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島は月の形をしている  作者: 大石安藤
1/21

始まりの前

 1・島

 島は水で歪んだ月の形をしている。

 半月より少し膨れている。

 線を少し緩めたように膨れた側はところどころで川に遮られながらも、端から端まで続く長い白砂の海岸と豊かな土地が広がっている。適当と判断された幅で五つの市に分けられてあり、行政区分としてはそれだけである。

 丸まった側は切り立った崖で海と分かれている。人の住む町は無く、ほぼ島固有の植物で占められる深い森に覆われ、そしてまた多くが島固有種である動物達が暮らしている。

 平野部と森林の間には、小さな島には不似合いに高い山がふたつ並んでいる。山は平野と森を分けると同時に、人と動物達も穏やかに分けている。

 島の周囲に浅瀬は少なく、底知れない青く茫洋とした海が取り巻いている。



「・・・瓜も持たせればよかったかねえ」

 思いついたままを口にして顔を上げると、光る波がカラタの目を射した。ひるんだように顔を顰め、自分の言葉に首を振る。

「いや、駄目、駄目。ヘスラの崖までは道も悪いし、あのうえ瓜まで持たせたらゼネがまいっちゃう。あれだけあれば十分」

 高床の縁側から見える坂は、のんびりと進む蛇のようにくねりながら長々と海まで続いている。坂の行き着く先にある海はちらちらと光りながら、細めた目を何度も突いてくる。

カラタは視線を手元に戻し、鮮やかな青に染められた布を顔に寄せ、縫い目を確かめた。

「うん、まあ、こんなものかな」

 微笑みながら布を撫でる。強さと柔らかさを合わせもつ布には、色とりどりの糸で波のような、雲や草の蔓のような模様が刺してある。身を守るための伝統的な模様だが、家や刺し手によって異なっている。この美しい布地で仕立てたシャツを、ひょろひょろと背ばかり伸びた孫が着る日がもうすぐ来るはずだ。急がなければ間に合わないかもしれないと、カラタは再び手を動かし始めた。

だが皺の目立つ小さな手は、細かな縫い目を作り出したと思うと、すぐに止まってしまう。

「小さな瓜一個ぐらい、ゼネにだって楽に持っていけたかもしれない。なんたってこんなに大きくなったんだから」

 手にしている布も、思っていたよりずっと大きなシャツになりそうだ。けれどカラタはまた首を振った。

「・・・やっぱり持たせなくてよかった。まだまだ肩は細いし」

 けれど来年になれば、これも仕立て直すことになるだろう。どんどん大きくなっていく孫のことに思いが飛んで、ますます針の動きが鈍くなる。

「ばあちゃん、どこ?」

 自分を呼ぶ声に、カラタは待っていた馬車が来たことがわかった。

「あら、やだ、いけない」

「馬車が見えたよお。あれ、女の人が繰っているみたい」

 孫娘の言葉に、カラタは驚いて目を見開いた。

「あれ、どうしたろう、アイマツじゃないのかね。いま行くから、ちょっと待って」

 慌てて細々とした道具を抱えあげながら、カラタはぐるりと辺りを見回した。




2・特異性

 島はある点を固定点として――その点の位置については諸説あり、未だ特定されていない――振り子運動をしている。つまり島は、常に南北どちらかの方角へ動いている。北へ一度動けば、固定点を越えて南へも一度動く。おおよその限界は南北ともに二度程度とみられている。

 一日の移動距離、反転する時期、振幅の大きさが周期的で無い理由など、大概の事はまったくと言っていいほどわかっていない。

 島が動いていることは大昔から知られており、大多数の島民は、その時、島が動いている方角くらいはわかる。なかには島が動きを反転させる時を予測できる者もいる。



 ゼネは叔父達を太いびせぎの木の上に見つけた。イチジク属のこの木は、辺りの木々よりもぽっかりと頭ひとつ高い。森に慣れているゼネでも、見上げると少しくらっとする。

 天辺まではいかない、寄生植物と太い枝が仲良く寄り添っているところ、いろいろな緑が群れ重なる葉の間から褐色の足が覗いているのが、どうにかわかった。足首からふくらはぎにかけてある傷跡もなんとか見て取れる。叔父のホウチャンに間違いない。

