100 周辺の探索その4
ロイ達護衛の男3人は、華が教えた茅の原を北西に抜けて、露出している岩盤の脇の斜面から上に登った。
本来岩盤の下まで広がっていただろう茅の原は、華が小屋の屋根を葺くのに使ったのだろうか、岩盤まで刈り取られて道が出来ている。
華の背丈ほどの茅が隙間なく生えているので、この道がなければ馬達が進むのを嫌がっていただろう。
今は華が刈り取った茅の隙間のあちらこちらから青々とした草が芽吹いている。
斜面を登って振り返ると、華の住まいの竹垣や小屋が見える。
あとは山の麓側に、渓谷だと思われる木々の切れ目が蛇行する線のように見えるだけで他には何もない。視界のすべてが山と空、ときどき雲。
『静かなもんだな…』
『静かすぎる』
鳥や小動物の気配すらしない。
葉擦れの音しかしない静けさの中、華の家から何やらシャカシャカする音がロイ達の方まで聞こえてきた。
シャカシャカ音はすぐに止んだが、今度はカカカカカという音が微かに聞こえてくる。
ふと、馬の足元が光った気がして、ロイはミライトから降りた。
『これは…』
『なになに』
何やら地面を調べだしたロイの元にマールが興味津々で寄ってきた。
『落ち化蛇の鱗だ』
『こっちにもあるな』
ロイがマールに鱗を渡すと、側にある大木の下でもエドワードが同じように膝を付いて地面を調べていた。
『この周りだけ矢鱈と枝や葉が落ちている。地面もこの辺りだけ荒れてるな…』
『…ここで戦闘があったってこと?だよな?』
スゲー!と周囲の地面を見ながら感心していたマールが、あれ、と顔を上げた。
『てことはさ、この辺りは落ち化蛇が出るエリアなんじゃないの?危ないじゃん!』
『いや……』
それはどうだろうか。
落ち化蛇の出るエリアだとしても複数はいないだろうと、ロイは木々が密集しすぎて昼間でも薄暗い斜面の上方を見る。
やはり生き物の気配はしない。
鳥や小動物の餌が無いなんて事はないだろう。
たまにだが遠くで微かに鳥の羽ばたきが聞こえる事はある。
生き物がまったくいない、若しくは一切立ち寄らないというわけでは無さそうだ。そうなるとーー。
『落ち化蛇の縄張りだったから他の魔獣がいないのか、それとも』
『もっと強力な何かがいるのか…』
『エ゛』
ロイとエドワードの考察に、薄暗い山の上方をきょろきょろと見るマールにロイは馬に乗るように促す。
『もう少し上の方まで調べるぞ。頂上まで行ければいいが、早く戻らないと明るいうちに町に着けなくなっちまう』
そうして、華が放置していた“周辺の探索・山の上編”を実施するロイ達だった。




