109.幼女、芯を見せる
パソコンが壊れてしまい更新がかなーり遅れてしまいました。
修理から帰ってくるまでまだかかるので、不定期更新になるかもです。もうしわけない。
考えるよりも先に身体が動いていた。
ニアを守るように身を挺して立ち塞がったイェイラはハイドと対峙する。
今のハイドは例えイェイラでも止められないかもしれない。
それを知ったうえで、イェイラは叫んだ。
「ダメよ。それだけはやめて!」
「グッ、ガアアァァァ!!!」
ニアを後ろに庇って相対したイェイラにハイドは吠えた。
怯みそうになる気持ちをぐっと堪えて、イェイラはハイドの身体を抱きしめる。
ここで引いてしまったらあの時と同じことになる。それだけは何としてでも阻止しなければ。
今まで何度もハイドに頼ってきたけれど、もう殺すのも殺されるのもたくさんだ。
だから言い訳を並べて蹲っていることなんて出来ない。
「大丈夫よ。私ならもう大丈夫だから」
「ウ、ウゥゥ……」
宥めるように優しく話しかける。
ハイドの背を撫でながらイェイラはまるで小さな子供のようだと思った。
実際、いつものハイドはそうなのだ。だから、今のこれはとても激しい癇癪と同じようなもの。そう考えればどうして酷い言葉を言えようか。
先ほど暴れてしまったせいでハイドの身体にはたくさんの刃が刺さっていた。
痛ましい姿にイェイラは目を伏せて、自分を恥じる。皆に迷惑をかけて、大事な相棒さえも救ってやれない。
「イィ、イェイラァ……」
「っ、ハイド!」
聞こえた声にイェイラは密着していた身体を少し離して、ハイドの様子を見る。
焦燥が入り交じった主人の様子とは対照的に、ハイド少しだけ落ち着きを取り戻したようにも見える。
「……ダイジョウブ?」
「うん。だからハイドも――」
けれどそれはイェイラの勘違いだった。
「ウゥ……なンデ、ウソツク!?」
「いッ――」
唐突に激昂したハイドはイェイラの身体を押し倒した。
先ほどのラオシャと同じようにその身体を踏み込んで押さえつける。
イェイラにはどうしてハイドが怒っているのか分からなかった。さっきまでの、暴走して暴れている様子とは違う。今のハイドにはちゃんと自我がある。
彼は何かが許せなくて怒っているのだ。
「どっ、どうし――」
「ダイジョウブなンテ、オもッテナイ!」
ハイドは断言した。
彼の言葉にイェイラはハッとする。ハイドにはウソは通じない。こと、自分の気持ちに関しては……ハイドはイェイラの心から生じたものだ。だから彼女の気持ちなんて手に取るように分かっている。
それ故に、ハイドは激昂したのだ。
自分にもそんな易い嘘を吐くのかと。そしてその怒りはイェイラにそう仕向けた大元へと向けられていく。
「アァ、アイツラ……ゼンブコワせバ、ダイジョウブにナル!」
ニヤリと大口を開けてハイドは吠えた。
イェイラはその姿を見て内心、恐怖してしまった。ここで止められなければ、本当にあの時と同じことが起こってしまう。
きっとハイドはすべてを壊してしまうだろう。イェイラがどれだけ辞めてと懇願しても止まらない。
怯えた表情をしたイェイラを見下ろして、ハイドはふと顔を上げた。
誰かが自分の腕を掴んだからだ。
「イェイラ、泣いてるよ」
「……アァ?」
ニアの小さな手がハイドの腕を掴んでいた。
当然、ニアの力ではハイドは止められない。こうして近付くだけでも無謀だ。けれどニアは少しも怯まずにハイドを見据えて声を張り上げる。
「やめてよっ!」
「イイヨ――オマエラ、シシ、シンデくレたら、ヤメル」
ニアの訴えを嘲笑って、ハイドは彼女が掴んでいた腕を振り上げた。
「――っ、ニア!」
投げ飛ばす勢いで腕を振ったハイドだったが、ニアはその手を離さなかった。
子供の力ではしがみつくことなど出来るはずがない。けれどニアはどれだけ振られても飛ばされない。
それどころか、片手を伸ばしてハイドの身体にしがみつくと彼の背後にまわった。
「ウ、ウウゥ!」
背面はハイドの唯一の弱点だ。
ああやって頭の後ろにまわられるとどうにもならない。
とはいえ、張り付いていてもハイドを倒せるわけでもなし。倒せるような策も持ってはいない。
ニアがせいぜい出来ることは、こうしてしがみついて時間を稼ぐことだけだ。
獣化した手ならばかなりの握力が出せる。がっしりと掴んで離さなければ飛ばされることはないとニアは理解した。
(でも……どうしよう)
咆吼をあげて暴れ回るハイドに張り付いてニアは焦った。
ローゼンやイェイラが頑張っても今のハイドはどうにもならなかった。ヘイロンが居てくれたらなんとか出来たけど、ちょうど良くここに来てくれるなんてそんな都合の良い話なんてない。
視界を振り回されるなか、ふと見えた景色にニアは目を見開いた。
ちょうど玉座の間の入り口に人影が見えたのだ。その姿を目にして、ニアは安堵する。
そうだ。
もう一人、この状況をどうにか出来る人がいた。
彼女は帽子のつばを上げて、手に持っていた杖をコツンと打ち付けた。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
応援してやる! 面白かった! そんな気持ちはとってもありがたいです!!
是非とも☆評価、ブクマしてくれると嬉しいです!(@^^)/~~~⭐⭐⭐⭐⭐
いいねボタンもぽちっと押してくれるとモチベ上がります!!