2話 初めての異世界生物
「ふんふんふふんふ~んふんふん♪」
大き目の枝を剣の様に振り回しながら鼻歌をしながら森の中を歩いている。
(鼻歌まじりに足元を見ながら時折小枝を拾い歩いてます、え? なんで鼻歌なんてしてるかって? それは…怖いんです!マジで!怖さと不安で泣きそうになったから鼻歌ってるんです! 最初は木から降りて野生の生き物が襲って来たら危険だから息を潜めて歩いていたけど、恐ろしい程音がしないんです! そりゃ~風が吹いて木々が擦れた音や葉っぱが擦れる音はするんですけど、生き物が居る音は一切聞こえないんですよ! 幼児の心臓には絶えられないんですよ! それと枝を集めてるのは昔ゲームで野生動物を枝で倒してたのを思い出して一応集めてるんですが…、生き物が居る気配がないから意味があるのかどうか…)
怖さを紛らわしていると遠くから物音がする。
【ガンガン! ガリギャリ!】
[グルルル、ガァァ!]
(!!物を壊してる音となんかの肉食動物っぽい鳴き声が聞こえた気がする! 嬉しい反面怖いけど…何かを襲ってる? 息を潜めて近づこう。)
【ガリガリ、バキッ!】
馬車の車輪が壊れる。
[ガァウ!][グルルゥ]
弥伊は物陰から確認してみると、一匹は馬車から少し離れた場所に倒れてる騎士に食らい付いている、もう一匹は馬車を襲ってるのが見て取れた。
(うっわ~、マジか~二匹いるしどう見ても猫科の生き物ですよね? ただ猫科にしては爪が長くないですか? 長さは大体鉈ぐらいか? …え~っとあれは勝てないよね? 大きさもライオン並みにでかいし、見ないふりは…出来ないですよね~。)
(だってこの二匹、馬車を襲ってるし、しかも貴族の馬車っぽいの、助けないで逃げた先で疑われる? 幼児だから大丈夫? ま~疑われなかったとしても後々自分を赦せなくなるんだろうな~。)
(助けるならどうやって助ける? 持ち物は枝と小石とコイン…あの生き物に枝刺さる? 無理な気がする、ん~眼なら刺さるだろうけどそれで幼児の腕力で倒せるか? 考えるよりも行動しないとそろそろ馬車が危ない気がする。)
(まずは手前の騎士?の腹を食べてる奴の眼に枝を指して、頑張って押し込もう!。)
(そろ~りそろ~り、よしここからなら眼を狙える!。)
「やっ!」
[ギャッ!]
(よし! 上手い事眼に刺さった! 後は体重をかけて押し込もう!。)
獣が振り解こうと暴れる。
「うっぐ! はなちゅな!」
離すまいと踏ん張っていると、獣の首に乗った。
(! 運良く首に乗れた! このまま引っ張るように枝を押し込めれば!。)
[グゥルゥグギャッ!ギシャー!]
断末摩の叫びを上げ倒れるが生死の判断をする暇もなくもう一匹が襲ってくる。
(ヤバイ!考えてる暇がない!。)
視界に騎士の剣が見えそれを持ち上げようとしたが、持ち上がらず尻餅をつく、その反動で手から離れた剣が跳ね刃の部分が上へ向く、そこに獣が飛び込んできた。
「っひぅ!」
怖さに目を瞑る。
[ガッ!]
刃先が獣の心臓を貫いて背中まで刺さっていた。
(…ん? 襲ってこない?。)
そっと目を開く。
(!!)
目の前に獣の顔があり思わず股間が温かくなる。
「たぁ、たぁおちた?」
半泣きになりながら恐る恐る近づいて枝で触るが、動く気配がない。
(ふ~なんとか倒せた~、何だか内股が温かいが気にしてはいけない、さて危険が無くなった事を知らせてここから離れないと他の危険な生き物が来るかもしれない。)