――もう少しわかりやすいところにいてくれればいいのに。

 ホウチャンがいる木は、根元が海に飛び出そうなほどに崖の端に近い。だから海も見やすいのだろうが、それにしても危ないし、わかりにくい場所だ。

 そう言ったところで、仕事だと返されることは想像がつく。これほど深い森の中で、あんなところにいる叔父達を見つけ出したことはとっても、ものすごく、ほんとうに大変なことなのだが、果たして、叔父がそれを認めてくれるかどうかは別問題だ。

 手を口にあて、上に向かい声をかけようとすると、それより早く、樹上からホウチャンの低い声が落ちてきた。

「あがってこいよ」

――なんか、呑気だなあ。

 大きな目を更に大きく見開き、ゼネは首を傾げた。あんなところにいたら、下で動いている音がしても、それが人間だか動物だか、人間だとしても誰だかなんてわかったものじゃない。仕事柄、密猟者だと思ってもよさそうなものなのに、声をかけてきたってことはゼネだとわかっているのだろうか。

 ゼネは肩をすくめるとカラタに頼まれた荷物を背負い直し、蔓がまとわりついて見ためよりずっと登りやすくなっている木に足をかけた。濃く茂った緑の群れを押し退けていくと、太く長く張り出した枝の上で叔父が、更に海へと張り出た枝には叔父の相棒のゲンナが、双眼鏡を抱えてじっと海を見つめているところへ辿り着いた。

