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小玉スイカに飾り切り

 ホウ酸ダンゴを作り終え、暫しの休憩を取った俺は、今日わざわざ店が始まる5時間も前にやって来た目的の為の作業に取り掛かる事にした。


 調理台の隅に置いたままにして置いた、大将の営む果物屋で帰りがけに見付けて自腹で購入してきた、小玉スイカを袋から取り出して、まな板の上に乗せる。


 「さて……久し振りだから、上手く出来るかな? 念のため1個余分に買ってきたが……」


 俺は一つ自分の頬を両手で軽く叩き、自分に気合いを入れ直す。


 小玉スイカのお尻側の所を少しばかり切り落とし、スイカの据わりを良くしてから、ペティナイフとカービングナイフ、そしてカッティングナイフの用意を済ませた。


 先ずはペティナイフを使い、スイカの余分な皮を剥いて行く。

皮が剥けた後は、カービングナイフに持ち変えて、出来上がりを頭の中で思い浮かべながら、サクリ、サクリと刃物を動かしていき、飾り切りを続ける。

一段階目の飾り切りを終え、ナイフを動かす手を止めた後に、切って作った飾りをスイカをクルリクルリとまな板の上で回しながら、出来映えを確認していった。


 「よし! 久し振りだからどうかと思ったが、ちゃんと手は覚えていてくれたようだな」


 ミス無く一段階目の飾り切りを成功させた俺は、ちゃんと覚えていた事に安心感を覚え、先程までよりは遥かに気持ちも楽に、次の飾り切りの作業に入った。


 二段目の飾り切りを終え、三段目の飾り切りに入る。

三段目の飾り切りを終え、四段目の飾り切りに入る……


 必要な分だけの飾り切りをスイカの皮と果肉に刻んでいき、俺は1時間程の時間を掛けて、スイカのカッティングを終わらせた。


 俺のカッティングにより、スイカに咲いた一輪の大きなバラの花。その出来映えをあらゆる角度から丹念に観察していき、何処にもミスが無い事、全体のバランスも悪く無い事を認めると、俺はカービングナイフをまな板の端に置いて、大きく息を吐き出した。


 満足のいく出来上がりになったスイカをそっとトレーの上に乗せ、そのまま上から乾燥を防ぐ為に軽くラップを被せた後に、冷蔵庫の中へと入れた。

この調子なら、次も何とか出来そうだな。

そんな根拠の元に、予備として買って置いたもう一つの小玉スイカをまな板に乗せ、バラとはまた違った飾り切りを施していく。


先ずはスイカの特徴でもある、外側のシマシマ模様をペティナイフを使い削り取っていく。その下にある薄い緑色の普通は食べない部分がスイカ全体に現れたら、スイカの側面を少しだけ切断して、スイカの据わりを良くした後、全体の5分の1程の所にナイフを入れスイカを切断する。


 そして、切り落とした5分の1分のスイカはそのままに、まな板の上に乗っているスイカの赤い果肉を、フルーツボーラーを使い丸く切り抜いていった。


 ある程度、丸く切り抜いたスイカの果肉が揃うと次に、ペティナイフを使い、大雑把に大胆にザクザクと他の果肉も切り出していく、少し果肉が皮の回りに残るようにして、切り出しスイカで出来た器を完成させた。


 完成したスイカの器の中に丸く切り抜いたスイカ果肉を戻しておく。大雑把に切り出した使わないスイカの果肉は、今日の賄い飯の時にでも、食後のデザートと言う事にでもして、若手のホスト連中に処理して貰おう。


 俺はペティナイフからカービングナイフへと持ち変え、スイカの器とスイカのフタの両方に飾り切りを、どんどんと施していった。

今回は、花等と違いただの格子模様を彫るだけなので、作業自体は簡単だ。どんどん格子模様が出来上がっていき、器とフタの飾り切りを終えた。


 そして、最後にこの飾り切りで一番の難点であるフタへの文字の切り出しに取り掛かかる事になるのだが、ここで俺はナイフを動かす手を止め、考えに没頭する。


 「さて……何て彫るかだな……」


 暫くの間、熟考した俺は、候補を二つまでに絞り込んでいた。


 「まぁ……失敗しても問題は無いし、あえて面倒くさい方にするか……」


 こんな理由で、フタに刻む文字を決めた俺は、カービングナイフからカッティングナイフに持ち変えて、文字を彫り進めていった。


 30分程の時間を掛けて、文字の彫り込みを終わらせた俺は、次に冷蔵庫の中から、オレンジとパイナップル等の果物を取り出し、スイカの器の中に入れる、丸い切り抜いた果物を作っていった。


 丸く切り抜いたオレンジとパイナップルが複数個出来た後、器にしたスイカの中にそれらを入れ、文字を刻んだフタを被せて、バラを刻んだスイカと同じようにラップで包んで冷蔵庫の中へと入れた。後は、出番が来るまで冷やしておくだけだ。


 そして俺は、余ったオレンジとパイナップルを、制作者特権を使い、美味しく戴きながら、疲れた体に果物の持つ甘味を味わい、癒していった。

 

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