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おかえし  作者: ふりまじん
おくりもの
3/7

食事が終わって夜になると、

メアリーは使用人の食堂を借りてジョージとセーターを解きました。


それは、フランクが子供の頃に着ていたもので、

亡くなったフランクのお母さんが、彼のために作ったものでした。


セーターが着れなくなっても、フランクは思い出のセーターを大切に持っていました。


それなのに12才になって、オーストリアに行儀見習いに行くのが決まってから、

ジョージに処分することを頼んできたのでした。

「もう、大きくなったのだから。」


フランクのその言葉が、ジョージを寂しい気持ちにさせたのでした。


フランクが、急いで大人になろうと無理をしているような、

そんな態度が、ジョージには、切なく感じたのでした。


いくら、成長するからと言っても、お母さんを思う気持ちを置いて行かなくてもいいと、

ジョージは思いました。


だから、フランクに頼まれましたが、セーターを捨てる事が出来ずにいたのです。

でも、メアリーの編んだ帽子に変わるのなら、

きっと、奥さまも喜んでくださるに違いない。

ジョージは、そう思いました。



ジョージは、メアリーとセーターを解いて糸にすると、

次に四本の木で出来た編み物用の針を取り出しました。


「ジョージは、男の人なのに、編み物をするの?」

メアリーは不思議になって聞きました。

「アタシは、アイルランドの漁師の生まれなんでね。

男でもセーターを編むんですよ。

ついでに、網の修理なんかもうまいんですがね。」

ジョージは、そう言ってメアリーに帽子の編み方を教えてくれました。


メアリーは、メリアス編みと言う、基本の編み方で精一杯でしたが、


アイルランドの漁師のセーターは、とても複雑で美しい模様を編み込むのだそうです。


それは、家紋のように家によって違っていて、

嵐のために海で溺れないように、願いが込められるのだそうです。




「メアリー嬢ちゃん。

嬢ちゃんも、どうか、フランク坊っちゃんの幸せを祈ってくださいね。」

数日がたち、帽子がある程度出来たとき、ジョージが仕上げを手伝いながらメアリーに言いました。

「うん。今は、これが精一杯だけれど、

いつか、ちゃんとしたセーターをフランクに編んであげるわ。」

メアリーは、素直に微笑みました。


「その時は、また、アタシが教えますからね。」

ジョージは、メアリーの素直な笑顔にフランクの明るい未来をみた気持ちになりました。



数日後、帽子は出来上がり、メアリーのお家で作られたワインと共にオーストリアのフランクの元へと送られました。


そして、ジョージの生まれ故郷のアイルランドの家にも、

メアリーの代筆した手紙と共にワインが送られたのでした。


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