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誕生会の為の仕入れ

 「うーん……捨てずに取っておいたはずなんだがなぁ……」


 俺は今、自分の部屋の収納の中に入っている物を全て引っ張り出すぐらいのイキオイで、ある物を探していた。


 雑多な物を詰め込んだ段ボール箱を一つ一つ開けては中を確認していくが一向に目的の物が見付かる気配が無かった。


 「実家に置いたままで、持ってきて無かったかな?」


 そんな考えも頭の中を過り始めた頃、収納の奥の壁がそろそろ見え始めて来るぐらい段ボールを引っ張り出した時に、ようやく目的の物が入っている段ボール箱を俺は引き当てる事が出来た。


 「やっと見付かったか……しかし……またこれ元に戻すのかよ」


 そんな独り言が自然と口から出るぐらい、収納がある周囲の床には段ボール箱等の荷物が散乱している。俺はまた一つ一つ段ボール箱等を手に持ち担ぎ上げながら、収納の中へと戻していった。


 引っ張り出した荷物を何とか収納の中へと戻し終わった俺は、目的の物が使われずにいた、それなりの時間に被ってしまっていた埃や汚れを綺麗に洗い落とす為に、自分の部屋のキッチンへと向かった。流し台の上に元から備え付けてあった棚の端から、折り畳まれていたシリコン製の洗い桶を取り出した俺は、流しの中に洗い桶を置き蛇口をひねり水を溜めていく。


 そこに目的の物を沈めた後、シリコンへの影響が少ない酵素系の漂白剤を入れ、漬け置き洗いを行った。そして、漬け置き洗いの出来ない機械部分を俺は洗濯したばかりの布巾を使い洗剤を付けて、綺麗に汚れを拭き取っていった。


 消毒も兼ねた洗浄が終わったそれらを組み合わせ、コンセントを差した後に動作確認もしてみたが、どこも問題無く動いてくれた事に俺はホッとする。これが使えなかった時は、せっかくの計画の大半が台無しになってしまうためだ。


 俺は昼過ぎまで自分の部屋で過ごした後、引っ張り出した物を小脇に抱えて、買い出しの為に部屋を出た。


 「先ずはやっぱり大将の店からだな……」


 頭の中で効率的な買い物先の順番を組み立てた俺は、大将の店目指して車を走らせた。

 

 初夏の筈なのに既に外は真夏を思わせる程の熱気に包まれ、アスファルトの道路からは、陽炎の様にユラユラと空気の歪みまで見えている中、エアコンを全開にした車に乗って大将の店までやって来た。車から降りると外気の熱気に一気に汗を滲ませる。俺は熱気から逃げ出すように、果物が良い保存状態を保つようにと、涼しくしている大将の店の中へと走って逃げ込んだ。


 「大将~こんちは~」


 『おっ氷室君こんにちは、今日も沢山買っていってね』


 大将と何時もの何気無い挨拶を交わした後に俺は店の入り口横に積み上げられている、買い物カゴを一つ手に取った。


 今日は、店で普通に出す分のフルーツは冷蔵庫の中に十分なストックがある為、今日の夜に行われる早乙女の客の為に開く誕生会に使うフルーツだけを買いに来た。


 最初にキウイフルーツを手に取った俺は、一つ一つを丹念に手に取りキウイフルーツの張りを確認しながら、果肉がまだ少しだけ硬めの熟し切って無い物だけを選びカゴの中に入れていく。


 次に、皮に熟した時に現れる黄色に変色が起きてないパイナップルを一つカゴに入れた。そして、その段階で大将が俺に声を掛けてきた。


 『何? 熟れて無いのが要るの?』


 流石に大将には、俺の行動は筒抜けだったようで、的確に俺がどんなフルーツを求めているのかを、推察してきた。


 「そそ、ちょっと酸味の強い物が欲しくてね、あっ大将アレある?」


 『あれ? 何? 多分あるよ』


 そう言って欲しいフルーツの名前を言う前から大将は、あると言ってきた。まぁこの店ならほぼ間違いなくあると俺も思っているのだが……


 「大将、ストロベリーグァバとサラク頂戴」


 『おっどっちもあるけど、予想外な名前が出てきたね、ちょっと待ってね奥に置いてあるから』


 大将は俺にそう声を掛けた後に、店の奥の貯蔵庫に向かって行った。


 「流石大将の店だな……どっちも普通に置いてるとは……」


 目的のフルーツを全て購入した俺は、車の後部座席に乗せて置いた大きなクーラーボックスの中に買ったフルーツを入れて保存しておくと、車のエンジンを掛け次の目的地の店に車を走らせた。


 次に向かったのは、前に一度だけ立ち寄った事のあるお菓子屋さん。この店は菓子問屋の直営店らしく色んな種類の菓子が大量にそして格安で買える。菓子を買うならココに来い。と勝手に思ってる店だ。


店内を巡り目的に合った物を見付けた俺はカゴに余っても足らないよりは良いか。の考えの元に少し多目に、正規品を作る際に出来る割れてしまった物や端っこの物等が袋に詰まれている、徳用チョコレートをカゴの中に入れ、他にも必要になるお菓子を探しに店内を巡る。


 ウェハースを手に取った後に俺は、商品棚代わりの段ボールの上に山積みになっているマシュマロの袋を眺めながら。


 「定番と言えばド定番ではあるんだよな……まぁ少し買っとけば間違いないか……」


 そう呟いた後、マシュマロの袋を一つ取った。そしてレジへと向かう途中で目に入った菓子の袋を一つ追加で買う事にした。


 「忘れるとこだった……これこれ美味いんだよな……」

 

 俺は表面をギザギザの波形にしてあるポテトチップスの袋を一つ追加してレジに持っていき購入を終わらせた。


 必要な食材を全て購入した俺は、準備と下拵えをする為に、夕方近くの時間から店へと向かって行った。


 

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