付録 3
しょくじがおわってよるになると、
メアリーはしようにんのしょくどうをかりてジョージとセーターをほどきました。
それは、フランクがこどものころにきていたもので、
なくなったフランクのおかあさんが、かれのためにつくったものでした。
セーターがきれなくなっても、フランクはおもいでのセーターをたいせつにもっていました。
それなのに12さいになって、オーストリアにぎょうぎみならいにいくのがきまってから、
ジョージにしょぶんすることをたのんできたのでした。
「もう、おおきくなったのだから。」
フランクのそのことばが、ジョージをさみしいきもちにさせたのでした。
フランクが、いそいでおとなになろうとむりをしているような、
そんなたいどが、ジョージには、せつなくかんじたのでした。
いくら、せいちょうするからといっても、おかあさんをおもうきもちをおいていかなくてもいいと 、 ジョージはおもいました。
だから、フランクにたのまれましたが、セーターをすてることができずにいたのです。
でも、メアリーのあんだぼうしにかわるのなら、
きっと、おくさまもよろこんでくださるにちがいない。
ジョージは、そうおもいました。
ジョージは、メアリーとセーターをほどいていとにすると、
つぎによんほんのきでできた、あみものようのはりをとりだしました。
「ジョージあなたは、おとこのひとなのに、あみものをするの?」
メアリーはふしぎになってききました。
「アタシは、アイルランドのりょうしのうまれなんでね。
おとこでもセーターをあむんですよ。
ついでに、あみのしゅうりなんかもうまいんですがね。」
ジョージは、そういってメアリーにぼうしのあみかたをおしえてくれました。
メアリーは、メリアスあみという、きほんのあみかたでせいいっぱいでしたが、
アイルランドのりょうしのセーターは、
とてもふくざつでうつくしいもようをあみこむのだそうです。
それは、かもんのようにいえによってちがっていて、
あらしのためにうみでおぼれないように、ねがいがこめられるのだそうです。
「メアリーじょうちゃん。
じょうちゃんも、どうか、フランクぼっちゃんのしあわせをいのってくださいね。」
すうじつがたち、ぼうしがあるていどできたとき、ジョージがしあげをてつだいながら
メアリーにいいました。
「うん。いまは、これがせいいっぱいだけれど、
いつか、ちゃんとしたセーターをフランクにあんであげるわ。」
メアリーは、すなおにほほえみました。
「そのときは、また、あたしがおしえますからね。」
ジョージは、メアリーのすなおなえがおに、
フランクのあかるいみらいをみたきもちになりました。
すうじつご、ぼうしはできあがり、メアリーのおうちでつくられたワインとともに、
オーストリアのフランクのもとへとおくられました。
そして、ジョージのうまれこきょうのアイルランドのいえにも、
メアリーのだいひつした手紙とともにワインがおくられたのでした。