「なんだ、なにしに来た」

 言葉と裏腹な笑顔は、ゼネの背中の荷物を見た時、「ああ、かあさんか」と苦笑いに変わった。

「そう、ばあちゃんから。ほら」

 ホウチャンがいる枝へと伸びた隣の木に移ると、体をしっかりと落ち着かせてから、ゼネは腕を伸ばして荷物を差し出した。

「こんなところまで持ってくるなよ」

「仕方ないだろ。いつもどこにいるかわからないんだから。やっと場所がわかってほっとしたんだよ、きっと」

「生意気なこと言いやがって」

 見た目のわりには重みのある荷物を受け取ると、ホウチャンの苦笑はいちだんと大きくなった。

「またずいぶんあるなあ。なにが入ってるんだ、これは」

「昼飯、三人分」

 飯と聞いた途端、ゲンナの手が伸びた。

「あせんなよ、ほら」

 ホウチャンは飯の包みを適当に分けると、それでもまだ膨らんでいる袋の中を覗き込んだ。苦笑が顰め面に変わる。

「こんなもの、いらねえよ」

「俺に言わないでよ。文句はばあちゃんに言って」

「おまえ、詰めるの見てたんだろう。止めてくれればよかったじゃないか」

「止められるわけないよ。ばあちゃんが入れるって言ってるんだもの。誰が止められるって言うのさ」

「そりゃ、そうだ」

 昼飯を食べながら、ゲンナはくぐもった声でゼネに同意した。右手に持っている双眼鏡と一緒に、顔がゆっくり動いている。

「そうかもしれないけどな。でもなあ、こんなとこまでこんなもん持ってくるの、おまえだって厭だったろう」

 ゼネは飯を頬張りながら首を大きく振った。

「ほんとうは、入れるのなんか見てなかった。無駄だもん」

「こいつ」

 叔父が投げたびせぎの実をよけながら、「それでなにが入ってたの」と尋ねる。ホウチャンは黙ってそれらを取り出す。

 最初に取り出されたのは、草で編まれた食事用の椀が組になった物で、最近島で流行っている。軽くて洒落た感じが、いかにもカラタの気に入りそうだ。

「・・・ああ、なんか背中に変な物があたるなあって思ってたんだ」

次に出てきたのはぴかぴか光る片手鍋で、金属の細い棒を曲げて作られた柄の部分が、歩いてくる時、ゼネの背中にあたっていたらしい。

 ゼネは堪えきれずに吹き出し、口に入れていた物が少し飛んで、ホウチャンの顰め面が大きくなった。ゼネの笑い声に驚いて振り向いたゲンナの顔もくしゃっと歪んだ。海に向き直った背中が小刻みに震える。

「笑ってんじゃねえ。持って帰れ」

 剥き出しのまま突き出された鍋を、ゼネは胸を反らせて遠ざけた。体がぐらりと揺れたが、その不安定な体勢のまま、にやにやと笑い続けている。

「え、やだよ。ばあちゃん、わざわざ叔父さんにって買ってきたんだよ。心配してるんだよ」

「べらべら生意気ばっか言ってんじゃねえよ」

 ホウチャンは困ったように鍋を見つめてから、それでも「しょうがねえなあ」と一緒になって笑い出した。

「いつまでガキだと思ってんだか」

 島では作ることができない金属製の鍋を観念したように袋に収めたのを見てから、ゼネはここまで来るはめになった用事を口にした。

「叔母さん、今日帰ってくるって」

 ホウチャンの視線が、手に握った昼飯からゼネに戻った。

「ウラカンが?」

「そう。昼過ぎの船で着くってさ。昨日、手紙が届いたんだって。もっと早く連絡してくれればいいのにって、文句言ってた」

 ホウチャンは「あいつらしいな」と言って飯を口に入れた。

 ホウチャンの二歳年下の妹で、五人兄弟の末っ子のウラカンは、たったひとりの女の子でやたらと可愛がられて育てられたからか、もともとの気質なのかわからないが、マイペースで頑固でおしゃべりで、多少、変ったところがある。

 ウラカンは首都にある大学校で外国語の講師をしている。それもひとつふたつの言葉では無く、請われればどんな言語でも教えている。彼女は語学に関して非凡な才があるのだ。その能力をかわれ、いくつもの国の多様な機関から招かれては、何度も大陸へ渡っている。それでもせいぜい一週間から二週間程度の期間だったのが、今回はなんと、講師を休職してまでの、三ヶ月もの長丁場になった。

――まったく、あいつはなにを考えているんだか。

 ホウチャンは気ままではあるが、しっかり者の妹のことを、普段なら殊更心配などしない。だがこれほどの長い間大陸に居たら、島民の体質が彼女にどんな影響をおよぼしているかわからない。そのことは気がかりだった。

 しかも三ヶ月は滞在することになるだろうとウラカンが言い出したのは、大陸に出発する前日だった。カラタや兄弟、親戚の大反対を予想してのことだとは誰にもわかる。だからそれなりの覚悟はして行ったんだろうとも思っている。

 ウラカンの天才的な語学の力は、島での生活にはあまり必要とされない気質であること、それをウラカンが残念に感じていることも、ホウチャンよくわかっている。

「じゃあ、仕事が終わったらかあさんのところへ寄るよ。そうして欲しかったんだろ」

 頷くゼネを見て、ホウチャンはこの甥が抱えている問題も思い出した。

「おい、それでどうなった、おまえの方は」

 びせぎの実をもぎとりながら、ゼネはいたずらっぽい笑みを浮かべた。ホウチャンは「そうか」と言いながら、よく似た笑顔になった。

「兄貴はうんと言ったのか」

 丸く濃い赤紫の実をふたつに割ってかぶりつきながら、ゼネは更に大きく頷いた。酸味の強い汁が顎から首へとしたたり落ちる。きれいに平らげると、満足気に長い息を吐き、より大きな笑顔になった。

