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8.悪漢、カツアゲに遭う

誤字報告ありがとうございます。

 

 次の日、ヘイロンはニアを連れて森を出た。

 魔王城に行くには徒歩で十日は掛かる。それまでこのボロの恰好では不衛生極まりない。

 とはいえ、ヘイロンは無一文だ。だからどこか人の集まる場所に行って資金集めをする。


 小さな村が望ましい。きっと誰もヘイロンの事を知らないだろう。

 そしてそんな田舎では害獣や魔物による被害が問題になっていることが多い。少し恩を売って、当面の旅費にでも充てよう。


「――というわけで、今から村に行こうと思う。この近くなら……ロバステが近いな」

「ニアは?」


 心配そうにニアはヘイロンを見た。

 彼女の憂慮は、亜人であること。人間の村では亜人は歓迎されない。厄介ごとを呼び込むと思われているのだ。


「うん、ニアは大丈夫だ。俺も初見で気づかなかったしバレないよ」

「うん……」


 浮かない顔をするニアを励ましてヘイロンは村へと向かう。

 その道中――


「おいそこのお前ら、止まれ」


 二人組に止められた。

 旅人のような風貌をしている。何事かと思えば、彼らは我が物顔でこんなことを言うのだ。


「この先に行くなら通行料を払ってもらう決まりなんだ」

「おかしいなあ。俺が前通った時はそんなのなかったのに」

「つべこべ言わねえで払いやがれ! ひとり銀片、五シャード。二人合わせて銀貨一枚と三シャードだ!」

「うわっ、料金設定エグイ……もう少し安く出来なかったの?」

「うるせぇ! 払えねえなら身体で払ってもらうぜ!」


 掴みかかってきた男の手をヘイロンは軽くいなす。

 そしてカウンターで顔面に重い一撃。脳震盪を起こした男は、背中から地面に倒れて動かなくなった。


「ぐっ……てめえ、いきなりなにす――」


 激高した男をヘイロンの裏拳が仕留める。

 一瞬で男二人を倒したヘイロンに、ニアは驚きに目を丸くした。

 そんな彼らから身包みを剥ごうとしているヘイロンに、さらにドン引きする。


「ハイロ」

「うん?」

「盗むのはわるいこと」


 至極まっとうな事を言ってニアはヘイロンを諫める。

 けれど当の本人は何ら気にしていない。


「いいか、ニア。こいつらはよそ様から略奪を繰り返す極悪人だ。そんな悪い奴から盗みを働く俺は悪い奴だと思うか?」

「うーん……いいひと?」

「せいかーい! また一つ賢くなったな! つまりこれは正当な行いだから気にしなくてもいいってことだ!」


 愉快そうに笑ってヘイロンは着れる衣服と外套に背嚢、それなりの額が入っている財布を手に入れた。


「ニアには少しサイズでかいけど……服なら多少でかくても着れるだろ。足りないものは村で買っていこう。運よく金も手に入った」


 財布の中身は金貨一枚と金片三。それと銀貨五枚に銀片五。

 これだけあれば装備一式揃えるのは問題ない。


「……これ、おかね?」

「ああ、そうか。亜人は人間の通貨使わないもんな」


 男二人を地面に転がして、ヘイロンはニアにお金について説明する。


「俺たちが使う貨幣は、金貨と銀貨の二種類だ」

「このおかね、こわれてる」

「硬貨一枚は、六つの欠片で一枚として扱う。価値は金片一つにつき、銀貨一枚だ」


 つまり、財布の中身の価値を合算すると金貨二枚と金片二、それと銀片五になる。

 けれど金貨は小さい店ではなかなか使えない。価値が高すぎて店側が釣りを払えないからだ。故にこうして銀貨で価値を均等にして扱う。


「少し難しいけど慣れてしまえばどうってことないよ」

「ふうん」


 ニアは金貨を手に取って、その中心に空いている穴を覗く。亜人にとってはこの硬貨の形も面白いのだろう。


 真ん中に穴が空いていて、そこから放射状に亀裂が入っている。六つに分かれた破片を合わせるからこんな形なのだ。

 破片同士くっつけるのは、割れ目を合わせれば簡単につく。硬貨に使われている金属が少し特殊で破片同士引き合って少し力を入れてやれば割れる、といった強度になっている。

 破片にも小さな穴が空けられていて、これに紐を通して持ち歩く人もいる。袋に入れるよりもその方が管理しやすいからだ。


「もう少しで村に着く。今日は野宿しなくて済みそうだな」

「おなかすいた」

「飯も上等な物が食べられそうだ。まったく、道端の悪漢さまさまだよ」


 清々しい笑顔を見せるヘイロンを見て、ニアは若干引いた。


 彼と共に過ごして一日、少しずつこの男のことが分かってきた。

 腕っぷしはかなり強いが人としてズレている所がたくさんあるのだ。

 しかしそれを無理やりに押し通してしまう。そうできる力がヘイロンにはあって、だからこそ彼は自分が少しおかしいということにたぶん気づいていない。


 けれど、ヘイロンはニアを拒まなかった。

 付いていきたいと言ったら、じゃあ一緒に行こうと言ってくれた。

 拒絶されなかったことが、ニアにとっては何よりも嬉しかったのだ。


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