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110.魔女、解法を説く

 


「なんだか面白いことになっているねぇ」


 皆の前に現れたモルガナは笑いながら呑気なことを言う。

 しかしハイドにしがみついて振り回されているニアはそんな言葉に相槌を打つ暇さえない。


「たすけてー-っ!」


 必死に声を張り上げると、モルガナは今一度状況を見回してゆっくりと歩き出した。


「だいたい分かった。なら君はもう少しそのままでいてくれ」

「ええっ!?」

「こちらに襲い掛かられては面倒だからね」


 何をするつもりか分からないが、モルガナはニアに無茶ぶりをする。

 しかしそれを拒める状況になく、ニアは必死にハイドにしがみついた。


 死に物狂いで抵抗するニアを他所に、モルガナはイェイラの傍に寄るとしゃがみ込んだ。


「ああなっているってことは、君では元に戻せなかったってことだね?」

「……っ、ええ。そうよ」


 項垂れたままイェイラは答える。

 無力さに打ちひしがれている彼女にお構いなしにモルガナは淡々と解決策を示した。


「私がどう頑張っても、あの猛獣に出来ることは動きを止めるくらいだ。完全に消すことは出来ない。それは飼い主である君の役目」

「でも、どうやって……っ」


 顔を上げたイェイラは息を呑んで訴える。

 そんな彼女にモルガナは懐を漁るとある物を取り出した。


「強制的に消してしまおう」

「……それは?」


 彼女が取り出したのは何かの液体が入った小瓶だった。

 何をするつもりなのか。不安げにイェイラが問うと、モルガナは手短に説明してくれた。


「これかい? ただの回復薬だ。魔力の回復を助けるもの」

「それで何をするつもり?」


 イェイラにはモルガナの意図が見えなかった。

 あんな何の変哲もない回復薬なんて使って、この状況を何とか出来るわけがない。


「薬は反転、毒にもなる。そして私の得意分野は毒だ」


 モルガナは小瓶の蓋を開けると取り出した小石ほどの鉱物を瓶の中に入れた。

 透明な液体はみるみる泥色になっていく。


「こいつを飲んでもらう」

「これ、大丈夫なんでしょうね……」


 恐る恐る受け取ったイェイラは顔を顰めた。


「回復薬の効能を反転させた。つまりこれを飲むと魔力が無くなっていく。魔力がなければ君の相棒も存在できないだろう?」

「そうね。それしかないみたい」

「ただし副作用はかなり重いものだ。強制的に魔力を枯渇させるんだ。時間が経てば毒素も抜けるけど、身体に残っている間は魔力の回復も出来ない。数日は苦しむことになる」


 ――それでもいいか。

 モルガナが是非を問う前に、イェイラは瓶の中身を飲み干してしまった。


「あっ――それ、全部飲んじゃったか」

「えっ、全部じゃないの!?」

「まあいい。後々とってもきつくなるけど、この状況からは脱したわけだ」


 安堵したようなモルガナの発言と共に、突然の倦怠感と頭痛に見舞われる。

 なんだか動悸もするし、これは魔力が枯渇した時に陥る虚脱の症状と同じだ。


 気分の悪さを飲み込んで、イェイラはハイドの姿を目で追った。

 その直後――


「――ギャッ!」


 叫び声と共にハイドにしがみついていたニアが地面へと投げ出される。

 彼女が必死に食らいついていたハイドは既に消えてしまっていた。


「どうやら一件落着ってやつかな」

「……よかった」


 ほっと一息ついたイェイラの傍に、ニアが駆け寄ってくる。


「イェイラ、だいじょうぶ?」

「ええ、ニアもありがとう。怪我はない?」

「うん!」


 ハイドに立ち向かった時はイェイラも肝を冷やした。

 けれどニアはあんな体験をしたというのに元気である。その様子に苦笑していると、雷火の二人を締め上げていたローゼンが寄ってきた。


「二人とも、怪我はなさそうだが……顔色が悪い」

「大丈夫よ。少し休めば回復するから」


 そうは言ったが、雷火に攻められている現状でゆっくり休めるような状態にもない。

 また先ほどみたく雷火たちが侵入してこないとも限らないのだ。


「早々に敵の大将をどうにかしてくれると良いんだが……」

「ハイロ、がんばってるかなあ」

「あの人なら大丈夫でしょう」


 三人の意見はおおむね一致していた。

 ヘイロンなら何とかしてくれる、というものだ。もちろんそれはモルガナも同じである。


 しかしヘイロンを知らないあの二人は勝手気ままに大口を叩いた。


「俺たちの長がそう簡単にやられるもんか!」

「そうだ! ルプト様はすごいんだぞ!」

「君たち、元気がいいねぇ」


 キャンキャン喚く二人に、グリフの様子を見ていたモルガナが笑って言う。


「ルプト様は俺たち雑兵とは格が違う!」

「そうだ! 簡単に勝てると思うなよ!」

「お前たち、捕虜である自覚はあるのか?」


 溜息を吐きながらローゼンはやれやれと肩を竦めた。


 彼らの気持ちも分からなくもないが……あのヘイロンが負けるとはローゼンは思っていない。

 そしてそれは皆も同じだ。


 けれど――彼らの言う通り、そう易々と勝てる相手でもないのだ。


ここまで読んでくれてありがとうございます!

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