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店長からのリクエストの仕込み

 店に到着した俺は何時もと変わらず裏口から直接キッチンに入り照明とエアコンを入れた後、買ってきた食材と荷物を調理台の上に置き、紙袋の中からタッパを取りだしてカレーのルーを鍋に移した後、ガスコンロに鍋を置いて、温め直しを始めた。


 時折、お玉を使い鍋の中身のカレールーをかき混ぜて、焦げ付きを防ぐ。冷えて固まっていたルーが温まりトロミが付いて、十分に温まったのを確認して火を止め鍋にフタを被せておく。


 賄い飯のカレールーの温めを終えた俺は、毎日のルーティンになっている開店準備と炊飯を始める。


 全ての準備が終わった俺は、タバコの箱から1本タバコを取り出し火を点けた後、タバコの箱とライターを定位置になりつつある調理台の隅に置いた。


 タバコを咥わえたままキッチンからカウンターへと移動した俺は、カウンターの上に積まれている灰皿を1つ取り火の点いたままのタバコを灰皿に置いてから、グラスにコーラを注いだ。


 そのまま、グラスと灰皿を手に持ちキッチンへと戻った俺は、ほんの少しタバコを1本吸いきるまでの時間、作業を止めて休憩を取る。


 フラりと調理台に置いたビニールの袋の中から、100円均一の店で購入した【シリコンモールド】を手に取り、その型の造形を見ながら。


 「最近は可愛らしい物も増えたんだな……」


 そんな独り言を漏らしていた。


 5分ほどの時間、タバコとコーラを楽しんだ俺は、本格的な仕込みに入る為に、壁に掛けてあるエプロンを取り身に付けて、調理と言う戦闘に自分のモチベーションを移行させていく。


 先ずは、購入してきたシリコンモールドを全て包装された袋から取り出し、流し台の中に入れ洗剤をスポンジに付け細部まで綺麗に洗う。洗った後は、布巾を使いしっかりと水気を切っておいた。


 調理器具等を入れている棚の中から【フードプロセッサー】を取り出した俺は、調理台に付属しているコンセントにコードを差し買ってきた薄皮が剥かれた【ヘーゼルナッツ】を投入してスイッチを入れた。


 ガリガリというナッツを砕く音が聞こえなくなるまで十分しっかりとヘーゼルナッツを砕いた後、中ぐらいのボウルの中に砕けて、ペースト状になったナッツを移し変え、置いておく。次に鍋に水を張り火に掛けてお湯を沸かしていく。


 お湯が沸くまでの時間を使い、小さなボウルを4つ用意して、ボウルの中にそれぞれ買ってきた4種類のチョコレートを入れていった。ビターチョコレートとミルクチョコレートは少し多目に。ストロベリーと抹茶チョコレートは少な目に。


 沸いたお湯を大きなボウルに適量流し込んだ後、チョコレートを入れた、ボウルを重ねシリコンのヘラを使いチョコレートをかき混ぜながら、湯煎で溶かしていく。


 「あっミルクより先にストロベリーを溶かした方がいいのか」


 初めてやる作業の為に、俺は溶かす順番と言う凡ミスを犯している事に気付き、湯煎しかけていたミルクチョコレートのボウルから、ストロベリーチョコレートの入ったボウルに湯煎を変えた。


 ストロベリーチョコレートの量自体が少な目な事もあり、直ぐに全てのチョコレートが湯煎により溶けドロドロになった。

 

 そこで俺はシリコンモールドの中に溶かしたストロベリーチョコレートを入れようとしたのだが、クマさんの型の鼻の部分だけに、ストロベリーチョコレートを流したい。上手くやるにはどうしたらいいか? と言う問題に当たってしまい、暫し頭を悩ませた。


 「何か良い物ねぇかなぁ……」


 とキッチンの周囲を見渡していた俺の目に、爪楊枝を入れているケースが目に入った。俺は爪楊枝を1本取り出し、溶けたチョコレートの中に爪楊枝を入れ、爪楊枝の先にチョコレートを付けて、クマさんの鼻の部分にポタリポタリと垂らしてみた。


 「よし! 上手くいった」


 こうして、クマさん型4つ全ての鼻の部分にピンク色をしたストロベリーチョコレートを流し込んだ俺は、1つだけ残っている何もチョコレートを入れていないクマさん型の中に、スプーンで掬ったストロベリーチョコレートをドンドンと流し込んでいく。

最後に少しだけ、チョコレートを均す意味も含めて、トントンと調理台にシリコンモールドを叩いた後、冷蔵庫の中に入れた。


 次に俺は先程と同じ要領で少量の抹茶チョコレートを湯煎で溶かし、今度は、3つ型のある可愛くデフォルメされたカエルちゃんの型の中の2つに抹茶チョコレートを流し込み、またトントンと叩いて均した後、冷蔵庫には入れずに脇に置いておいた。


 そしてミルクチョコレートを湯煎した後、残った1つのカエルちゃんに流し込み。その後続けて、小さなハートや星などの型をしているシリコンモールドに、溶かしたストロベリーチョコレート。抹茶チョコレート。ミルクチョコレート。を使い、型を取っていった。


 「カエルちゃんとハートは、これでよし」


 そう言って2つのチョコレートが流し込まれたシリコンモールドを冷蔵庫の中へと入れる。


 そして今入れた2つのシリコンモールドと入れ替えるように、最初にクマさんの鼻の部分だけにストロベリーチョコレートを流したシリコンモールドを冷蔵庫から取り出し調理台の上に置いておく。


 溶かしたミルクチョコレートが少し固まっていたので、俺はまた湯煎してしっかりと溶かした後、フードプロセッサーを使いペースト状にした、ヘーゼルナッツを半分溶けているミルクチョコレートのボウルの中に入れ、シリコンのヘラでムラが無くなるまでしっかりと混ぜ合わせた。


 ヘーゼルナッツのペーストを混ぜ込んだミルクチョコレートを、スプーンを使い、最初に鼻だけピンクにしたクマさんの型の内2つの型に、そのナッツ入りのチョコレートを流し込んでいく。


 その後は、同じ要領でビターチョコレートも湯煎で溶かし、ヘーゼルナッツのペーストを混ぜ合わせ、残った2つのクマさんの型に流し込む。


 これで全てのシリコンモールドの中にチョコレートを流し込んだ俺は、調理台の上にあるシリコンモールドを全て冷蔵庫に入れ冷やして固めていった。


 

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