25 売れるものなにか
藤棚さんに戻った華は、竹を並べた上に蛇の開きを置いて急いで二股の木まで蔦を取りにいった。
川原までなら暗くなっても行けるが、茅の原へはとても無理だった。
枯れているとはいえ、華の背丈ほどに伸びた茅の壁から突然何か出てこないとも限らない。せめて踏み倒した茅を刈って道を作ってからでないと。
「つかれた~…」
蔦を持って戻ってきたときには疲労困憊になって焚き火の前に置いた石に座り込んでしまった。
しかし昨日までのように眠ってしまうわけにはいかない。この生肉を何とかしないと。
ひとまずすぐに食べる用にうなぎのように串に刺して焚き火にかざしておく。
「お箸作らないと」
串と一緒に小枝で箸を作って土器のお皿の上に置いておく。
そして藤棚さんの中に入って天井の竹格子にいくつも紐蔦を結んで垂らしてから蛇肉を削ぎはじめた。
それからは蛇肉を削いで紐蔦で括って削いで括ってを繰り返し、干し柿のように吊るしていった。
(お外で干した方がいいんだろうけど…)
それと味を付けてから干したいとは思うが、当然調味料はない。
実は御守りの中に清めのお塩が入っているが、今使う気はなかった。
(燻製!燻製できないかな⁉土器で台を作って囲炉裏でやれば藤棚さんの格子からお肉が吊るせるし!)
削いでも削いでも無くならない蛇肉をどうやって保存しようか考えるが、調味料のひとつもないこの状況で華ができることと言えば、干すか燻すかしかない。
しかし削ぎながら焼けた蛇肉を食べてみた華は、普通に食べられる事に感謝して、蛇肉を消費するまでの間、乾パンを封印することにしたのだった。
(でもやっぱり調味料は欲しいよね…。もしも人間に会ったときに斧鎌だけじゃなくて調味料も手に入れられるように何か売ったり交換したりできるもの…)
この山ほど干してある蛇肉は干してあるだけで特に味もついていないから売れないだろう。食べるものに困っている人なら何かと交換してもらえるだろうか?
後は蛇皮だが、なめし方が分からないのでこれも売りものにはならないと思われる。
(茅の根っこを煎じて止血薬です、って売れないかな。そんなあやしい薬売れないか…。労働力を売るしかないかな…)
売れそうなものをつらつら考えながら、何時間も肉を削いで吊ってを繰り返しているとさすがに終わりが見えてきた。
しかし残念ながら、肉を取ったあとに残った立派な蛇骨のところどころに結構肉がへばりついたままである。
(丁寧に取ったつもりだったんだけど…)
自分の仕事に少しがっかりした華は、骨についた肉を取って土器のお皿に盛っていく。
今夜はまだまだ寝られないようだった。




