7話 獺と再会
(え~、意外に近かった川に来ました、出雲 弥伊ことライです、大人の足で歩いて15分程の距離か…1kmくらいか? 幼児の足だったら1時間は掛かったな。)
川に着いたアルトの腕に抱かれたライ、ライが思っていたより近かった事でショックを受けていた。
「いや~何事もなく着きましたね」
「この距離で何かあったらわたしがメアに叱られるではないか!」
「あ~、そ~ですね、そうなると俺も叱られるんですよね?」
「当たり前だろ! てか何も言われなかったらわたしが母上に言いつける!」
「ちょっ!ラウル様それはないですよ! 奥様の方がきついんですから!」
「ふん!知らん! わたしだけ叱られるのは納得いかん!」
「はぁ、ま~何もなかったんで良いじゃないですか」
「そうだな、帰りも気を付けよう、そして何事もなく街に帰らないと…これ以上母上に叱られる理由は要らないしな」
「あ~忘れてました、そう言えばあれでも怒られるんですよね? ラウル様…と俺ら護衛も」
「そうだな…恐らく…いや確実に怒るだろうな、母上の事だからな、ただあれの事で煙に巻けるかもだが希望はないな」
「…せめてご機嫌伺い用に甘い物でも採って…奥様って可愛い物はどうなんです? 好きなんですか?」
「好きか嫌いかで言ったら好きだと思うが、あの二人ほどかと言うとそうでもない気がする」
「あ~そうなると無理ですかね~」
「お前の考えてる事はなんとなく分かるが、それは使えんぞ? あの母上の事だ、それはそれ、これはこれ、で流されてしまいそうだし、そもそも効かないかもしれんからな、だからわたしはこのガキ…いや坊主に私達の味方に付いてもらって便宜謀ろうと、な」
「上手くいきますかね~」
ラウルとアルトの会話が長いことにしびれを切らしてライが話し掛ける。
「あにょ~、おろちて、もりゃっても、いいでしゅか?」
「お、あーすまんすまん、ほら行ってこい」
「あい」
下ろしてもらい川まで歩く。
(ふぅーやっと下ろしてもらった、話が長いんだよな~、まあ助けるのは吝かではないがお母さんが怖い人なら諦めてもらおう! 俺は自分の身が可愛いからな、骨は拾ってやるからどうか俺に飛び火しないようにしてくれ、さてやっと股間の嫌な感覚から解放されるんだな。)
(ん~、下半身ごと川に入ると足が持っていかれそうになるな、気を付けよう…これぐらいで良いかな? 後は絞って終わりかな?。)
「ん!」
ライが必死に絞るが…絞れない、所詮幼児の腕力で絞れる限界はたかが知れている。
(ふん!ん~がっ!無理! 幼児の腕では無理だ! 仕方がないアルトさんに頼むか。)
ラウルとアルトがあーでもないこーでもないと話してる間に割り込む。
「ですから奥様に説明するのを、あの坊やにしてもらうって言ってるんですよ、そうすれば少しは…」
「しゅみまちぇん」
「ん? なんだい坊や」
「しぼれにゃいかりゃ、おねぇがい、しましゅ」
「あー良いぞ、貸してみな」
「あい!」
「ふん!」
アルトが力強く絞ると、すると【ザー】っと音をたて水が大量に出てきた、それを見たライは思ってる以上に自分の力が無いことにショックを受けてしまった。
(がはぁ! ここまで力が無いのか、本当にサーベルライガー?を倒せたのは運が良かったんだな、転生?してすぐに死ぬのはさすがに嫌だからな。)
「ほら坊や、さっさと着ないと風邪を引くからな」
「あい」
いそいそと濡れたパンツ越しにズボンを着る。
「おい、護衛あれは何だ?」
「なんですかラウル様、…なんでしょ…見たこと無い魔獣ですね」
アルトの言葉を聞いてライはその魔獣の方へ向く。
「…かわうしょ?」
そう、ライが言ったように獺である、ただし少し角が出てるぐらいの違いはあるが。
「カワウショって言う魔獣か?」
「いやいや、ラウル様この辺でカワウショって言う魔獣が居るなんて聞いたこのないですよ」
見当違いの解釈をするラウル、これにはアルトも突っ込む。
「なら、なんなんだ?」
「そうですね~考えられる事は新種の獣か魔獣、もしくは俺らが知らない幻獣か聖獣ですかね」
「おいおい、こんな森に幻獣は居ないだろ、幻獣は一匹でも脅威がそこらの魔獣とは比べ物にならないんだぞ?」
「それは俺も知ってますよ、もしくはですよラウル様、俺の予想では新種の獣ですかね~」
(…二人はいろいろ言ってるけど、ちっちゃい角以外は獺だな…ん? 俺の事みてる?。)
[キューキュー]
「何か鳴いてますよ? ラウル様どうします? 倒しますか? それとも捕まえて奥様に献上します? 献上したら少しは怒りが減りませんかね?」
「献上も良いが、捕まえてギルドに売ってその金で宝飾品を買った方が良くないか?」
(なんで平然と狩るとか売るとか言ってるの? あんなに可愛いのに! でもなんだろうもの凄く見覚えが有るんだよな~、あの甘えてくる目、そして鳴き声は違うけどお出掛けに置いてかないでって感じの鳴き方、……まさかな自分が転生してるからあいつも転生してるなんて…そんな甘い話…無いよな…、試しにそう試しに呼んでみるか?。)
「ふちゅま?」
[!!キューキュー!]
まるで「そうだよ!私だよ!」って言っているように動きながら鳴いている。
「ふちゅま!」
目に涙を溜めながら【とてとて】と駆けるライ、そして一匹と幼児が抱き締め合う。
やっとマスコットキャラが出せた。(ちょっとだけど)
もっと獺好きが増える様に可愛さを出せるように頑張りたいな~。