6 咲とのデート 第一ラウンド
それから俺と咲は二人で色々なアトラクションに乗った。どれもこれも長い待ち時間を並んでイライラしている人たちの横を、手を繋いで優雅に歩きぬけていくとなると周りの視線があり得ないほど俺たちに刺さる(少なくとも俺の心には多大なるダメージを与えた)。
この調子でいくと本当にいつ殺されてもおかしくない。
そんな時間はあっという間に過ぎていきお昼。普通なら開園からこの時間までだとアトラクション三個も乗れればいい方だが、俺たちは既に八個も乗っている。あり得ない。
そしてそんなVIP待遇は昼食とて例外ではない。
当然十二時というお昼時なら飲食店だって大混雑。それこそ店の外まで行列の出来るところがそこかしこに見られるレベル。
それゆえに俺が普通に家族と来たときは昼食を早めにしたり敢えて遅くしたりと色々工夫を凝らしているのだが。
「何をしているんですか圭様。そんなところに並ぼうとして」
咲がこの時間にご飯を食べたいというから諦めて行列の最後尾に並ぼうとする俺に対し、彼女はそれを止めた。
「そんなわざわざ並ぶ必要なんて無いのに」
そう言って咲は俺を引っ張りながら並んでいる人の横を過ぎていく。
「いやいやいや、ちょっと待て……」
そんな俺の言葉に耳を傾けることも無く裏口に回り、店の人を呼びつけては注文を済ませてしまった。
「ほら、何も問題なかったですわ」
と。社会的に色々問題ありまくりなんだよな……。
そしてすぐ、まさかのテーブルとイス二つもセットで料理がやって来た。
「ありがとう」
「いえ、桐原お嬢様」
さも、それが当然の風景のように、まるで正規のルートで購入したような自然すぎるやり取りで執り行われるんだからもはや怖いったらありゃしない。
そんなズルまみれの超VIP待遇デートは午後も風の如く過ぎていき気が付けばもう日が落ちるほど。
「でも、お楽しみはこれからですわ」
「楽しみ?」
「えぇ。このTCランドに来たら夜のパレードは見なくてはいけませんもの」
しかしそんな期待とは裏腹に周りの天気は少しづつ暗くなり、次第にポツポツと雨が降り始める。
そして、場内アナウンスで最悪の言葉を告げられるのだった。
「うぅ……よりによって雨が! どうして。どうしてなの!」
「んな事俺に言われたって……。それに言葉遣いはそれでいいのか」
俺に指摘されプライベート使用の言葉遣いだった彼女は顔を真っ赤に。
「はぁーー‼ わ、わたくしとしたことが」
そんな風にしばらく慌てふためく咲を見かねたのか、おそらく彼女の付き人の一人と思しき男が彼女によって来て耳打ち。その後しばらく何かを二人で話しているようだったが結果が出たのか、リムジンに連れ込まれることに。
まぁ普通に考えてパレードが無くなって家に帰ろうという話になったのだろう。
「あ~あ。もう少し圭様と一緒に居たかったですわ」
それに対して相槌をするように「そうだね」と。
「ですからわたくし考えたのですがこれから圭様の家に行くというのはどうでしょう?」
「あぁそれはいい――――ってえぇぇ!! お、俺の家に行くのか」
最初は半分眠気にも襲われながら適当に返していたが、後半の勢いったらありゃしない。
何か飲み物でも飲んでいたら吹き出しているレベルだ。
だが、そんな俺に対しても咲は至って冷静に。
「えぇ長く一緒に居ることが出来るならそれが一番かと。今日は圭様のお宅にも誰もいらっしゃらないようですし」
って何で俺の家の事情知ってんだよ。確かに今日は家族総出で家には誰もいないし、もはや今夜帰ってくる予定すらない。
ただそんな情報は一度たりとも口にはしてないし……。
「という事で異論はありませんわね」
そうしてこれから俺と咲のデート第二ラウンドが始まるのだった。
自分で書いていてもデートあっという間すぎるでしょ