「まかせてよ」

 この叔父と甥は、笑顔が似ている。大きな目が弓のように細くなったところは、親子と言ってもいいほどだ。ゼネは笑った後、「すげえ時間かかったよ」と、今度は大げさなため息をついた。

「卒業してもう半年だよ。この間に覚えられることもいっぱいあったのにさあ」

「少しは手伝ってたんだろう。漁期はこれからなんだから、間に合ってよかったじゃないか。だいたい、この忙しい時期に、こんな物持って来る暇なんかあるのか」

 ホウチャンが傍らの荷物を軽く叩くと、中身がゴンっと鈍い音をたてた。

「叔父さんがなかなか顔を見せないから、俺がこんなところまで来る破目になるんじゃないか」

 ゼネは顔を顰めたまま続けた。

「それに、船に乗るのは早くても来年からだって言われちゃったよ」

「なんで」

「知らない」

 ゼネは細い腕をしならせ、びせぎの種を投げ捨てた。重なりあう葉につかまったのか、がさがさ言う音はすぐに途切れた

「じいさんは今年からでかまわないんじゃないかって言ってくれたんだけど、兄ちゃんがどうしても駄目だって。俺は細すぎるんだってさ」

「ふうん、クポリがねえ。それで、兄貴はなんて言ってるんだ」

 ゼネの渋面がますます大きくなる。

「とうさんは、兄ちゃんがそう言うなら来年がいいだろうって。そのうち俺の気が変わるんじゃないかって思ってるみたい。いつもは漁のことなんか、なんにもわからないって言ってるくせにさ」

「じいさんがいいって言っているなら、今年からでもよさそうなものだけどな」

 ホウチャンだって漁、ことに伯父や甥の生業である海獣漁のことなど、まったくわからない。

 海獣漁師の家系は代々続いていくのが普通だが、ホウチャンの兄弟で海獣漁師になった者はひとりもいない。父親が海で死んでいるからかもしれない。だからホービンも息子達が海獣漁師になることに反対だったのだろう。だがどれだけ反対しようが、クポリもゼネも意思を曲げないことは家族の誰もが、それどころか村中の誰もがよくわかっていた。そんなところは、兄弟揃って父親のホービンにそっくりだ。

 どちらにしても漁に出ると決めたなら、ホウチャンには、今年も来年もたいした違いはないように思える。じいさんと呼ばれている伯父のコアツァは、島でも一、二を争う腕のいい海獣漁師だ。駄目だと言うクポリ自身、初めて漁に出た時は基礎学校を卒業したばかりで、まだ幼さを残していた。

 もっともクポリが不安に思うのも仕方がないほど、ゼネはひょろひょろと細い。背丈はじきにホウチャンにも追いつく勢いだが、体重はちっとも増える様子が無い。

 ゼネは恨めしそうに自分の細くて長いばかりの手足を眺めている。ホウチャンは残りの飯を口の中に放りこみ、腹に押し込んで満足した後にゼネの姉の名を口にした。

「それで、サナはどうした。かあさんの畑、手伝うことになったか」

「うん。この間、ばあちゃんの家に移った」

「そうか、じゃあユアンも折れたのか」

 ホウチャンは、いつでもどんな時でも息子達や娘、他にもおよそ知っている誰かしらの心配ばかりしている兄嫁の困ったような顔を思い浮かべた。

「そういうこと。だってさ、ばあちゃんの畑は、いつかは誰かが引き受けていかなきゃいけないんでしょ。まだばあちゃんが元気なうちに、いろんなことを教えてもらわなきゃいけないって、皆そう言ってるじゃない。かあさんだってわかってるのにさあ」

 まだ母親から見れば幼いとしか思えないゼネが海獣漁師になりたいと言えば、一人娘のサナも家を出て祖母の畑を手伝うと言い出す。どちらも薄々わかっていたこととはいえ、ユアンの心中は穏やかではないだろう。

