104 エディ兄さんのプリン
藤棚さんに戻った探索組の3人を待っていたのは、華のプリンだった。
卵のデザートだと聞いて、ちらりと巣の中に転がっていた欠片を思い出した3人だったが、その甘さに癒されつつペロリと平らげた。
『お~、なんか不思議な食べ物だな!うま~』
『美味しいな…。ありがとな、ハナ』
藤棚さんには入れないのでアルベルトのように外で渡してしまったが、腰掛けるところが無いにも関わらず3人とも気にした様子も無く立ったままで食べていた。
(休憩場所には椅子がわりに木が置いてあったけど…。倒木を切ったらここまで荷車で運べないかな?)
庭先で腰を下ろす場所のことを考えていた華は、ふとエドワードがひと口ずつゆっくりと食べていることに気が付いた。
とはいえプリンひと切れなのですぐに食べ終えたのだが、甘いのが駄目だったのかと申し訳ない気になって眉を下げると、エドワードが華をじっと見詰めた。
『あまい、だめ?ごめんなさい…』
『いや、美味しかった。ありがとう』
思えば華がエドワードとちゃんと話すのはこれが初めてである。
前回の配達の時に名前を聞いて、よろしくとは言ったがそれだけで、普段は後ろの方で控えているエドワードとはあまり接触がない。
そのエドワードがきちんと華の目を見て微笑みながら小皿を返してきたので華はほっとした。
(甘いの苦手じゃなかった。味わって食べてくれたのかな?)
3人から小皿を回収してプリンを作った器と共に笊に纏める。
後で川で洗う予定なのだが、その笊をシアがひょいっと取り上げた。
『マール!川に行ってこのお皿洗ってきて!』
『「ええっ!?」』
『はいこれ』
驚く華を余所にシアはマールに笊を押し付け、マールは慌ててそれを受け取った。
『はあ!?』
『シアさん』
『いいのいいの。プリン美味しかったよ、ハナ。“ゴチソウサマ”!』
『ふあ!』
マールを竹垣の出入口の方へにぐいぐい押しながら日本語でご馳走さまを言うシアに、華は驚いた。
『ふふっ。合ってた?わたしも覚えちゃった』
『すごい!あってた!』
『凄いのはハナよ。ね、さっきのプリン、作り方聞いてもいい?』
シアもかき混ぜたり濾すのを手伝ったりして一緒に作っているし、材料は至ってシンプルなので、何と無くなら作り方を覚えているシアだが、もしかしたら秘伝のレシピという可能性も無くはないので、華の許可をもらうのと共にちゃんとした作り方を聞いておこうと思ったのだ。
『いいです。シアさん、プリンつくる…つくり、かた?』
『ああ、ううん。違うの』
『?』
何が違ったのだろうかと思う間もなく、シアが大きなエドワードに手を伸ばして華の前まで引っ張った。
『作るのはエディだから!』
『「………」』
シアによるとエドワードは料理が得意なのだそうだ。
シアは?と華が聞くと、そこそこ、という返答だった。
『材料は卵とミルク?…あと何を入れたらあんな風に固まるのか想像つかん』
『ふあ!すごい、エドワードさん!卵とミルクとさとうだけ。あと“蒸し”ます。え~と…』
ここでは蒸し料理は一般的でないらしく、地面に絵を描いて説明すると、それでプリン液が固まる事にエドワードは半信半疑だったが、とりあえず作ってみる事にしたようだった。
ファーナ達も交えて野菜や肉など、他の蒸し料理の話をしているとマールが戻って来た。
『はいこれ』
『ありがとう!』
プリンを濾した布も丁寧に洗ってくれたようだった。
『ちゃんと割らずに洗えた?』
『落ち化蛇の鱗の入った皿なんて割れるか!』
華の作った土器の小皿には、落ち化蛇の鱗が埋め込まれていた。
土器を作る時、手元に綺麗な鱗があったので思い付きで入れただけなのだが、脆い土器の強度増し増しになったようだった。
(螺鈿細工みたいになるかと思ったんだけど…)
『そうだ、ハナ。お土産だ』
ロイに渡されたのは、見慣れた数枚の鱗と、1枚の大きな白い羽根だった。




