ故の理詰めであった
「技能を時間に関係なくおぼえる事が出来る・・それは脳への負荷が心配になりますね・・いきなり頭がパーンと破裂したりするのでは・・?」
「あーもう!それじゃあ、もう弱いままで良いですよ!現代知識チートで商売してボロ儲けしますから!」
異世界冒険者としての挑戦をあきらめ、笹川は異世界商人としての道へと鞍返す
「現代知識ですか?例えばどのようなものを売るのですか?」
「それはもちろん!ボードゲームですよ!」
「ボートゲームですか?」
「そうです!オセロや将棋を販売して儲けるんですよ!」
「ですか、ボードゲームの発祥は紀元前5000年と言われていますから、ある程度の文明がある世界なら、すでにボードゲームが存在しているのではないですか?」
「えっ?ボードゲームってそんなに古くからあるんですか!?」
「それに販売するにしても諸作権がなければ他の商人が同じ物を作ってしまうでしょうね」
「あっ・・そ、そんな・・」
笹川の異世界商人としての目論みはあっと言う間に挫折をむかえた
「い、いや!また売る物はありますよ!ボードゲームがダメならマヨネーズを売ります!」
「マヨネーズですか?それはなぜ?」
「ふふふっ、知らないんですか日影先輩、マヨネーズって卵とお酢と油を混ぜ合わせれば出来る調味料なんですよ」
笹川は異世界転移モノのラノベから得た知識を自慢げに披露する
「ん?異世界には卵や油やお酢があるの・・」
「あります!異世界には日本と同じものが揃っているんです!」
読子が思い浮かべるであろう疑問を先回りして防ぐために、笹川が口を挟む
「そうですか・・」
「どうですか日影先輩!マヨネーズを大量生産して異世界の料理に革命を起こし、俺は異世界に名を残す大商人になってやりますよ!」
「大量生産して、大商人に・・ですか・・」
この時、読子の頭の中では・・
現地の需要や競合状況を把握しなくて大丈夫なのか?
適切な価格設定や販売戦略を立てる必要はないのか?
といった突っ込みところがいくつも思い付いていたのだが、それよりも先に最も大切な事を笹川に伝える
「なぜ?異世界でマヨネーズが流行ると言えるのですか?」
「えっ?・・いや、マヨネーズって美味しいじゃないですか!生野菜に付けるだけて美味しくなるならバカ売れ間違いなしでしょう!」
「マヨネーズが日本で最初に発売された時、まったく売れなかったそうですけど・・」
「えっ!?う、うそだ!マヨネーズみたいな美味しいものが売れないなんてあるわけないですよ!」
「当時の日本にはまだ野菜を生で食べる習慣はなく、日本人にとって西洋の調味料であるマヨネーズに馴染みがなかったためにマヨネーズをポマードと間違えられたというエピソードもあったそうですよ」
「ポマード?」
「油性の整髪料で強い固定力と艶のある仕上がりが特徴であり、日本では乾いた髪がぼさぼさになりがちだった男性の整髪に使っていたそうです」
「くっ!そ、それなら異世界にはポマードはないので間違われる事はありません!」
「日本と同じものがあるのでは?」
「ポマードだけないんです!」
「・・そうですか」
もはや支離滅裂となっている笹川の言葉に1つ頷く読子
「・・笹川君は実際にマヨネーズを手作りした事はあるのですか?」
「えっ?・・い、いや・・作った事はまたないですけど・・」
「はあ〜、マヨネーズの手作りって結構手間がかかっているのですよ」
「えっ?そうなんですか!」
「マヨネーズにするには油と水の界面張力を弱めて油の分子を水の中に入り込ませて完全に混ざ合った乳化状態にしなければいけません、そのためには油は少しずつ入れながらかき混ぜ、滑らかになってからまた油を足してまた混ぜるを繰り返さねばいけませんよ」
「えっ?それだと大量生産は難しいんじゃ・・?」
「そうですね、工業用ミキサーが異世界にあれば大量に作る事は可能かもしれませんか、マヨネーズは空気に触れると酸化して味が変わってしまいますから空気が入らない容器でなければ保存も効かず、販売するのは難しいと思いますよ」
「うっ、うぐぐぐぐっ・・異世界で売れる定番のはずなのに・・!!」
「もし異世界にそれらすべてが揃っているとして、それならもうすでに誰がかマヨネーズを大量生産して商売している可能性が高いと思いますよ」
笹川はここに至って理解する
(日影先輩と異世界転移は合わない!!)
