表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想いの彩(おもいのいろ)  作者: ひより那
想いの彩(おもいのいろ)
6/53

第6話 あべこべ試験勉強

 下部に前作までの簡単な登場人物があります。参考にして下さい。

==========

「みんな、美術部の合宿に行くぞ」

 石原先輩(ぶちょう)の一言で美術室では勉強会が開かれていた。

 夏合宿、体のいい石原先輩(ぶちょう)の記念旅行。美術部大好き少女として3年間過ごしてきた最後の思い出を作りたいということらしい。

 ただし、期末テストで全員が赤点(40点未満)をとらないことを条件に涼島(せんせい)から了承を得られた。


「みんな、中間テストはどの程度だったの?」

 石原(ぶちょう)が低い声で部員に問いただす。口調や仕草から必死さが伝わってくる。

「わたしはね、赤点なしの平均70点くらいだったよ」 ──海野が答える。

「わたしは、赤点なしの平均85点くらいでした」 ──中村が答える。

「そうか、わたしは平均96点だ。中々みんなやるじゃないか。それで小鳥遊と花咲はどうなんだ」

「わたしは平均55点です。赤点はありません」 ──小鳥遊が絵を描く手を止めて振り返って答える。


「で、花咲はどうなんだ。まさか赤点があるなんて言わないよな」

 更に声が低くなる石原。みんなの視線が集まる。


「えっと……。赤点はないです。平均は46点だったと思います」

 

 額に掌底を当てる石原先輩(ぶちょう)。顔を振って力を溜めて言葉を吐きだした。

「みんな、勉強会だ! 特に花咲、小鳥遊も参加すること。私が教えてやる。明日から1週間、部活の時間は勉強会だ!」


 よりによってテストの点数を抑えている僕と彩衣先輩が原因で勉強会が開かれるとは思っていなかった。しかしこれも目立たない為、彩衣先輩の視線を感じて視線を返すとクスリと笑って絵を描き始めた。


 

 * * *


 ドコネを使って彩衣に相談していた。個別の連絡は控えて和奏を含めたグループ会話を使っている。


[椎弥] 彩衣先輩、美術部の勉強会はどうしたら良いですか。

[彩衣] 大丈夫よ。椎弥くんは手を抜くコツを分かってるんでしょ。

[椎弥] テストは慣れているんですけど、人に教えてもらいながらなんてやったことないです。

[和奏] なになにー、なんの話?

[椎弥] 美術部で夏休みに合宿をやるのに赤点禁止令が出たんだ。

[椎弥] 赤点に近い僕と彩衣先輩の勉強会が開かれることになったんだ。

[和奏] なにそれー。点数を抑えているふたりのための勉強会ってなんだか不思議ね。「絶対に赤点とりません!」とか言えないの?

[彩衣] 和奏ちゃん、いいのよ。私たちを心配してくれているんだから。

[椎弥] 心配というか……石原先輩が夏合宿に行きたいだけのような気もするけど。

[彩衣] いいのよ。わたしは去年から石原先輩を見ていて、心から美術部が好きなことが分かるから。

[和奏] ぶぅー。わたし、仲間外れにされてるみたい。いいなぁ

[椎弥] そんなことないよ。和奏は赤点の心配ないだろ!

[和奏] 椎弥、それ何かムカつく! そうだ、ふたりとも今度私に勉強教えてよ。彩光の試験がきつくってねぇ。死にそう。

[椎弥] 藍彩の赤点にならない為の勉強会に参加する僕に、彩光のお嬢様が勉強を教えてもらおうなんておかしいだろ。

[彩衣] 椎弥くん、いじわるしないの。じゃあ、今度の土曜日に私の家にいらっしゃい。椎弥くんは和奏ちゃんに連れて来てもらってね

[和奏] 彩衣、恩に着るよー。中間で5位だったからさー。3位までにはなんとか入りたいんだよね

 そのまま、和奏と彩衣の女の子の雑談に続いていった。覗き見しているようで悪いので、直接やりとりできるように部屋を退出した。


 スマートフォンをベッドに放り投げると、追いかけるように仰向けに飛び乗る。

「彩衣先輩の家かー」

 ボソッと口を衝く言葉。

 真っ白な天井が、キャンパスのように彩衣先輩の家を想像させる。確か大銀杏(おおいちょう)の近くの家って……。あの辺にそんなに家なんてあったかなぁ。古くからある家しか無いような気がしたけど。転校……一人暮らし。か。

 

「よし! 今日の分の課題を済ませちゃわないとな」

 スマホを拾い上げてラジオを流す。勉強しながら世間の情報をキャッチする貴重な情報源だ。

 


 ブッゥ、ブッゥ、ブッゥ。携帯にドコネのメッセージが入る。相手は中村。


[茜] 遅くにごめんね。茜です。

[茜] 小鳥遊先輩と仲がいいけど、私のこと何か言ってた? 美術室で私の心を読まれてからずっと気になってるんだ。

[椎弥] いや、特になにも。何か困ることでもあったの?

[茜] あ、そんなんじゃないんだけど。ちょっとね。それならいいんだ。明日からの部活、覚悟してろよー。しっかり勉強を教えてあげるからね!

[椎弥] お手柔らかにね。赤点はとらないようにはするよ。

[茜] そうそうその意気。じゃあまた明日ね。おやすみ

[椎弥] おやすみ。


 茜さんは一体なんの用があったんだろう。椅子に寄りかかって天井を見上げる。携帯から流れる音楽が心地よい。押し寄せてくる眠気に抗えず、布団に倒れるように横になるとそのまま眠ってしまった。



 ○。○。


「……さん。おかぁさん。私を置いていかないで」

 誰だ、真っ暗で誰だか分からない。

「もう止めて、お願い、お願い」

 女の子が叩かれている。可愛そう……止めてあげて

「もうダメだな。まだ小さいのに」

 何で泣いてるの……


 ○。○。

==========

前作までの登場人物:

 1B:花咲椎弥(はなさきしいや)

    ……主人公。中学校で裏切りにあってから人間不信がある。

    中村茜(なかむらあかね) ……クラスメート、同じ美術部

    西田謙介(にしだけんすけ)  ……クラスメート

   担任:涼島啓介(りょうしまけいすけ) ……担任、美術部顧問

 美術部:2A:小鳥遊彩衣(たかなしあい) ……心が読める不思議な少女

     2C:海野夏美(うみのなつみ) ……元気、あまり異性を感じさせない

     3C:石原早希(いしはらさき) ……頭が良い。美術部が大切


 幼馴染:原田和奏(はらだわかな) ……家が近い。小学校の通学班が同じ距離に住む

==========

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