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異世界で、平和を願う。  作者: ちょこぼーらー
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80 ごめんなさい

 首尾よく華を招待することが出来たファーナが屋敷に戻り、待ちわびていたルナリアに華のお泊まりを伝えると、ルナリアは足取り軽く厨房へ打ち合わせをしに向かった。




 昨夜、アレックスとシアが帰った後も、グレイルの帰宅を遅くまで起きて待っていた二人に、連れだって帰って来たアルベルトとラインハルト、グレイルは驚いた。

 しかし長らく家族揃って顔を合わせることもなかった上に、魔獣も出たので心配をかけてしまったのかと思いつつ、帰宅の挨拶をして、魔獣の討伐を労われ、全員で遅い夕食をとった。


 しかしそのあとにグレイルを待っていたのはファーナとルナリアによる尋問だった。


 居間のソファーでファーナとルナリアの正面に一人座らされ、アルベルトとラインハルトはそれぞれ一人掛けのソファーで何事が始まるのかとはらはらしながら見守っている。


『グレイル、あなた好きな娘が出来たんですって?』


『今日、一目惚れしたって聞いたわよ』


『ほう…』


 そんな尋問の始まりだったので、両サイドのアルベルトとラインハルトは興味津々で聞く態勢になった。相手はどんな娘かと。


 グレイルも23になる。

 これまでは離れて暮らしていた上に帝都での付き合いもあるだろうしと、こちらから結婚を急かしたりすることは一切してこなかったが、帰って来た途端に好きな相手が出来たのであれば重畳重畳。

 結婚を考えるのであればこの尋問は避けられない、むしろその娘に好印象を抱くような上手い受け答えをすれば今後の援護が期待出来るぞグレイル!

 等と応援見守りを決め込んだ男二人だったが、相手の名と話を聞くにつれただ見守ってもいられないと気付く。


『そうです。ラジネの店で会って!すごく可愛くて!!』


『そうよね。その気持ちはとっても解るわ。可愛いわよね、ハナ』


『………は?』


『はい!ずっと見ていたいくらい可愛いくて!!』


『それで後付けちゃったの?』


『うっ…。それは…あの』


(ハナ!?ハナって言ったのか!?)


 突然出てきた華の名前にアルベルトが固まっていると、話があらぬ方へ進んでいく。


(後を付けたって言った…!?)


『グレイル?』


『う…、あの、ぽ~っとなってしまって、見ているうちに気が付いたら宿に入っていくところで……け、結果、的に?』


『『『『……………』』』』


『ね、ねえ、グレイル……?その、後を付けたって…、ずっとその娘さんの後ろ姿を見ながら歩いていたってこと…?』


 ルナリアはアレックスとシアの報告を聞いてからずっと考えていた。

 やっと帰って来てこれからこの町の顔のひとつとして務め始めるこの息子が、女の子の後を付いて歩いていたら町の人達からいったいどんな目で見られるのか。

 そして、自分の歩く後ろ姿をずっと知らない男に見られ後を付けられていたと知ったらその娘さんはどれだけ恐ろしい思いをするのだろうかと。


『そ…、そうです』


 それなのに当の本人は少女の後ろ姿を思い出したのか、頬を染めている。


 ルナリアは情けなさに涙が滲んできた。

 罪悪感は無いのか。育て方を間違ってしまったのか。


『ねえ、グレイル…。その娘さんの気持ちを考えたことある?知らない男に後を付けられたって知ったらどんな気持ちになると……喜ぶと思う?怒ると思う?』


 目を潤ませて話すルナリアに、グレイルを見る全員の顔が厳しいものになる。


『お母さんはね、怖くて外を歩けなくなると思うーーー』


 とうとうルナリアの目から涙がぽろぽろと零れ落ち、母親を泣かせてしまったグレイルは大いに狼狽えた。

 グレイルだけではなく、その場の全員がおろおろとし、どうするんだとグレイルを睨み付ける。


『か、母さんっ、その、申し訳ありませんでした…!ごめんなさいっ!』


 自分の行動を恥ずかしい事をしたとしか考えていなかったグレイルが、この付きまといの件に関して初めて申し訳ないと謝罪をした。




 そうしてルナリアが落ち着くのを待ってファーナはグレイルに申し渡した。


 宿に泊まっていることから分かるように、華はこの町の娘ではない。

 会わせてあげることはできるが、当分の間、挨拶以外はグレイルからは華に何もしてはいけない。二人きりで会うのも禁止。

 もちろん町の仕事は疎かにしないで真摯に務めること。


『そういえば商会の重要案件とか…』


『そうよ。でも、それを抜きにしてもハナに何かしたら承知しませんからね』


『う…。肝に銘じます…』


 すでにやらかして反省中ではあるものの、華に会えなくなる事だけは避けたいグレイルだった。





『『ごめんなさい!』』


 翌日、紙とインクを買いにローレンス商会へ来た華とシアは、謝罪の深いお辞儀で迎えられた。

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