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異世界で、平和を願う。  作者: ちょこぼーらー
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110 水道

 藤棚さんの茅の屋根には男性陣なら手が届くので、亀ぐらいいつでも捕獲出来るのだが、皆の帰るときにもまだ屋根にいるようなら捕まえてもらえばいいかと今は放置する事にした。


 気持ち良さそうに日向ぼっこしているし、わざわざ川向うからやって来てまで上るほどだ。よっぽど藤棚さんの屋根に上がりたかったに違いない。

 昨日持った感じでは大して重くも無かったし、特段屋根にいられて困ることもない。

 マールの笑いが止まらないくらいか。




 この日華が竹樋の設置をお願いすると、皆快く引き受けてくれた。


 繋げた竹樋を、水が上から下へ自然と流れていくように滝まで設置する。

 前日の作業ですでに6割ほど設置が済んでいるが、そろそろ高さが華の頭の辺りまで来ているのだ。ここからは背の高いお兄さん達にお願いする。


 節を取った竹を上へ上へと重ねて繋げる。

 ここでゴムがあれば便利なのだろうが、無いものはしょうがないので錐で小さく開けた穴同士を細い麻縄で縛る。錆びることを考えて釘は使わない。


 出来たお手製の竹樋をルート上にある木…ここに来て最初の探索で目印を付けた木々にまたお世話になるが、枝やいい高さに枝が無ければちょっとした支えを作って竹樋を滝まで延ばしていく。

 華の気分は玉川兄弟だ。


 必要分の竹はすでに用意してあったので、男手が増えたとたんに藤棚さんの屋根のように水道もあっさり完成した。


 それほど落差や勢いのある滝では無いが、竹樋をそのまま滝に突っ込むとすぐに壊れてしまいそうなので、町で買った丈夫そうな木の器に穴を開けて漏斗のようにして呼び樋にした。

 最後、滝になんちゃって呼び樋を設置するときに華がそう説明すると、なんとロイがひょいひょいと滝の岩場を登って上手いこと岩の上に設置してくれたのだ。

 ほぼ懸け樋の水道が、滝に近い部分だけ安定した岩の上ルートになった。


 全長100メートルそこそこではあるが、立派にちょぼちょぼと水の流れる水道が完成して、ゴールの溝のところでちゃんと流れて来るのも確認できた。


『すごい…滝からここまでちゃんと流れてくるのね…!』


『すごいな!』


『えへへ…。てつだい、たくさんありがとう』


 皆で拍手をしていると、華の地下足袋の足にたむたむとした感触が。


「亀さん…」


 いつの間に屋根を降りて竹垣を出て来たのだろう。

 華の足に前足を乗せた亀が華を見上げている。


『うおっ!いつの間にっ』


『兎一匹いないのに亀がいるとか…』


 川には魚も普通に泳いでいるし、この亀も鈍いのか、それとも他所から紛れ込んできたのか。


『ハナ、この亀どうするの?』


『かめ?これ?』


『うん、そう、亀ね』


 どうするもなにも、元の場所に戻してくるだけなのだが、マールが当然とばかりにとんでもないことを言う。


『え?食うんだろ?』


『くう、だめ!』


『え、なんで?』


 マールは甲羅だって売れるのにと、捌く気漫々なようだ。


『たべる、こまる、ない。むだ、だめ!』


『え~』


 マールは不満顔だが、シアやロイ、エドワードは華の味方をしてくれる。


『ほんとにデリカシーの無い…。襲って来たならともかくこんなに友好的な亀に向かって食うとか…』


『無駄な殺生はするもんじゃない』


『マール、腹減ってんのか?』


 全員に責められたマールは不貞腐れてしまった。


『マールさん、おなかすいた?フレンチトーストたべる?』


『食べる!』


 うろうろされると躓きそうなので昨日のように亀を持ち上げた華が、仕込んであるのを思い出して聞くと、マールの機嫌はすぐに良くなった。

 ただし、華にとってフレンチトーストはデザートなので、お昼を出した後になる。


『ハナ、これはプリンと同じ材料?』


 干し肉とミルクたっぷりののシチューの後でフレンチトーストを振る舞うと、エドワードが味の分析をするのも恒例になってきた。


 町で火打ち金を買ったときに五徳も買ったので、その上にフライパンをのせて調理した。


『そう。蜂蜜、シナモン、クリーム、餡子、ジャム。おいしいもの、のせる。もっと、たくさんおいしい』


 すでに砂糖はデフォルトでまぶしてある。

 藤棚さんの近くに蜂の巣は一切無いので蜂蜜はとれないが、説明すると今度持ってきてくれる事になった。


 そして護衛チームの面々も、亀が何を食べるのかさっぱり分からなかったため、適当にいろいろ差し出して見たところ、野菜も干し肉も食べられるようだった。


『亀って何でも食べるんだな』


 先程当たり前のように亀を食べる発言をしていたマールが、フレンチトーストをちぎって亀の口に差し出している。

 亀がためらいもせずフレンチトーストを食べるのを見ながら、華は一昨日見た白い大きな鳥の事を話した。


『やはりいたか…』


『そんなに大きいのね…。ハナは大丈夫だった?』


『だいじょうぶ!すっごくきれい、バサッて!』


 それほど至近で遭遇して2日何もなかったのなら大丈夫だろう。

 そもそもこれまで華が姿を見たこともなかったのだ。


『一応、何て言う幻獣か調べておくか…』

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