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おかえし  作者: ふりまじん
おくりもの
2/7

「私、本をあげたの。」

メアリーは、リンゴの花びらのようなピンクの唇を噛み締めて、くやしそうに言いました。

「それのどこが、悪いのですか?」

ジョージは、うつ向くメアリーの愛らしい姿に目を細めて不思議な気持ちになりました。


本なら、フランクは大好きです。

しかも、大好きなメアリーがくれる本なら、嫌なはずがありません。


不思議そうに見るジョージに、メアリーは、大人なのにとあきれてしまいました。


「確かに、本を送ることは悪いことではないわ。

問題は、私のずる賢い行いの方なの。」

メアリーは、牧師さんに懺悔(ざんげ)をするように、

くたびれた作業着のジョージに悲嘆(ひたん)な顔で見上げてこう言ったのです。


「『ティル・オイレンシュビーゲル』の本を送ったの。私が読みたかったから。

もう、大人のフランクに。

きっと、フランクは呆れているわ。

でも、お兄さんだから、何も言わないでいてくれるの。」

メアリーがあんまり悲劇的に顔を歪めて懺悔をするので、

ジョージは、もう少しで大笑いをするところでした。


40年も生きているジョージからしたら、メアリーもフランクもまだまだヒヨコのようなものです。


それにメアリーが大好きなフランクにはどんなに立派な勲章よりも、

メアリーに本を読んでほしいとねだられる方が嬉しいはずです。


ジョージは、息を吐いて真面目な顔を作ると、

(つと)めて真剣にメアリーに言いました。


「メアリー(じょう)ちゃん、心配はいらないよ。

40才をすぎたアタシだって、ティルは今でも大好きですから。

フランク坊っちゃんも昔から、ティルが大好きです。

イエスさまに誓っても良いです。

坊っちゃんは、メアリー嬢ちゃまのプレゼントを喜んでおりますよ。」


ジョージは真面目な顔を作る努力をしました。

メアリーは、その顔をジッと見つめて、それからほっとしたように、やわらかい笑顔になりました。


「よかった。」

メアリーは、こころからそう思いました。

でも、胸に当てた左の手がフランクのブローチに当たると、また、暗い気持ちになりました。


「ああ…でも、やっぱり、私は、悪い子だわ。

フランクは、私の為におこづかいをためて、こんなに素敵なブローチを買ってくれたのに…

わたしときたら、クリスマス・マーケットの誘惑に負けて、自分の為の買い物ばかりをしてしまったの。 今からでも、フランクの喜びそうな贈り物をしたいけど、おこづかいはもうないし。」

メアリーは、自分の行いに悲しくなりました。


その真剣な様子が可愛くて、ジョージはまた、笑いたくなりましたが、ぐっと我慢しました。


「それは困りましたね…。」

ジョージは、真面目な顔を作って、一緒に悩んであげました。

「そうなの。何か、お金のかからない、

素敵な物があれば良いけれど…。

そんな都合の良いものあるわけがないわ。」

メアリーは、寒さで頬を赤くしながら真剣に悩みました。


ジョージも、メアリーの為に必死に考えてあげました。


お金のかからない、ステキなもの…


「では、坊っちゃんの絵でも書いてあげたらどうでしょう?」

「ダメよ。私の絵なんて、このステキなブローチには勝てないわ。」


「では、毎日手紙を書いてみたら?」

「ダメよ。私、そんなに書くことないもの。

日記だって、いつもお母様に叱られながら続けてるんだわ。」

メアリーは、絶望的な気持ちになりました。


「では、毛糸の帽子はどうでしょう?」

「ダメよ。毛糸を買うお金なんてないわ。」

「大丈夫です。毛糸はありますから。」

ジョージの言葉に、メアリーはビックリしました。

「ジョージ、アナタが毛糸をくれるの?」

メアリーが驚いて聞くと、ジョージは、首をふりました。


「いいえ、アタシの毛糸ではありません。

坊っちゃんが、アタシに始末を頼んだ代物(しろもの)なのです。」

ジョージは、なにか楽しいことを思い付いたように微笑みました。


誤字の指摘ありがとうございます。

もう、毎回いっぱいいっぱいなので、助かります。

今回はローマ字打ちの間違いのようです(^_^;)

Zu ず ではなく、du づなのですねf^_^;

いつか、誤字を使ったミステリーを書きたいと

考えてるので、書いておきます。

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