29 竹藪の道
今回の探索は1日で行けるところまでを予定している。
日が暮れるまでに藤棚さんに帰ってくる予定なので、太陽が真上に来たら引き返す予定だ。もしそれが難しいのであれば、早めに安全な場所を探して野宿することになるだろう。
目標は麓へのルートを探すこと。
といってもなるべく川沿いを行くという方針が既に決まっている。
いつものように川原で朝ごはんを食べるので、起きたらすぐに出発だ。
囲炉裏竈の火は点けたままではあるが、華も火を持っていく。
竹で作った背負子を担いでいつものカバンも持って、蛇革のグローブと木槍を装備。木槍は山歩きの杖がわりにもなってとても頼もしい。
川原には石で組んだ竈がふたつあり、ひとつは大きめの鍋に常にお水をはって沸かしっぱなしにしている。
もうひとつの方に小鍋をかけて大鍋からお湯をもらって蛇肉を削ぎ入れる。
そちらを煮立たせている間に魚の干物を大鍋の方の火で焼いて、小鍋が沸いたらよもぎを投入。朝ごはんの完成である。
「いただきます」
手を合わせていただく。
調味料こそないが、突然山の中に放り出されたにしては華の食事は充実している。お魚や蛇肉はもちろん、茅を刈っているときに見つけたよもぎ。そして藤棚さんと川原の両方にある竈や土器の鍋や食器類。
頑張ったお陰で飢えるどころか毎日元気に活動出来ている。
今日は山を下りる。当然帰りには登ることになるのでごはんはしっかりといただく。
朝ごはんを食べたらいざ出発。
川には水から頭を出している岩に組んだ竹を渡して橋を作ってある。
今後どれだけ水量が増えるのかはわからないが、水に入らず川を渡れるようになって、竹の採集がとても楽になった。
竹藪の端からどんどん切り開いて行ってもいいのだが、華は最初から麓へのルートを構築するつもりで竹を採集していたので、10日間の大量伐採により竹藪の中に道を作ることが出来た。
この道が昨日竹藪を抜けたことで今日の探索と相成ったのである。
(今は竹を伐っただけの道でもそのうちにちゃんと道っぽく均したり石を置いたりしたいな!)
何もしなくても普段からこの道を使っていればある程度は踏み固められていくだろう。
そう思ったのは伐った竹の間に動物の足跡を見つけたらだった。
(あの気弱さんがこの道を使ってる⁉)
数回姿を見掛けたが、華を見るといつもおどおどしているので華はあの角のある動物を気弱さんと呼んでいる。
数日前確かに華がここで竹を刈りまくっているときに姿を見かけていた。
いつもなら川を挟んでの遭遇だったのに、至近での遭遇に驚いたのかあっという間に逃げ去ってしまったのだが。
(驚いただろうな~。川のこっち側に人がいて)
はじめの頃こそ脅かしてごめん、等と思っていたが、相手が勝手にびびっているだけで華は何もしていないのだ。気にしないことにしていたのだが、それで正解だったようだ。
恐る恐るかもしれないが、開通したばかりの華が作った道をちゃっかり利用しているのだから。
竹藪の道を抜けると相変わらず鬱蒼とした木々の密集地帯が続いている。
ここからまた見知らぬエリアだったが、今回の探索は麓へのルートの構築。右手に渓を見ながら進んで行った。