完全理屈タイプの読子にとって、笹川が思い描くご都合主義の異世界転移は突っ込みところが多過ぎるのだ
「そ、それなら異世界転移して出逢った女の子達と仲良くなったら、その後はなにもせずに女性達とのんびり生活をしていきます!これなら戦わないし、商売もしませんよ!」
鼻息荒く言い募る笹川に読子は真っ先に思い浮かべた異世界転移してどうやって女の子と出逢うのか?という疑問を口にすると本気で泣いてしまいそうな笹川の様子に口にするのは止めておいた、代わりにもう一つの疑問を口にする
「異世界で女性と仲良くすると言っていますけど・・3次元の笹川君が転移をするという事はその異世界はもちろん3次元であり、当然出逢う女性は笹川君が大嫌いだと明言している3次元になるのではありませんか?」
「・・あっ!」
読子の言葉に愕然とした顔になる笹川にさらにダメ押しとなる一言
「それに異世界に転移したら、笹川君が大好きなゲームも出来なくなりますよね?」
「えっ?」
「ゲーム機本体を持ち込んだとしても使うには電気が必要ですし、電圧の調整が出来なければゲーム機本体が故障してしまうでしょう」
電圧の違いが機械の故障の原因となる主な理由は電気回路内の電子部品が設計された電圧範囲を超えた場合に発生することが多いためである
「ゲームが出来ない・・ゲームが出来ない・・そ、そんな・・俺が夢見ていた異世界転移が・・そんなハイリスクがあるなんて・・」
椅子から崩れ落ちるように地面によつん這いになって項垂れる笹川は涙を溜めた瞳を読子に向ける
「ヒドイ!俺の夢を粉々に打ち砕くなんて!!日影先輩の悪霊!怨霊!魑魅魍魎!!」
「なぜ、幽霊縛りなのかにとても悪意を感じるのですか・・」
「ううっ・・なんでこの世界は3次元なんだ・・平べったかったら、こんな苦悩を味わう事もなかったというのに・・」
ガックリと肩を落とした笹川のその言葉に読子はピクリと反応する
「おや?笹川君は地球平面説の支持者だったのですか?」
「えっ?地球平面説?なんですか、それ?」
「本当は地球は平面で宇宙は存在せず、上空にはドーム状の天井があり、地球が丸いというのは科学者や政府が嘘をついているという陰謀論です」
「はっ?なんですか、そのバカみたいな陰謀論は?地球が丸い事なんで衛星画像を見ればまる分かりなのに、それってずいぶんと昔の陰謀論ですよね?」
「いえ、150年以上しぶとく生き残っている陰謀論であり、米国では今も600万人の支持者のいるわりと有名な陰謀論ですね」
「今も!?えっ、なんでそんな陰謀論を信じているんですか!?」
「おやおや、笹川君、地球平面説に興味津々のようですね」
「あっ、いや、なんでそんな馬鹿みたいな説が今もあるのか疑問に思っただけなんですけど・・」
「それでは今日は地球平面説の話をしましょう」
笹川が信じられない表情をしている中、読子はにこりと笑みを浮かべると地球平面説の話を始める
「地球平面論者の言い分では地球は平面であり、北極を中心に、端は氷の壁で囲まれていて、それが南極であり、空にはドーム状の天井があり、宇宙は存在しておらず、太陽と月は同じ大きさで地球の上空4,800kmの高さで24時間をかけて周回しているとの主張ですね」
「なんかもう・・無茶苦茶ですね、よくそんな話を信じる人達がいますね」
「あら?笹川君は信じられないのですか?」
「いや、普通は信じられないでしょう、端を氷で囲まれているって、それじゃあマゼランはどうやって地球一周したんですか?」
「笹川君はマゼランが世界を一周したところを確認したのですか?」
「えっ?確認なんて出来るわけないじゃないですか」
「それでは本当に世界を一周したのか、わからないですよね?平面の世界を円を描くようにくるりと回っただけなのかもしれませんよね」
中指と人差し指を立てた手を下に向けてコンパスの動きを模倣する読子
「けど、宇宙が存在しないは言い過ぎでしょう?夜に空を見れば星空だって見えるのに」
「それは本物の星だと言えるのですか?」
「えっ?いや・・」
「プラネタリウムのように天井に映し出されている映像だとは思いませんか?」
「映像って・・それじゃあ宇宙飛行士はどうなるんですか?アポロ計画では米国は月まで行っているんですよ」
「アポロの月面着陸には映像の不自然さや放射線の問題、着陸船の軌跡などの不可解な点があり、捏造でフェイク映像であるという陰謀論もあるのですよ」
「えっ?月面着陸が捏造って、さすがにそれはないんじゃ・・?」
「ないと言い切れるのですか?」
「言い切るとまでは言いませんけど・・」
