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異世界で、平和を願う。  作者: ちょこぼーらー
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144 空間の歪み

『ハナ、装備増えたね。それカタナだよね?ラジネに作って貰ったやつ。槍も新しいのになってる!最初に武具店で会ったとき注文していたナギナタだよね?出来上がったんだ』


 すぐそこまで、ということで同道をもぎ取ったグレイルだが、山道に入る前から頻りに華に話し掛けていた。


 これまではただひたすら見詰めるばかりで唯一許されている自分からの挨拶さえ疎かになるほどだったのに、今日は何故かよくしゃべる。しかも猫なで声とまではいかないが、子供の機嫌を取るかのような口調で、ねぇ、ねぇ、と話し掛けている。

 凝視されるのには目を逸らすことで無いことにしている華もこれには戸惑っていたが、話し掛けられれば無視するわけでもなく普通に受け答えしている。


(うっっざ…っ!)


 ロイは先行していてこの場にはいない。グレイルが鬱陶しいから離れた訳ではなく何時もの事で、先頭にマール、殿がエドワードで数に入っていないグレイルは勝手にシア騎と並んで華に話し掛けている。


 マールは先頭を行きながら、鬱陶しさからイライラしているシアがいつキレるのかとヒヤヒヤしていた。

 しかし、確かにシアはイライラしていたが、いまだかつてないほどグレイルが頑張っているのが伝わって来ているので我慢しているのだ。

 それもこれも、狼に襲撃されたところまで大した距離ではないからだ。少しの間の辛抱だと思えば我慢も出来る。


 それに、華の持ち物を褒めたり話題の取っ掛かりにしたりしていているので、華も戸惑ってはいるが満更ではなさそうなのだ。

 華自身を可愛い可愛い言うのであれば気持ち悪くて即行ハウスだが、誰に仕込まれたのか、正攻法で好感を得ようと頑張っているのだ。ちょっとしつこい気もするが。


『カイザールさんと太刀合いしたんだって?ナギナタすごく強くて綺麗だったって言ってたよ!俺も今朝ラジネにナギナタ頼んで来たんだよ』


『「ええっ!?」』


『俺のナギナタが出来たらコツとか教えてくれる?』


 シアは、グレイルが昨日の宴の参加者に何か吹き込まれたのだとは思っていたが、前大公ピエールの護衛騎士カイザールの仕業だったようだ。


(あのおっさん…)


 シアの想像通りグレイルは朝からカイザールに、前日の顛末と見解とそれを基にした華を攻略する対策を仕込まれていた。

 時間の関係で会話指導中心だったが、自分ではなく相手の好きなことを話すようにと。


 曰く。華は故郷である日本を愛している。


 しかし、日本をろくに知らないグレイルに知ったかぶりをされては逆効果である。故郷に帰れないと言っている華には特に。

 幸い華が身に着けているのは日本由来の物。そして武家の出だと誇らしげに語る華自身も戦える乙女である事。


 それらを踏まえて、異国の王族に忠誠を誓う女性騎士に対するように敬意を持って会話するようにと。容姿を褒めるよりその実力や得物を褒めろと。


 詰め込みではあったが、それらを素直に吸収し。

 東門へ行く前にラジネの店に飛び込んだのは完全にグレイルの思い付きで、華と太刀合いしたカイザールが羨ましかったのと、純粋に華と同じ武器を使いたいという衝動的なものだった。

 だがそれが今正に功を奏している。


『ほんとう!?グレイルさん、薙刀つかうの!?』


『~…っ! 本当に。…だからテコノゲンリ?って言うの教えてくれる?』


『はい!よろこんで!』


(まじで!?)


 シアは自分の背中でグレイルに対する好感度がぐんぐん上がっていくのを信じられない思いで感じていた。




 その後、狼に襲撃された辺りで待っていたロイと合流し、グレイルは追い返されたが渋々ながらも愚図る事なく帰って行った。

 予想外にあっさり帰ったグレイルを見て、どうせ華に格好悪いところを見せたくなかったのだろうと思ったロイだったが、華が名残惜しげにしている様子に気が付いて驚愕したのだった。


 そして街道の休憩場所まで来て今度は華が驚いていた。

 たった数日離れただけで、休憩場所もそうだが華が作った階段も草に埋もれていたからだ。

 他のところよりもましではあるが、これから夏本番になったら毎日のように草刈りに追われる事だろう。


『まあまあ。大変だろうけどわたし達も草刈りするから』


『ええ!?わるいです。くさかり、たいへん』


『なに言ってんだ。大変だから手伝うんだぞ?任せとけ』


 シアやロイに励まされながら何時ものように騎乗したまま藤棚さんに向かう。


 藤棚さんではまるで華の帰宅を知っていたかのように北斗が竹垣の外で待っていた。

 お茶を入れてアイシャの差し入れを皆で食べて、また明後日配達に来るからその時階段の草刈りをすると話して護衛チームは帰って行った。


 そして護衛の4人が街道に下り、元来た道を町に向かって戻ろうとした時。


 バリバリバリバリッ!!


 山頂付近で雷の音がして全員が振り仰いだ。

 山の天気は変わりやすい。突然荒れる事も珍しくはない。


 しかし、振り仰いだ空は見紛う方なき晴天。


『フジダナサンの辺りじゃないか!?』


 空では無く、今下りて来たばかりの山頂付近でバリバリと音がし、木々に遮られてよく見えないながらも瞬間的に放電のようなものが見えたと思ったら、轟音がして、空が、割れた。

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