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異世界で、平和を願う。  作者: ちょこぼーらー
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108 遭遇その4

『ハナ、それ、仕舞って仕舞って!』


『シマッテ?…どうして?』


 何となく、片付けろという意味だと察した華は刀身を鞘に納めたが、何かいけなかっただろうかと訊ねた。


『そのカタナがすっごく綺麗だからよ!悪い人に見られたら盗られちゃう』


『わうい、ひと。とられ?』


『悪い、よ、悪い人。駄目。善くない人…』


 そう言われて華は納得した。


『よくない、するひと。わるいひと』


 こちらに来てから出会った人は皆いい人ばかりだった。…少なくとも華にとっては。


『そう。悪い人がいるかもしれないから隠しておいて?』


 華が出会った人達は皆華に親切にしてくれた。今も。


 商会の人達。

 アイシャに宿の主人。

 ラジネやリーシャ。

 市場やお店の人達。

 ファーナの家族。


 町や市場でもスリやひったくり、ぼったくりにも遭わなかった。

 門兵がたくさんいて市場を巡回している兵隊もいた。

 町では普通に過ごせていたから特に治安が良いとか悪いとか考えもしなかったが、逆に言うと悪い事をする人がいるかもしれないから兵隊が見回っているということか。


(いい人もいれば悪い人も当然いる。日本と一緒だね)


 華にとってもこの守り刀は大切な物だ。切り札でもある。

 戦闘で喪うならまだしも、盗っ人に奪われるなどあってはならない事だった。


『わかった。しまって、する』


 華が刀を仕舞いにもう一度藤棚さんに戻ると、全員が知らずのうちに溜め息を吐いていた。


『ハナ、さっきのカタナ。町で誰か人に見せたりしてないよな?』


 ロイが再び焚き火の側に戻って来た華に念のための確認をする。


『ラジネさんのお店、刀、見せた。ラジネさん、リーシャさん…グレイルさん』


『ああ…』


 グレイルはどうせ華に見とれていただけだろうから放っておくとして、問題は武具店か。


『ラジネは何か言っていたか?そのカタナを見て。というか、何で見せる事になったんだ?』


『薙刀、つくって。わたし、言った。槍の()、ちがう。刀の()、つくって、言った。見せた』


『えっと、ナギナタっていうのをラジネに作って貰うためにカタナを見せたんだな?』


 シアから和弓の製作については聞いたが、薙刀については初めて聞く。

 ファーナ達は知っているのだろうか。


『そう。でもラジネさん、むずかしい、言った。じかんかかる、言った』


『そうか…』


 あんな宝剣を見せられて同じものを作れと言われてラジネは困った事だろう。


(一度ラジネにも話を聞きに行くか…)


『そっか。楽しみだね、ハナ。ナギナタ出来るの。また一緒に行こうね』


 和弓の事もあるしね、と、シアが華を武具店に誘っている。

 畑を作る手伝いという名目で数日華の住み処に通ったが、畑が出来てしまったので明日からここに来る理由が無くなってしまったのだ。


 まだまだ華には謎が多い。

 それを探る目的もあるが、やはりこんな山の中での女の子の一人暮らしが心配なのもある。できるだけここに来て様子を見たい。

 それに…。


(幻獣が見れるかもしれないしな)


 結局華も白い鳥の姿を見てはいないようだが、ここにいればもしかしたら不意に姿を現したところを見られるかもしれないのだ。


 用事が無ければ作ればいい。


『ハナ、次から一日おきにミルクの配達に来るからな。次は2日後…明後日来る』


『あさって!わかった』


『何か足りない物や手伝うことがあったら言ってね』


『町に行くなら馬で送るから黙って行くなよ。心配するからな』


 そうして皆それぞれに華の心配や次に来るときの事を言って、この日は帰って行った。

 手伝いや配達のお礼を言って川のところまで見送った華だったが、「気を付けて帰ってくださいね」が日本語でしか言えなくて連日もどかしかったのを、この日も帰り際になって思い出した。

 今度彼等が来たときに忘れずに訊こうと思いながら川の水を汲んで藤棚さんに戻ろうとしたその時ーー。



 バサッ



 確かな羽音が聞こえて川を振り返った華の目に映ったのは、白い、大きな鳥だった。


 川下の方から一瞬で滝の上、山頂の方へ飛んで行き、すぐに見えなくなったが、振り返った華とは至近ですれ違った。


「きれい…」


 確かに目が合った。

 真白の体躯。目の上、頭の一部にだけ朱があった。


(翼を広げたら藤棚さんぐらい?もっとかな)


 体長も尾を除いても華ほどはあった気がする。


(あれがゲンジュウ…さしずめ山の主ってところかな)


 ロイ達によると、この辺りに凶暴な魔獣がいないのはあの鳥の縄張りだからだろうとのこと。


(だったら挨拶しておかないとね)


 天狗様のお山ではないようだが、もうとっくに見えない鳥の飛び去った頂上に向かって華は一礼して手を合わせた。


「東京から来ました。千田 華です。よろしくお願いいたします」




 翌日。


 川を渡った竹林の更に東に生えている、こちらは太くて立派な竹を伐り倒していた華は、藤棚さんに戻ってから背負子に見覚えの無いものが入っていることに気が付いた。


 いつの間に入り込んでいたのだろうそれはーー。


「亀さん?」

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