「それでも太陽が地球の周りを回っているなんで・・昔の天動説じゃないんですから・・」
「笹川君は天動説は間違い、地動説が正しいのだと自ら立証したのですか?地球は時速1700キロメートルの速さで自転しているといいますけど、なぜ私達はその回転を感じる事が出来ないのでしょう?」
「いや、それは分からないですけど・・言われてみれば確かにおかしいのかな?・・時速1700キロなんてめちゃくちゃ早い速度ですよね、なんでそんな高速回転を感じないんだ?・・もしかして本当に地球は平面なのかも・・!!」
「あら?笹川君は地球平面説を信じるというのですか?」
「また、疑わしいですけど・・もしかして本当なのかもと・・」
「そうですか」
そこで読子は口元に悪い笑みを浮かべると窓辺に近づき、そこから映る空に目をやる
「・・笹川君、ここから花火が見えないのはなぜなのでしょうか?」
「えっ?花火ですか」
笹川は突然の花火の話に戸惑い、キョトンとした表情になってしまう
「大きな打ち上げ花火は日本の風物詩であり、夏には各地で有名な花火大会が数多く行われていますよね、なのにここから見る事が出来ないのはなぜなのでしょうか?」
「それは遠いから見えないだけでしょう?」
「そうですか、遠くて視界に入らないというわけですね・・ですか、屋上から見た時に花火の上の方だけが微かに見えた時があったのですか、それはなぜなのでしょうか?」
「そ、それは・・屋上たから障害物に邪魔される事なく見えたからじゃないんですか・・?」
「それだと、なぜ花火の上部分しか見えなかったのでしょうか?地球が平面だとするとおかしいですよね?平面なら障害物さえなければ花火すべてが見えるはずではありませんか?」
「いや、それは・・」
「これだと地球は球体であり、曲率によって花火が見えにくくなっているという事になってしまうのでは?」
「うっ!?うぐぐっ・・そ、それなら!!」
頬に指を当てて首を傾げて、悪戯心に満ちた笑みで問い掛けてくる読子に何も言い返せなくなってしまった笹川は先程読子自身が言っていた事を思い出す
「なんで俺達は地球の自転を感じないんですか!」
「笹川君は電車に乗った事はありますよね、その時に電車で眠ってしまった事はありませんか?」
「なんですか突然?そりゃあ徹夜で並んでゲームを買いに行った帰りにうっかり寝ちゃって乗り過ごした事はありますけど・・それと地球の自転を感じない事と関係があるんですか?」
「都市間を結ぶ幹線鉄道の多くが時速60km〜90kmの間なのですか、笹川君はそんな速度の中で眠ってしまったという事ですよね?」
「えっ?そうですけど・・でもそれは電車に乗っている時はそんな速度で動いているなんて感覚ありませんよ」
「地球の自転スピードを感じないのもそれと同じなのではありませんか?」
「えっ?」
「私達は地球の表面で地球と一緒に回転しているのだから、いくら地球が時速1700キロで自転していようとも、その速度を感じる事が出来ないのではないですか?」
「あ、あれ?そう言われると・・そうなのかも・・って!なんなんですか日影先輩!!」
「なにとは?」
「日影先輩は地球平面説を支持していたんじゃないんですか?なんでいきなり反対意見を出すんですか!?」
「私は別に地球平面説を支持しているわけではありませんよ、そんな陰謀論があるという話をしているだけですから」
「なら、なんで俺がはじめに否定した時に反論するような事を言ったんですか」
「それは笹川君が教科書に載ってあるものをそのまま真実としていたからです」
「それって、だめなんですか?」
「笹川君ははじめ地球が丸いのは当たり前だと言いましたよね、それを自分で確かめたのですか?」
「いや、そんな確かめたりなんかはしてませんけど・・」
「自分で確かめもせずに教科書に書いてあるから、常識だから、という理由でなにも考えずに、地球平面説を否定するのは愚かだとは思いませんか?」
「そ、それは・・」
「荒唐無稽な説だと切って捨てるにしても、それは教科書とは違うからという理由だけではなく、実際に自らで地球は丸いのだと確認を行い、そこで自らの目で証拠を見つけた時にこの地球平面説は間違っていると断言出来るものと私は考えていますよ」
髪をかきあげた読子の黒い瞳に見つられ、笹川は見惚れたように顔を赤らめる
「それこそ冒険者となり、この世界が本当に丸いのかを確かめるために地球一周するというのも面白いと思いますよ」
「それは・・勘弁して下さい」
ニコリと意地悪に微笑む読子に羞恥を隠すようにボリボリと頭を掻きながら窓に視線を移す笹川だった




