16 とてもいいもの発見
藤棚に戻ってきた華は、持ってきた木の脇枝を落として竹槍のように先端を尖らせた。
「…うん。いい感じ」
何度か振ったり突いたりしてみるが、重さも握りもだいぶ薙刀に近くなった。
「やあー!はっ!」
嬉しくなって素振りや基本動作をしていると、気が済んだ頃には頭も気分もスッキリして気力が満ちていたのだった。
「今日はまずお掃除からかな」
掃除も何も山の中なのだが、華はお家である藤棚さんの中の落ち葉の絨毯を撤去したかったのだ。いずれはお家の斜面な床を水平に調える、その第一歩である。
そのために竹槍3本の内、無加工の一本を竹箒にしてしまおうと思ったのだ。
もちろん尖らせた先端はそのままで、いざというときには武器としても使えるようにしておきたい。
藤棚さんの西側に群生している枯れたススキのようなものを刈り取って竹槍に巻き付ければ、立派な竹箒になった。
出来た竹箒で落ち葉を掃き出せば掃除完了である。掃き出した落ち葉は焚き火の燃料として纏めておく。
掃除が終わったところで、竹と粘土とついでにいい感じの石を採集しに川原へ行きたいところではあるが、華には気になる事があった。
ススキのようなもの、その刈った後の根をスコップで掘ってみる。
瘤のある根ががっしりびっしり延びているが、やはり春だからか新芽らしきものも出始めている。
それを切り取って洗いかじってみると、思った通り、ほんのり甘味を感じたのだった。
「やっぱり!貝原先生ありがとう!」
切り取った分をすべて食べた華は、江戸時代の本草学者に感謝した。
(これって茅!?サトウキビの親戚だ!)
ここに来て初めて自分の知っている食べられそうな物を見つけたのだ。
山菜を探してはいたが、東京の町中で育った華は山菜はあまり詳しくない。もちろん毒のある植物にも詳しくないので、こうして知っている口にできる植物を見つけることができて、またひとつ安堵した華だった。
(それに茅といえば)
そう、藤棚さんの屋根を葺く材料になる。
華の藤棚さん住居化計画がまた大きく前進した瞬間だった。
それからの華は、壁を作るべく川を渡って竹を何度も運んだ。
土器は表面は乾いて見えたが、念のためもう1日火に当てることにしたので、この日は粘土は採集せずに石を何度も何度も運んだ。
日が傾いて辺りがすっかり暗くなるまでひたすら竹と石を藤棚さんに運んでいた華は、疲れはてて何かをする前に昨夜と同じようにカバンを枕にして焚き火の側で眠ってしまったのだった。




