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異世界で、平和を願う。  作者: ちょこぼーらー
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103 遭遇なし

 その頃探索組は、馬で登れるところを探しつつ、どうにか頂上付近だと思われる所まで分け入っていた。


(ずいぶん来たな…)


 少し周囲の様子を見て戻るつもりが、ついつい上へ上へと登ってしまい、結局頂上を見てから戻るかとなってしまった。

 登れそうなので登ってしまっただけで、ここまでの道程で引き返す切っ掛けが一切無かっただけなのだが。

 特に危険な魔獣に遭遇することもなく、3人の内の誰も、そろそろ…と、言い出さなかったせいでもある。


 とはいえ、ここまでそれほど時間はかかっていない。

 しかし馬で数十分も登れば、ここまでは華もそう易々と来られないだろうという距離だ。

 本当に頂上が近いとは限らないのでそろそろ戻った方がいいのかもしれない。


『ほんとに静かだよな…』


 マールが何度目かの呟きを溢す。


 ここまで見た限りはやはり集落はなく、山自体も人の手が一切入っておらず、それなのにろくに動物がいない。鳥の声もしない。

 街道では動物も魔獣も見掛けるのに、華の家周辺から頂上にかけてが明らかにおかしい。


(もう、これは確実に何かあるな。…問題はそれがいいものか悪いものか)


 ロイはエドワードの様子を窺う。

 まだ大丈夫そうだ。


 ロイは自分の勘を信じていないわけではないが、信じすぎてもいない。

 エドワードはロイよりひとつ年下だが、熊のようなゴツい見た目に反して細かいことに目が届く男だった。それこそ女性であるシアの方がよっぽど何事も大雑把に見えるほどだ。


 エドワードが引き返すように言うなら即座に引き返そう。

 そう思っていると、目の前の木々が開けて頂上らしきところへたどり着いたようだった。


『結局頂上まで来ちまったな』


『何もなくってよかったじゃん。…これが頂上かー。ほんとに何にもないな!岩ばっか!』


 旅の中で山は数多く登ったが、3人共に頂上まで来るのは何気に初めてだった。

 山越えをするのにわざわざ頂上まで登る馬鹿はいない。用事もない。


 今回の華の家の周辺調査で何も無さすぎて頂上まで来てしまったが、来ても岩場で木々すらない場所なだけだった。

 遠くが見渡せて絶景ではあるが。


 見えるのは雲海とアゼリアル大山脈。

 北を見ても領都も公都もさらにその先にあるはずの霊峰も見えず。

 南を見てもやはり山ばかりで神龍湖すら見えない。


 ロイとマールが遠くの山々につい気をとられているとき、エドワードは岩場でも一際大きな岩の影にいた。

 岩場の茶色の中に、何か白いものが落ちていたので気になったのだ。


『ロイ』


 それを拾い上げてロイに見せると、エドワードは大岩に登れないかとぐるりと回った。


『わ!なんじゃこりゃー!でっか…!』


 それを見たマールが驚く中、エドワードは馬の上から大岩に足を掛けよじ登る。

 ロイとマールも同じ様にして大岩を登ると、そこには巨大な鳥の巣が出来ていた。


 ただし、今は鳥はいないようだった。


 大岩の天辺はいくらか平らに近い形になっていて、その中心にエドワードが横になれるほどの大きな鳥の巣があり、周囲にはエドワードが岩の下で拾ったような大きな白い羽根がいくつか落ちている。


『山の主ってところか…』


『多分な…。こいつを恐れて上の方には魔獣も寄り付かないんだろう』


 それを考えると、華の家の辺りは安全だと思われる。ただしーー。


『そんなに凶暴な鳥がいるなら危ないんじゃねーの?』


 今は鳥のいない巣ではあるが、放棄したとは限らず、むしろ留守にしているだけの可能性が高い。鳥の巣の隅には割れた卵の欠片も見える。

 マールは落ち着かなさげにきょろきょろと周囲の空を見回した。


『それはたぶん大丈夫だろう』


『なんでさ!?』


『あまりここに長居するのはよくない』


『そうだな。急いで戻るぞ』


 まだ見ぬ巨鳥にビビるマールを促して来たルートで戻る。

 どうやらロイもエドワードも巣の主の正体に心当たりがあるようだと、二人に倣って下山するマールは、ふと馬たちがいつも通りなのに気が付いた。


(魔獣も寄り付かない場所なのに落ち着いてんな…?)


 ビビっているのは自分だけなのに気が付いて変に入っていた力が抜けていく。

 そして前を行く二人に、むぅと口を尖らせた。


『なあ、エディ』


『あれは、おそらく幻獣の類いだ』


『へ』


 幻獣。

 このアゼリアル大陸とシリア聖王国の守護神たる神獣達の眷属。


『もし怒らせてしまっても幻獣は話せばわかる、らしい』


 それは怒りの程度にもよるのでは…。という考えにマールも及んだらしく、巣に近付いた事がバレて幻獣の怒りに触れないようにと、慌てて二人の後を追うのだった。

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