53 町へ行く計画
ファーナやアルベルトの話だと、街道を進むとその日の内に町に着くらしい。
何日もかかるのであれば、ファーナたちがやって来るのを待つが、馬車で昼頃やって来てその日の内に着く距離なら、一泊くらい野宿するかも知れないが、華でも歩いて行けるのではないか。
(馬車って時速10キロくらい?山道だし、鉄道馬車より遅いはずだから、登りで時速5~8キロ?…8キロもなかった気がする)
大きな猫の皮を剥ぎながら、今日乗せて貰った馬車の速度を思い出す。
早歩きで追い付けそうなくらい。だとすると。
(ファーナさんたちの馬車が朝6時に町を出発したのだとして、ここまで6時間くらい。平地もあるだろうからまあ時速8キロだとしても48キロ…。歩き時速が4キロなら12時間。夜明け前に藤棚さんを出発すれば夕方には町に着くはず…。行ける!)
そうと決まればと、大きな猫の皮を川底に沈めて急いで骨から肉を外しにかかった。
大きな猫の肉を藤棚さんに持ち帰り、岩熊の肉とともに大量に干し肉のセッティングをする。
塩と胡椒があるので今回は味付きだが、何せ量が多いので蛇肉の下にも繋げたが、藤棚さんの中が肉だらけになっている。
「ふふっ。ファーナさんたちみたいにお店屋さんができそう」
(あの休憩場所で峠のお茶屋さんとかいいかも…)
大きな猫は分からないが、岩熊の肉は固いとロイさんが言っていたので、今日はヨモギを入れたハンバーグを作る。
フライパンと油を手に入れたので、絶対今日はハンバーグを作ると心に決めていた華だったが、パンに挟んだら明日のお弁当にもなりそうだった。
包丁を連打して熊肉をミンチっぽくしたものと、骨から刮いだ大きな猫の肉を混ぜて塩コショウと細かく切ったヨモギ、お弁当用にパンを切った時に出たパン屑をお水でふやかしてまぜまぜ。
「包丁便利…」
もう包丁のない生活には戻れそうにない。むしろもう1本2本欲しい。
竈で熱したフライパンに油を入れてハンバーグを焼く。
ガロニは土筆。
「ふあああああっ」
(スープだけじゃなくて焼き物まで‼贅沢だ~。贅沢だよう…)
作りおきしていた蛇肉団子と土筆のスープにオージュの皮を少しだけ刻んで入れた贅沢スープにハンバーグ。それとパン。
一口毎に噛み締めながら食べていると、いつの間にか涙が零れて止まらなくなっていた。
(お腹空いてた訳じゃないのに…。…変なの…)
「美味しかった…。ごちそうさまでした」
泣きながらだったので、食べ終わるまでに時間がかかってしまった。
手を合わせてごちそうさまをしても、しばらくの間ぼうっとしてしまっていた華は、明日の事を思い出して慌てて寝る準備を始めたのだった。
翌朝、予定通りに夜明け前に出発した華は、意気揚々と山を下りていった。
折れてしまった槍は、先を木槍のお尻を割って挟んで固定した。薙いだり切り付けたりは怪しいけれど、突く分には問題ないはずだ。
そして折れた柄の方は昨日の夕方、庭に差してきた。
夕陽を見ての思い付きだったが、周辺地図を作るのに方角を知ることが出来るのではないかと思ったのと、日時計がお庭に作れるのではないかと思ったのだ。
春分から数日経ってしまったが、日々印を付けて土器で盤を設置する予定なので今から楽しみである。
(町に着いたらどうやって鍛治屋さん探そう?それか、武具のお店…。それとも先にローレンス商店を探す?お店があるって言ってたもんね。ファーナさんに会えたら武器のお店を紹介してもらえるかもしれないし!)
もし会えなかったら自力で探せばいいかと、町に着いた後の方針を決めたり、どんな町か想像しながら街道をてくてく歩いて行くのだった。
その日の午後。
ローレンス商会の応接間ではホーソンやファーナ、アルベルトの他、行商時の護衛チーム、つまり華を知るメンバーが揃っていた。
『どうだった?天使の里は』
『天使はね…、一人暮らしだったよ……』
『はあ?』
その天使が町に向かっててくてく歩いている最中だということは、当然、誰も知る由もなかった。