「親なんてさ、そういうもんなんだよ」

 ホウチャンもこの仕事をやると決めた時に、母や兄達とかなり長い間揉めた。だから兄夫婦が存外に早く子供達に折れてくれたことは嬉しいことだった。

「姉ちゃんがやりたがってるんだから、ちょうどよかったんだよ。かあさんはいつまでもぐずぐず文句つけてたけどさ。ばあちゃんちなんか、坂のぼってってすぐじゃないか。なのに嫁入り前だのなんだの、変なことばっかり」

「おまえ、まさかユアンにそんなこと言ってないだろうな」

「かあさんには言わない。漁に出られなくなったら厭だもん」

「違うだろう。心配している親にそんなこと言ったらダメなんだよ。だいたい、おまえだって原因のひとつだろうが」

「わかってるよ」

 ゼネが細い肩をすくめた時、海を見ていたゲンナの体が、ぐんと前へ乗り出した。

「船だ」

 ゲンナの長い指が差す方へ双眼鏡を向けると、ホウチャンにも水平線を引っ掻くように動く船が見えた。

「旗が見えない。いや、見えた。あれはサンダンチャク船籍だな」

「ああ、密航者もうじゃうじゃ」

 ふたりの会話を聞いて、ゼネは腰をあげた。なにも言われないうちに枝に手をかけると、体を支えて降りる体勢をとる。

「じゃあね」

ホウチャンが振り向いた。

「かあさんにうまかったって言っといてくれ」

 ゼネは頷いてから尋ねた。

「ねえ、ここにはいつまでいるの?」

「さっさと帰れ」

 叔父はもう船を見ている。小さな四角い物を掴んだ左手を耳にあてている。ゼネはそれが何なのかしらない。ホウチャンの黒い巻き毛が風にあおられた。周囲の木々も不穏なものを感じたかのように、ザワザワとざわめきはじめた。

――なんにも言わないからばあちゃんも心配するし、俺もこんなところまで来なきゃいけなくなるのになあ。

 そんなことを考えても、どうすることもできない。言ってもこの叔父はきっと、鼻であしらって終わりだ。

「じゃ、帰るよ」

 すると思い返したように、ホウチャンが振り向いた。

「なあ、そう言えば、かあさんはどうして俺達がいる場所がわかったんだ」

 ゼネはふふん、と笑った。

「叔父さん達、おととい、浜でエジャリに会っただろう」

「ああ、南の端の浜でだったかな」

 ホウチャンの眉がぐっと寄って軽く舌打ちをした。

「しまった。あいつ、親父の仕事、始めたのか。知らなかったな」

「そういうこと」

 エジャリの父親は村でただひとつの郵便局を開いているが、ずいぶん前に体を壊し、開店休業状態が続いていた。もともと多くもない郵便物は、町から届いた頃に必要な者が取りに行くことになってしまったが、誰もそれで不便を感じていなかった。だから生業にも就かずにぷらぷらしているだけだったエジャリが仕事を引き継ぐなんて、誰ひとり考えていなかった。それにホウチャンは村に住んでいないのだから、知らなくても当然だ。

「そうか。あいつ、おしゃべりだからなあ」

 エジャリは郵便配達とは、郵便と一緒に噂も伝えて歩くものだと、きちんと心得ている。村では、そちらが主だと言ってもいいぐらいだ。

「別にエジャリじゃなくたって、昨日、南の崖の辺りで会ったよぐらい言うと思うけど」

 ホウチャンは「まあな」と呟き、頭を掻いた。

「おまえも、南の崖辺りってだけで、よくここがわかったな」

「まあねえ。えへへ」

 気をよくして、ゼネは再び尋ねた。

「それで、いつまでここにいるの?」

 返事は無く、ホウチャンの手が帰れと動いた。今度こそおとなしく木を降りると、ゼネは森の中を海岸の方へ歩き始めた。





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