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初日~その2~

 店長の案内で俺がこれから数ヶ月の間仕事をするキッチンへと案内して貰った。

キッチンの広さは4坪ぐらいの広さをしており、この手のお店としては、広くも無く狭くも無いと言った所だろう。


 目を引いて目立つのは巨大なワインセラーが鎮座している事だろう、チラリと中身をガラス戸から見てみると、ズラリと並んだシャンパンが保管されていた。それを見た俺は【流石ホストクラブだな】そう思った。きっと日にそれなりの数のシャンパンが売れるのだろう。


 後の設備は、何処の店にもあるような、業務用の冷蔵庫や冷凍庫。広めの流し台に調理台と言った所で特に目を引くような物がある訳でも無かった。


 「色々と見せて貰っても?」


 俺が店長に断りを入れると、店長は快く頷いてくれた。

それを受け俺は、冷蔵庫の中身を冷凍庫の中身を確認していく。

冷凍庫の中には、普通の店では考えられない程大量のフルーツ類が入っていた事に多少驚いたが、まぁありきたりと言えばありきたりな物だけが入っている。

調理器具等も一揃いはあるようで、これなら特に何かを新調なり、自分で用意して持ってくる必要も無いだろう。


 後、気になる点としては現在店で提供しているオツマミの種類と作り方、それに盛り付け方だけだな。これに関してはこの後に、教えて貰える予定となっている。まぁ多分ほとんどの物を作る事は可能だろうが、盛り付け方なんかに差はあるはずなので、そこら辺は聞いておく必要がある。


 キッチンの調理台の片隅に置かれていたメニューを見付けた俺は、どんなツマミを提供しているのだろうかと、パラパラとメニューを捲りながら眺めていた時に、店長から声を掛けられた。


 『それじゃ、最初の時に話した通りに1回だけ、フルーツの盛り合わせを作って貰ってもいいかな?』


 あ~そうだった。こればかりは俺がどの程度の物を作れるのか、実際に作って見せて欲しいと言われていた事を思い出し、了承の意味を込めて頷いた後、持参した紙袋の中から、愛用しているペティナイフと刃の形状の異なる何本かのカッティングナイフを取り出した。


 『それ……カッティングナイフってヤツだよね?』


 「そうですね、細かい装飾に向いてるので使ってます、それでどの程度の物を作ればいいです?」


 俺が店長に答えながら、作るフルーツの盛り合わせの出来上がりレベルを問うと、店長は店にあるフルーツを使い、作れる最高レベルの物を作って欲しい。そう言ってきた。


 最高級レベルか……ホストクラブで提供するなら、俺が作れる最高級レベルのフルーツ盛りは、合わないんだよなぁ……そう思い店長に更に確認を取る事にした。


 「えっと……最高級レベルで作るなら、提供する時間が数時間単位になっちゃうけど、それでも大丈夫です?」


 俺の確認の為の質問を聞いた店長は、俺の顔をマジマジと見つめてくる。そんな店長の顔には、コイツどんなレベルのフルーツ盛りを作れるんだよ? と言った疑問がアリアリと浮かんでいた為に、俺は苦笑いを浮かべながら、持参していたミニアルバムを取り出し、店長に渡した。


 中には、過去に俺が実際に作ったフルーツの盛り合わせや、カッティングしたフルーツの写真が納められている。


 スイカを丸ごと使った大輪花びらを咲かせた花。

リンゴを使い作った白鳥やパンダ。

色んなフルーツの表面に文字を刻んだ物。

他にも、沢山のフルーツの盛り合わせの写真とフルーツカッティングを施した後の写真が納められている。


 店長は、それらの写真を見て暫く固まっていたが、口を開いたと思ったらこう聞いてきた。


 『す……すごいね……これ全部作れるの? って言うか氷室くん、どこでこんなの作ってたの?』 


 あれ? 俺がここに来る経緯になった話し合いの時に、紹介者の先輩から聞いて無いのかな? 俺は言わなかったが聞いてるものとばかり思い込んでたよ。


 「うん? あ~ヒルテン・ホテルグループのヒルテン名古屋のラウンジで働いてた時に」


 『え? 氷室くんヒルテン名古屋で働いてたの?』


 まぁ……驚くよな普通は、世界中に500とかホテル持ってるグループのラウンジに居たようなヤツが、ホストクラブのキッチンに来たんだから。


 「まぁ、そうですね3年で辞めちゃいましたけどね」


 その後、30分程度で提供出来るレベルのフルーツの盛り合わせを作って欲しい。と店長から俺としては、かなりレベルを落とした注文が来たので、早速作って見せる事となった。


 皿等が入ってる食器棚からフルーツ盛りに適した皿を1枚持ってきて、冷凍庫の中を勝手に物色し、適当に数種類のフルーツを取り出し、フルーツの盛り合わせを作り始めた。


 「まぁ……見映え良ければ、割りと適当でもいいか……」


 そんな考えの元、本当に適当にフルーツをカッティングしていき皿にどんどんと盛り付けて行く。最後に、氷をアイスピックで細かく砕き、クラッシュドアイスをフルーツ盛りの周囲に散りばめて完成させた。


 適当に作ると言ってもそこは、お金を貰う物だから、それなりに集中して作っていた俺は、いつの間にかキッチンに、店長とは別の人間が増えている事も気付かなかった。


 出来上がったフルーツの盛り合わせを見て、新しくやって来た男がやたらと感嘆の声を上げる。この人誰? そう俺が思っていたら店長が紹介をしてくれた。


 『あっ……すごすぎて固まってたよ……ごめん、この人は、山本くんね、氷室くんと入れ違いで辞める事になってる人、今日は無理言って氷室くんにメニューの作り方を伝えに来て貰ったの』


 あ~なるほどね、この人が辞めるって言うから俺がここに来る羽目になった原因の人ね。俺は、コイツのせいで。なんて少し思いながらも挨拶を交わした。山本くんとやらは、ずっと俺が適当に作ったフルーツの盛り合わせを誉めてくれていた。


 

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