28 山城?
大蛇と遭遇してから一週間。華がここへ来てから10日が経った。
日々精力的に動き回った結果、藤棚さんは茅葺きの大層立派なお家になったが、今後も更に手を加える予定を立てている。
藤棚さんの中は、計画通り中央に堀にした囲炉裏があり、囲炉裏を含む東側5分の3程が竹の間、西側が土間になっていて、どちら側にも竹の出入口を作ってある。竹を筏のようにした立派なドアにはドアノブと、引っ掛けるタイプの内鍵まで付いている。
土間の北側にはへっついを作ってあって、南側にはお風呂を作るつもりで現在土器で風呂釜を製作中。風呂場予定地は土間を掘り下げて既に石を敷き詰めてある。
屋根は棟というか、一番高いところを山頂側に、茅の表面の油で弾かれた雨等が麓側に流れるように、麓側を低くしてある。
そうして壁が出来て扉がきちんと閉まっていて、屋根があるお家で履き物を脱いで過ごしていると、今度は外の様子が気になってくる。
2日程は壁すらない完全なるお外で寝ていたはずなのだが、安全な家の中にいると、外で物音がすると気になるし、何も音がしないのもそれはそれで気になる。
そこで、しめ縄のように境界を分けるものを家の回りに張ることを思い付いた。
結果、藤棚さんの周囲にはお堀と垣根が張り巡らされているのだった…。
始めは、
「縄張りだ~」
等と言って自宅の庭や陣地の感覚で脛の高さに縄蔦を張り巡らせた。
大きな動物が来てもこれに一度は足を掛けるだろうと思ったのだ。
その後、
「この縄蔦の外側に溝があれば先に溝に嵌まってくれるかも!」
と、数日かけて掘った溝は、ところどころ深さや幅が違うものの、スコップひとつで掘ったにしてはこれまた立派なものが出来上がり。溝堀りで出た土は、境界を作っていない藤棚さんの東西の麓側に積んでいく。
藤棚さんの麓側はやや急なこともあり、行き来が出来ない。少なくとも華がここから直接山を降りることが出来ないので放置していたのだが、溝堀りで出た土を積んでいるうちに、いつの間にか土塁が出来上がっていたのだった。
溝を掘り終わった後で、縄蔦ではどうも心許ない気がしてきた。
ふと藤棚さんの前にある焚き火を見て、数年前にラジオで聴いた歌を思い出した。
「かきねのかきねのふふふふふ~♪」
そうして溝の内側に竹垣が完成した。
東側を入り口にして、これにも扉が付いている。
今は格子状になっているが、また竹を採ってきて格子のすき間も埋めてしまうつもりでいる。
10日間の自分の成果を見た華は、古代のムラや中世の山城を思い出した。
「拠点の構築っていうか…」
(陣地?何かと戦っているわけじゃないけど)
庭付きの立派な戸建ての完成である。
大蛇と遭遇してから華はあまり探索をせず、茅竹石粘土の採集に力を入れていた。
そうして藤棚さんが立派なお家として調ったので、華は久しぶりに本格的な周辺探索に出掛けることにしたのだった。




