7 休憩
よく見れば足元の岩陰に魚が。
川があったことに大喜びで気付かなかったが、あらためて川を注視すればそこかしこに魚が泳いでいる。
(お魚釣りなんてしたことないけど…。籠みたいなのを沈めておけば入ってくれるかな?)
一瞬、作ろうと思っていた武器、竹槍で魚を仕留めることも考えたが、自分が魚たちに翻弄されもてあそばれる想像しか出来なかった。
急いで水から上がり、竹を来たところの段差の上に上げてから自分も登ろうとしたところで、ふと階段を作ることを思い付く。
(これくらいの段差なら3、4段あれば昇り降りがしやすくなるよね!いま作っちゃえ)
早速、とばかりに華は石を集めて段差の下に並べ始めた。
華の頭ほどの石を3列に並べて、石の隙間に小さな石を詰めていく。
満足出来たところで華はカバンから木のスコップを取り出した。
近所の木工所のおじいちゃんが作ってくれた新品のスコップ。
昨日、学校で新しく畑を作ることを話したらわざわざ作ってくれたのだ。
夜に華の家に来て渡されたときは、学校にスコップあるのになんて思いはしたけれど有難く頂いた。
継ぎ目のないスコップの柄は華の手に合わせてあって、端のところには餅をついたうさぎのシルエットが焼き印されている。
兎年生まれの華のマーク。
華とおじいちゃんは同じ兎年生まれだった。
孫でもないのに兄ともども随分とかわいがってくれた。
きっともう会えないけれど。
(大事に使うね)
段差をスコップで削っていって一段目の石の隙間に土を落としながら二段目を作っていく。
二段目が出来たら三段目は段差の上の方を削って土は段差の上の竹の横に積んでいく。
削ってみると粘土っぽい土なので、土器が作れるんじゃないかと思ったのだ。
華のカバンには水筒が入っているが、煮炊きが出来れば山菜を見つけて調理したものを食べられるようになるだろう。
今日のご飯だった乾パンはなるべく取っておきたいし。
それほどかからずに水場までの階段を作ることができた。
このままでも充分なのだが、明日あたりに両サイドに石を積み上げて無駄に立派な階段にしようとしている華としては完成ではない。
しかし、ひとまず竹と蔦と粘土を拠点に運ぶべく出来立ての階段を上った。
迷うほどの距離もないが、印をたどり難無く藤棚さんまで戻ってこられた。
何往復かして竹蔦粘土を運び終え、段差の上で樹から垂らした三つ編みの蔦も必要がなくなったので回収した。
藤棚さんに戻って来た華は藤棚さんの柱のそばに落ち葉の絨毯をかき集め、その近くの地面を川原から持ってきた石で小さく囲んでその中にも落ち葉を少し積んだ。
焚き付け用にカバンに入れていた古新聞を少しちぎってマッチで火を点けて囲いの中に落とし焚火にする。
まだ一箇所しか探索できていないが、川に入ったこともありずいぶん疲れていた華は、この日の探索を終わらせて一休みすることにした。
今日は集めてきた竹蔦粘土でいろいろするつもりだったが、まずは休憩がてら焚火で地下足袋を乾かすべく、かき集めた落ち葉の山に腰を下ろした。