冷めた太陽
こんな、ありふれた日に
私は今日も歩く。
冷たい道を。
いつも通りの道を。
当たり前のルーティンは自由で閉鎖的でなければならない。
そんな今この瞬間、私は縛られる。
縛られてはいけないという縛りによって。
それは永遠に解けない。
そんなことを考えていても風は私を撫ぜる。
太陽は私を照らす。
いつも通り。
いつも通り。
ドアを開けて飛び交う「おはよう」の記号だって、ほら。
いつも通りだから。
だから。
……だから気に入らない。
鬱憤が溜まっているだとか、ムシャクシャするだとか、そういうことじゃない。
ただ、ただ……。
……私以外の人間にとってもそうなのだろう、毎日変わらずの日々。
それが特別嫌だとか、退屈だとか、そういうんじゃない。
この階段のように、
一歩一歩重ねてきた道のりは必ずしも形になるのだろうか。
振り返ったら見えるあの道の先はどうなっていたのだろうか。
歩いているこの道は果たして正しいのだろうか。
そんな不安が拭われないまま生存の競争を最後まで走り切れたのだろうか。
その後の
報われない虚しさの裏で救われる誰かを、
私は、許せただろうか。
……憎いんじゃない。恨んでるんじゃない。
私のようなチンケな人間がこうして世の風景になれるだけでも幸運に違いない。
満足だ。
満足なんだ。私は。
言い聞かせる。
違う。
本当は、
この自堕落で不公平な環状線が巡り廻るのを止めたかった。
水面下で起こるだけの闘争も、平和も、虚しさも、安らぎも、冷たさも、励ましも、全部要らなかった。
私だけでもこの戦場から抜け出したかった。ずっと。
建物の天辺で叫ぶ。
声なき声の絶鳴を。
叶わない。
知っている。
私の人生の経験を持って分かっている。そんなこと。
届いた試しがないんだ、こんな些細な願いなんて。
……よく督促状は届くが。
大体、今まで思考しているだけで行動なんてしやしなかった。
だからしょうがない。しょうがないのだ。
こうして私は自分自身を傷つけるように癒していく。
そういう風にしか、私を表現できないから。
縛られたままでいいんだ。私は。
だから。もう。
もう。
……
……もし、
……もしも私が、
…………。
…………いや、やめとこう。たらればなんて。
……暖かい。
風が止む。
太陽が陰る。
そんな祝福されたいつも通りの朝。
私は今日、
このくそったれな世界に小さな抵抗をする。
この大きく空を切る歩みによって。
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