第一話 シンディ・レイエス-前編
この世は所詮、分からない事ばかりだ。
それなのに「人間」はさも、全てを理解し、何でも出来るのだと己を過信し、平然と生きている。
本当、笑っちゃうよね。
「俺さ、好きな子いるんだよね」
お昼ご飯を食べ終える頃、友人の高橋に唐突に暴露した。
「...俺?」
「ごめん、それはない」と即答した。
「ウソウソ。(笑)鈴木ってイケメンじゃん、普通に告れば?てか好きな子って俺知ってる子?」
「...同じ学科のシンディ・レイエスさん。めっちゃ綺麗な子なんだけど...。あっ、来たっ、あの子」
同じ経済学科のシンディ・レイエスさん。入学式の時に彼女を見て、俺は生まれて初めて一目惚れをした。やわらかいブロンドの髪に青く透き通る瞳を、ただ純粋に綺麗だと思った。物静かで、誰ともつるまないのも新鮮だった。
「...ふーん。お前ああいう子がタイプなんだ、なんか意外だな」高橋は目を丸くして言った。
「え...?どのあたりが...?」
「いや、俺お前のことシンプルに面食いだと思ってたからさ、なんかびっくりしたわ。良いんじゃね、応援するよ」
「....いや今も変わらず面食いだよ!一目惚れだわ!お前綺麗だって思わないのか...?」
「えー...普通に良い子そう...?」高橋は困惑という顔をしている。
「...高橋、お前は高校の時からずっと仲良くしてきたし、女子の趣味も同じだった。だから俺は今日までお前のこと親友だって信じて疑わなかったけど...そうか...そうだったんだな」
「いやなにそれ(笑)...きっと俺にはまだ分からない何かがレイエスさん?との間にあるんだと思うぞ。応援してるわ」
そう言って、高橋はかかってきたバイト先からの電話に出てしまった。