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30話 骨折り損は嫌だよな~

思ったより短くなった…すいません。

 二匹のドラゴンが地面に降り立つ、オスの方は細く筋肉質の様な鱗の体に3本の角が有る、その角は後頭部から後ろに伸びている2本は黒い、額から前に伸びているのが白い角、目は金色だ、その目がバーダを見そのまま視線をずらし馬車を見る。


『ヒューマン、今更我が子ヲ返して赦されると思ったノか?』

「そんなつもりは御座いません」


 バーダはオスのドラゴンに片膝を地面につけ頭を下げる、ギリーは静かに佇んで居るがいつでも動けるように足は少し広げている。


『では何故今更我ノ子を返す! きさま等盗人風情が何ノ用だ!!』

「話をしたいのです、今回卵を盗んだ物は他国の企みに利用されただけの平民なのです、赦して欲しいなどとは言いません、ですがその他国をどうにかしなければ、また同じ事が起こる可能性は高いと愚考します、今回は我々の国が関与していないので迅速に動き犯人を捕まえ更に卵も無事でした、ですが次はどうなるかは私共には分かりかねます」

『ならば手っ取り早くヒューマンヲ滅ぼせば良かろう! 我ノ手で滅ぼしてくれる!!』


 ドラゴンがそう言って口の中に爆炎の焔を溜める、それを見たメスのドラゴンが止める。


『アナタ…怒っていルのはアナタだけでは無いのでスよ? それにワタシの可愛い子は無事なのでス、話ぐらいは聞いてやりませんか? もしそのヒューマンの言った事が正しいならその国も滅ぼせば良いのではないでスか』


 静かに蒼く燃える様な鱗のメスドラゴンが言う。


『…ふむ、少しは頭が冷えた…、良いだろう聞いてやるヒューマン、さぁ話せ』

「では僭越ながら、まず我が国は一切関わっていなかったことは分かっていただきたいと思います」

『ふん! そんな事は知らん! 我はただ我が子ヲ盗んだ愚か者ノ種族が許せんだけだ』

『アナタ、ワタシは今はそこまで怒っていません、それに神獣様は何と言うか分かりませんからやり過ぎない様にしてください』

『分かっている、神獣様は怒らせてはいかんからな、…だが我ノ怒りが静まる程度なら許してくださるだろう、さぁ続きヲ話せ』

「はい、今回の首謀国はガイシュラン王国です、ですが裏でビウラ帝国が企んだ可能性は高いです、何故なら転移の遺跡は帝国に在る物を使ったらしいので…、ただどちらも我々が予想しただけなので確かな情報では無いです、どう判断するかは聖獣様が決めてください、それと我々が言えた立場では無いのは承知の上でお願いが有ります」

『願い…だと!? きさまは我が子ヲ盗み更には願いだと!! 我ヲ舐めているノか!!』


 オスドラゴンの怒りにより周囲の空気が一変した、まるで空気が鉛になったように重い…体を動かすのが難しい程に重く感じる。


(ヤバイヤバイ! 針が身体中を刺す様に悲鳴を上げて心が今すぐに逃げろって言ってる! バーダさんお願いだから逃げて! このまま逃げよう! もう国がどうの言ってられないぐらいに怖い! あ、ドラゴンが動いた!。)


 オスドラゴンは怒りの感情をバーダにぶつける様に右手を振り下ろす。


「っく!」


 バーダは振り下ろされる手を防ぐ為に全力で身体強化をする。


【ズドーン!!】


 バーダはクロスさせた腕で辛うじて押し潰されるのは防げたが、まるで大砲の様な音の攻撃はバーダの左腕と右足の骨を折った。


「ぐ! ぐぅぅ!」

『ほぉ、これヲただノヒューマンが防ぐか、だがこノままでは潰れるぞ!!』


 オスドラゴンはバーダを押し潰す為に力を入れる。


(!! このままだとバーダさんが死ぬ! ギリーさんは!?。)


 ギリーはメスドラゴンと睨み合っていた、動けば攻撃される中、動けずにいる。


(くそ! どうするどうする、あの方法を取ればこの場は何とかなるかもしれないけど…、最悪自分は全身の筋肉繊維がボロボロになって動けなくなる…だけど親しくなった人を見棄てるぐらいなら!。)


 ライは微弱な雷魔法を全身に纏い動く、まるで雷の如く素早く動く。


(出来た! 喜んでる暇は無いよね、まず攻撃を止めて貰わないと。)


 雷の様に動くライはバーダの横を抜け、そのままドラゴンの背を登り首に抱き着いて雷魔法を使う、まるで大出力のスタンガンの様に。


【バチッ!!】


[Gaaa!!]

