異世界で、平和を祈る。
行き交う人びとを、華は広場の隅にある木の下に座って見つめていた。
朝から何時間も。耳をすまして。
初めて来たこの町の規模が大きいのか小さいのかは華には分からない。
しかし、舗装されてはいないがきれいに均された道や、建ち並ぶ石造りや木造の建物、広場に並ぶ屋台や露店。そして、たくさんの人びと。
安定した町の暮らしが見て感じとれる。
(こういうの、なんて言うのだったかな)
この感じ。
知っている。華が小さな頃もこんな風に安定?(安心?安全…だったかもしれない)した、穏やかな生活を送っていた。
しかし、ここは華の暮らす町でも知っている町でもない。それどころか。
「外国、ですよね…」
どう見ても。
行き交う人びともお店の人たちも、なんなら町の門やそこらで時々見かけるおそらく憲兵さんたちも、見た目が日本人ではなかった。
もちろん、飛び交う言葉も日本語ではなくて。
「枢軸国の言語なら日常会話くらいは解るのにな…」
華の聴いたことのない言葉だった。
それはとっくに知っている事ではあったが、これまで限られた人達とだけ交流していたので「もしかしたら」という淡い思いがあったのだ。
それでも。
この、言葉の通じない異国の町で知る人もなく、たったひとりきりになっても華は思う。
「平和……」