ヨーグルトとフルーツ
その後、俺がホスト達の為にと言う裏の目的もあって行った珍しいフルーツと言うプレゼンが発揮されたのは、開店してから暫くの時間が流れてからだった。
ヘルプに着いてる若手のホストが何時ものように、キッチンへと顔を出して俺にオーダーを通していく。
『氷室さ~ん、1番に例の珍しいフルーツの盛り合わせお願いしま~す』
俺は、何も作業をしていない時には必ず使っているパイプ椅子から立ち上がり、パイプを畳みながら若手ホストに了承した事を伝えた。
「さて、ようやくか予想よりは時間も掛かったな」
冷凍庫のトビラを開けて、中から先程切って作っておいたメロンで出来たカゴを1つ取り出すと調理台の上に乗せ、フルーツの盛り合わせに使用する他のフルーツ類も冷凍庫から出していく、その中には当然客からリクエストが来た珍しいフルーツ達も含まれている。
ここで俺はフルーツを切る手を止めて、握っていたナイフをまな板の上に置いた後、キッチンからカウンターへと向かった。
カウンターの隅に置いてあるマイクを掴み、1番テーブルに向けてリクエストを飛ばす。程なくしてやって来たオーダーを持ってきた若手のホストに向けて。
「ちょっと客に確認取ってきて欲しい事が出来た、客にヨーグルトは好きかどうか聞いて来てくれ」
俺の頼みを聞いた若手ホストは、フルーツの盛り合わせに何でヨーグルト? と言った表情を見せていたが特に何も言わずに2つ返事で了承し、テーブル席に座る客に確認をしに行った。
2分程経った後、確認を頼んだホストが俺が待つカウンターに戻ってくる。
『氷室さん、ヨーグルト好きだそうです』
「そっかありがとう、それじゃ今から作るから出来たらまた呼ぶからな」
そんな簡単なやり取りの後、ホストはテーブルに俺はキッチンへと別れた。
キッチンへと戻った俺は、キッチンに置かれている食器棚の下の引き戸を開けて、中を物色し始める。
「初日にチラリと確認した時は、あったと思ったんだがな……おっあったあった」
食器棚の引き戸の奥から俺が引っ張り出してきた物は、少し型遅れなデザインをしているミキサーであった。
ミキサーを取り出してコードをコンセントに差し込み、ちゃんと動くかの動作確認をしてみると、何処にも異常等は見られず動く事が確認出来た。
ミキサーを綺麗に1度洗浄した後、ミキサーの中にヨーグルト。牛乳。カゴを作る際に切り取ったメロンを少々。ハチミツを適量入れて、ミキサーのフタをしっかりと手で押さえてから、中身を高速で撹拌していく。
こうして出来上がった【手作りの飲むヨーグルト】を調理台の上に置いておき、撹拌によって出来た小さな泡が消えるまで落ち着かせておいた。
次に珍しいフルーツの中から、ドラゴンフルーツの中身が真っ赤な方を1つ手に取り半分に切断し、皮と果肉を切り離す。ドラゴンフルーツの皮は意外と柔らかく手で剥く感じで綺麗に果肉だけを取り出せる。真っ赤な見た目インパクトのある果肉を一口サイズに切り分け。その他にメロン。バナナ。等も同じ一口サイズに切っていく。
ランブータンを3つこちらも厚い皮の真ん中に果肉にナイフが入らないよう注意をしながら、切った後、皮に包まれていた真っ白な果肉を取り出した。その果肉の真ん中にナイフを刺し入れ、半分に果肉を切ってしまわないように切れ目を入れて中の大きな種だけを押し出し食べやすくした。
全ての具材を一口サイズに切り終えた俺は、メロンで作ったカゴの中に手作りした飲むヨーグルトを、半分程静かに注ぎ入れた。
そして、その中に一口サイズに切り分けたフルーツを静かに1つずつ落としていき。最後にストローを2本差してメインになるフルーツを完成させた。
なるべく底の平らなフルーツ皿の上に、飲むヨーグルト入りのメロンのカゴを盛り付けた後、今度は果肉が白いドラゴンフルーツを取り出して、先程と同じように半分にカットする。また、皮と果肉を離した後、今度は果肉を【くし型】になるようにカットを施した後、皮を器に見立て盛り付けていく。
フルーツ皿の上にメロンとのバランスを考えながら、ドラゴンフルーツを配置した。そして彩りのアクセントにスライスしたスターフルーツを並べた後に最後の仕上げとして、皮だけを切ったランブータンを皮と果肉の両方が見えるように、皿に盛り付けて珍しいフルーツを使ったフルーツの盛り合わせを完成させた。
見た目がウニみたいなランブータンを皮ごと盛り付け、その見た目と見た目に似合わない濃厚な甘味を持つ果肉と言う、客にインパクトを与えるであろう細工が、このフルーツの盛り合わせの本当のメインかも知れないな……
俺はそんな事を思い、このランブータンを見た時の客の反応や食べた時の反応なんかを、勝手に想像して独りニヤけていた。
出来上がりをキッチンからカウンターへと移動させた後、運んで貰う為のホストを呼び出して、後をそのホストに託した。
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