ひじきと姫神とラーメンと
今日買い替えたばかりのスマホで書きましたが、慣れるまで打つのが遅くなってしまいそう(笑)
ひじき君が外回りで約束していた客も無事に店に来てくれた。
そして、俺の作ったチョコレート菓子のオツマミ達にも出番が来て、きっと可愛らしいクマさんやカエルちゃん達を気に入ってくれた事だろう。
その後、俺は何時もの通りにキッチンで、オーダーが通る度にオツマミやフルーツの盛り合わせなどを作り何時もと何ら変わらない一日を過ごして行った。
オーダーストップが掛かってから後片付けをして、閉店時間を迎えた。何時もならさっさと帰るのだが、ひじき君のその後が気になりキッチンの裏口から出ずにカウンターの方へと向かった。
カウンター前には数人のホスト達が集まり話をしたりしている。俺はその中からひじき君の姿を見付けると、声を掛けてカウンターの方に呼び寄せた。
「今日来た客、どうだった?」
『はい、氷室さんの作ってくれたチョコレートにスゴい喜んでました。後、シャンパン本当にありがとうございます』
そう会話を交わした後に、俺は今後はひじき君を指名してくれそうかを聞いてみた。
『う~ん……難しいかも、帰りに【送り指名】されなかったので』
俺はホストクラブで働くのは今回が初めてだ。ひじき君の言った送り指名という物が分からずに、ひじき君に聞くと。
初めて来た客は帰りに送って貰うホストを普通は指名をするらしい。そして初めての時に送り指名されたホストが、今後はその客の担当ホストになるという事らしい。
これは、ホスト同士で客の取り合いにならない為の決まりごとらしい。
そしてひじき君は、その送り指名が掛からなかった事から、今後、今日来た客がまた来ても、フリー扱いになると言う事らしかった。
「そっか~でもまだ分からんのだろ?」
『そうですね、まだ分かりません』
そう言ってひじき君は、少し元気が無かったようだが、何時もの明るいひじき君に似合う笑顔を見せた。
「今日は俺と一緒にラーメンでも食いに行くか」
俺がそう声を掛けると、ひじき君は。
『氷室さんカレーってまだ残ってません?』
そう聞いてきたのだが、残念な事にさっき店長がキッチンに片手にスプーンを握りしめてカレーを食いに来た。しかも、細い体のどこに入るのか知らないが、カレーを山盛りで2杯も食ったおかげで、カレールーもご飯も綺麗に無くなっていた。
俺がカレーは全部店長が食ったという事を伝えると、とても残念そうな表情を見せていた。そんなにカレー好きなのか? コイツ……
そんなやり取りを聞き付けた他の若手のホスト達も、ラーメン食いに行きましょうと話に乗ってきた。そこで俺は。
「いいけど、割り勘だぞ? 俺は上位のホスト達みたいな高給取りじゃないから」
そう言うと全員が声を上げ笑い【それじゃ割り勘で】そう言ってくれたのだが、そんな俺と若手のホスト達のやり取りが聞こえていた、店のNo.1である【姫神楓】が突然話に割り込んできたと思ったら。
『氷室さんラーメンを若手のホストと食いにいくなら、俺も一緒に行きますよ、そうしたら俺がコイツ等の分を出せるし』
そう言ってきた。まあ別に姫神が居ても何も問題は俺には無い。もちろん若手のホスト連中にも割り勘から奢りに変わったので文句なんかある訳が無かった。
俺と姫神、若手のホスト連中という集団で若手のホスト達がよく行く美味いと評判のラーメン屋まで歩いている時に、俺はふと頭に浮かんだ事を隣を歩く、ひじき君に聞いてみた。
「なぁひじき君、姫神ってお前ら若手のホストによく奢ってるのか?」
『はい! 姫神さんが一番多く俺たちに飯を食わせてくれますね、何時もはお客さんとアフターに出掛けちゃうから、お金だけ貰い、そのお金でみんなで飯を食いに行ってます』
俺はハッキリと言えば、ものすごく意外だと思った。
姫神と言うホストは、自分の売り上げ、自分を高める事以外は興味が無いタイプの男だと思っていたからだ。
「そっか~あの姫神がなぁ……」
俺が呟くようにポツリと言った言葉が耳に届いたのか、ひじき君は俺に。
『うん? 氷室さん何か言いました?』
そう言ってきたので、俺は何でも無い。そう答え、ラーメン屋への道をみんなと一緒に歩いて行った。