「ぐっ!」


 痺れて硬直するオスドラゴン、ドラゴンの手の圧力から解放されたバーダ、それらを見ていたメスドラゴンは驚愕する、ドラゴンの動きを封じたのが年端も行かぬ幼児だった事実に。


『な! 我らエンシェントドラゴンの動きを止めたのが幼児だなんて信じられない…』

「小僧…お前そんなに強かったのか…」


(なんとかなった! でもヤバイ! 魔法を解いたら動けなくなるな…しかも体が少し焦げてるっぽい絶対痛くなるよ~、雷魔法で神経に働きかけて痛みを感じなくしてみるか…てかで来てるな、それよりも俺が動けなくなる前に早く話してお願いが聞いてもらえるように言わないと。)


「はなちあい! ぼーりょく! だめ! ばーたしゃん、にゃにも、こーげき、ちてにゃい! しょれに、どらごしゃん、むりゃびちょ、ころちた! こっちは、たまご、きじゅつけてにゃい! どらごしゃん、にょほーが、わりゅい!」

『な…ん…だと!』

『アナタ…この子の言ってる事は正しいわ、私の可愛い子は無傷なんでスから』

『ぐぬぅ…、分かった聞いてやる…言え!』


(なんとかなった~、あ…、ヤバイ、もう全身の雷魔法が消える痛みを感じなくする為に首の部分は維持しないと…あ~もう無理。)


 ライの魔力が3割ほどしか残っておらず1割になると強制的に意識がなくなるのだ、なので今は意識は保ててるがそれも普通なら時間の問題だが、ライは体内魔力を調整していたので少しの使用なら減った分を自然回復出来る、だが体を動かす事は出来ない。


「ぎりーしゃま、たしゅけて」


 ライは力なくドラゴンの首から落下する、ライの言葉を聞いたギリーはドラゴンに睨まれていた事を忘れて急いで駆ける。


「おいおい! っく! あっぶね~な」


 地面に落ちる前になんとか捕まえる事が出来た、安全な所に行けたライはちょっと安心した。


「ライ君危ないのですから出てきては駄目ですよ、今回は私が助けられたので強くは言えませんが」

「あ~い」

「お前ら二人共だ! どっちも無茶し過ぎだ! こっちはずっとひやひやしながら見てたんだぞ!」

「すまんギリー、さて聖獣様方先ず卵を盗んだ者達を見てもらいます、ただ今は見るだけにしてください、ちゃんと説明しますのでその後に判断してください、では出てきてください、アレックス殿ディータ殿」


 馬車に呼び掛けると二人は卵を大事そうに抱えて出てくる。


『ワタシの可愛い子!』


 メスドラゴンが卵に近づく、二人はびっくりするが抵抗しない様に止まる。


「ねすんでしまって「すみません!」」

『ああぁ、良かった無事に戻ってワタシの可愛い子、もう離れないから安心してね』


 二人の事など眼中にないメスドラゴン、ただただ自分の子供が戻った事に安心し子を愛でる。


『コイツ等が!!』

「待ってください!」

『なんだ! ヒューマン!』

「先ほども申しましたが、全部話してから判断してください」

「はなし! しゅる!」

『っく! 分かった、さっさと話せ!』

「ふぅー、ライ君ありがとう、まずこの二人は盗んだことは大変後悔しています、それにこの二人以外にまだ三人居ます、ギリーすまないが馬車から出してくれ」

「おう!」


 ギリーは馬車の中で漏らして車内を汚してる三人の首根っこ掴み外に放り投げる。


「「「ぐえぇ!」」」

「この三人は元盗賊です、なので聖獣様に気付かれないで盗めたのはこの三人のスキルを使ったからなのでしょう」

『ほう…、今すぐに殺したいが…そこノヒューマンノ小僧に免じて今は放置してやる、だが! 話ヲ聞いて赦せなかったら魂まで燃やし尽くしてやる!!』

「ありがとうございます、そして先程の二人は国に命じられて仕方なくやったこと、ですが二人は自分の仕出かした事の重大性に気付き反省しました、それにこの二人は家族を人質に取られているので逆らうことは出来ません、この二人の気持ちは聖獣様ならわかると思います、そこで彼らの願いと我々の思惑が一致したので提案が有るんです」

『提案? 我に利があるノか? 無ければ聞く意味がないが?』

「いみ、にゃくにゃい、どらごしゃん、むりゃびと、ころちた、むりゃの、りぇきぶん、はたりゃく!」

『なんだと!?』


オスドラゴンがライを威圧を籠めて睨むが、ライは怯えずに睨み返す。


『…フ、フハハハハ! 我に睨み返すか小僧! 良いだろう! 気に入った! 今回はそこの小僧とニュグラに免じてその提案とやらを聞いてやる』


 ライの睨み返すがドラゴンの琴線に触れて気に入られる。


(こえ~! でも納得できないからな! こっちはバーダさんを傷つけられて何もなかったら正に骨折り損だよな~、まー聞いてくれそうだし良かった、…ただニュグラに免じてが良く分からん、俺の称号のニュグラの加護の事か?。)

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