10話 収納だと!欲しい!
「戻ったぞ!」
馬車まで何事もなく戻ってきたライ達。
「お兄様お帰りなさい、ライは大丈夫でしたか?」
そう言いながらライを見る、ライが抱いているフツマを見て背中に般若が現れる。
「「…」」
メアから目をそらす二人。
「お二人とも聞きたいのですが…ライが抱いている生き物は何ですか?」
背中に般若を覗かせながら笑顔で聞いてくる。
「いやまてメア! 説明は本人がする!」
「そうです! ライ自身で説明すると言ってました!」
「そうですか…、ではライ…説明してください」
(うぅおい! いきなり見捨てたぞこの二人! 約束はどこ行った! っく! 仕方ない拙い言葉で説明するか。)
「あい、かわ、いっちぇ、かわ、はいっちぇ、でたりゃ、ふちゅま、いちゃ」
[キューキュー]
(ふぅ、何とか説明できたかな? 自分で言ってて意味わからんけど、どうしても繋げて言うと舌がついてこないんだよな~、まあこれで分からなかったら、フツマ、友達って言えばいいか。)
「…ライ? 川に入って出たのは分かります、その後のフチュマ?が居たから今抱いているの説明にはなりませんよ?」
「お嬢様、フチュマではなくフツマらしいですよ?」
「アルト、今名前はどうでも良いから、なぜこの生き物をライが抱いているのかを説明しなさい」
「!にゃまえ、たいしぇちゅ! ふちゅま! かじょく! ていしぇいちて!」
「そうですね、名前は大切な事ですね、ライ申し訳ありません、ですがそのフツマ?は魔獣かもしれないのです、魔獣だった場合小型でも脅威なんですよ?」
「ふちゅま、あんじぇん、だいじょぶ」
[キュッ! キューキュッ!]
フツマは「安全! 私は何もしない!」と言っているが、ライ以外は誰も全く分からない、ライもなんとなくしか分かっていないのはご愛敬。
「…はぁ、安全かどうかは分からないけど、大人しいのとライに懐いてるのは確かですね、そうですね…街の門で鑑定水晶が有るので、そこでライを見てみましょうもしかしたら従魔扱いになっているかもしれませんからね」
「お嬢様、それまではわたくしがお預かりいたしましょう、ついでにライちゃんも一緒にお世話を致しますよ?」
「ヘレナはただライ達を愛でたいだけでしょ?」
「いえ、ちゃんとお世話も致しますよ?」
「も、じゃないでしょ? を、でしょ?」
(ヘレナさんは通常運転ですね、それはそうと従魔って言った? もしかしてテイマー職在るの? 冒険者ギルドが在るのは聞いたけど職業あるのか? ならテイマー兼魔法使いが良いな当然接近戦も出来るな。)
「取り敢えずガキと魔獣は置いといて、街に帰るか?」
「ええそうですね、それとライ」
「う?」
「サーベルライガーは解体してもらいましたが、解体費として一部彼等にも与えても良いですか?」
護衛が頑張って解体したサーベルライガーが袋に入っている、解体自体は護衛が休みの時に狩りで慣れていたが、流石に無償は可哀相だ。
「…あい」
若干不満があるが自分で出来なかったので納得して頷くライ。
「ありがとう、彼等は護衛をしていない時は狩りをして、生計や武器などを買ったりするので、無償だと貴族としての体面的に困るので助かります」
「子どもからとるのは忍びないが、そろそろ私も剣を新調しないとボロボロなんです、狩りも上手くいかなかったし、主は直感で動くから休みも無く手入れがちゃんと出来ないままで不安で…もう…はぁ」
「ごめんなさいねリサ、お兄様の事はちゃんとお母様に報告しとくから許してね?」
「いえいえそんな、お嬢様が謝る事ではないです」
「待ってくれメア! 母上に報告も何もわたしはするべき事をしてるだけだぞ!」
「いやいや、ラウル様はいつも忠告を無視して動いてますよね? 俺は…いや俺等はいつも振り回されてますよ」
「後、なぜお兄様が帰ってきているのかも詳しく聞きたいですね」
「そ、それはわたしから母上に言うから大丈夫だ…うん、大丈夫のはずだ…」
「「はぁ」」「まぁ無理だろうな」
アルトとリサのため息が被り、身長2メートルぐらいの護衛は、ぼそっと呟く。
(…! 初めて喋った!この護衛さん、女性の護衛さんはリサさんなのは憶えました、でずいぶん低い声で喋るこのデカイ護衛さんの名前は?。)
「それでは皆様、行きましょうか」
ヘレナが手ぶらでそう言った。
「「「っは!」」」「ええ」「うむ、さぁいくぞガキ!」
護衛は乗ってきた馬に跨り、ヘレナはリサの後ろに座り、メアはラウルのデルンターに乗った。
「?」
「どうした? 坊や」
「にもちゅと、きししゃんの、しちゃいは?」
「ん? あーそれは収納鞄に荷物を入れて、騎士達は収納魔法で持って帰るんだ、それよりほらこっち乗りな」
アルトは手を出して言う。
(またしても付与系の魔法アイテムか! しかも収納魔法って良いな~、俺も使えるようになるかな? おっと考えるのは乗ってからで良いか。)
「あい!」
[キュー!]
そしてライはアルトの前に納まる、フツマもライの上着に入り込んで胸元から顔を出して外を眺める。
「キィー、わたくしも乗馬を習っていればライちゃん達と乗れたのに!」
ヘレナに変な恨みを向けられるアルト、皮肉なことにライはアルトで良かったと安心していた。
一行は街へ帰る。




