4話 魔法は在るんですね!
前回同様に3話連続です。
(ナイフ~♪ナイフ~♪ナイフさんはどこかな~♪っとその前にご冥福を祈ろう、日本人としてはさすがに遺体を漁るならね。)
両手を合わせて目を瞑り祈りを捧げる。
(安らかにお眠りください、後貴方のナイフを少しお借りします。)
冥福を祈った後懐を漁ると…。
(お!有った有った、これで剥ぎ取れる♪……っでどうすれば良いんだ? 初めてするんですけど…、ん~グロイけど前足の爪が有るとこまで切っちゃうか?。)
ザクザクゴリゴリっと音を出しながら切っていく。
(うっわ~グロイ、うっぷはきそう。)
吐き気に襲われながら切り取っていく。
「おぉえぇぇ」
前足を切り終わるまで我慢したが、抑えきれずサーベルライガーの横で吐く。
(剥ぎ取る? いえ足を切っただけです、これでも頑張りました!吐きましたけどね! もう一匹は要らないです、正直限界です!今すぐにお布団に入って寝たいです!。)
涙目になりながら前足を抱えると後ろからヘレナに呼び掛けられる。
「大丈夫ですか? わたくしが変わりましょうか?」
「【すん】、いい、でしゅ」
半泣きになりながら答える。
「もういっぴぃきは、【すん】、いら、にゃいでしゅ」
「そ、そうですか…わたくしがやしますわよ?」
ヘレナは震える手を押さえながら笑顔で答える。
「いら、にゃい!」
頑張って威勢を張って拒否するが、ただただ可愛いだけである。
「!わ、分かりました、ではそちらの前足を持って馬車の中に行きましょう」
「ばしゃ、いきゃにゃい、きししゃんのかみ、しゅこしきる」
「? 髪を少し切ってどうするのかしら?」
髪を切ることに疑問を口にするヘレナ、それもそのはずだこの世界に遺髪で供養する習慣はない。
「くよぉしゅる」
「クヨォ?それは何かしら?」
(あ~そうか! 異世界には遺体か遺骨が持ち帰れない代わりの、遺髪で供養する事が無いのか、どう説明すれば分かるんだろう?)
「うぅ~~ん」
どう説明すれば良いのか悩んでる内にヘレナが質問してくる。
「もしかして、死体をどうするのかって事かしら?」
(おぉう? この人察しが良いな~、ただちょっと違うんだよな~、遺体をどうするの?ではなく、遺体の代わりに何を持って帰るの? が正解なんだけど。)
「いっちゃい、もっちぇ、かえぇにゃい、だかりゃ、かわり」
「死体の代わりに髪を持ち帰るって事かしら?」
「あい!」
(なんとか通じた、幼児の発音がまだ未発達だから聞き取りにくいだろうな~、俺も喋り難いからすっごくもどかしい。)
「そうね~、子どもに言って分かるかしら」
「わかりましゅ!」
「そ、そう? 分かるのね? なら言っても良いのかしら?」
「あい! おねがいしましゅ!」
「あら、畏まりました、それじゃー説明するわね」
可愛い物を見る目で優しく話すヘレナ。
「まず、貴族の護衛騎士は任務中に死んだ場合、騎士を雇ってる貴族の家紋が入ったペンダントですね、冒険者や商人は各ギルドのカードです、分かりましたかしら?」
「あい!」
「本当に?」
「あい、かもん、ぺん、だん、と、もっちぇ、にげぇう」
「ん? 逃げるの? 馬車の中に?」
「ばしゃにゃい、まち、にげぇう」
「馬車じゃなく街に逃げるの?」
「あい!」
「街へ向かうより、馬車の中で助けが来るのを待った方が安全よ?」
「ばしゃ、こわれきゃけ、あぶにゃい!」
「確かに車輪は壊れてますが、馬車の箱は防御強化系の付与が施されてるのよ? だから車輪が無くても中は安全よ?」
「!!」
(防御強化系の付与! それは付与魔法かなんかですか!って聞きたいけど発音が怪しい幼児の口からハッキリと発音できないんだろうな…、魔法が在るのなら発音が怪しくても理解力の高いこのメイドさんに聞いてみよう、ワンチャン有るかもしれないからな!)
「まほぉありましゅか!?」
「え? 魔法かしら?」
「あい!」
「魔法は在りますよ? それより先ずは馬車の中に入りましょう」
「! ばしゃまぇに、きししゃんの、ぺん、だん、と、!」
「それは助けが来てからにしましょうね、助けを呼ぶ魔法を使ったからすぐに街の衛兵が駆けつけてくれるから」
「まほぉちゅかったでしゅか!いちゅ!」
魔法を使っていた事に反応し、興奮して早口で捲し立てる。
「え、え、あのね、ごめんなさいね、早く喋られるとちょっと分からないわ」
(あ! やっべ~興奮して早口になってしまった、反省してゆっくり話そう。)
「ごめなぁしゃい、まほぉを、いちゅ、ちゅかったんでしゅか?」
「それに答えるからまずは馬車の中に入りましょう? ね?」
「あい」
しょんぼり落ち込みながら返事を返す。
「うん、それじゃ行きましょうか」
ヘレナは弥伊の手を繋いで歩き始める。
(うぉおふ! ナチュラルに手を繋いできた! 女性と手を繋いだのなんて高校の時の彼女とだけなんだけど! ま~1年程で別れたんだけどね甘酸っぱく悲しい思い出だ…、忘れてしまいたい、でもこのメイドさん絶対に俺のことを保護欲で手を繋いだんだろうな。)
弥伊はそう考えながらヘレナの顔を見る。