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2日目営業開始

 手伝いバイトの2日目になるホストクラブの営業が始まった。


 俺は初日と同じように、カウンターで自分が飲む飲み物を確保した後は、さっきまで使っていた灰皿を持って、さっさとキッチンへと引っ込んだ。 


 開店時間が過ぎれば俺は、裏方の人間へと立場が変わる。

あまり表に等は、出たくは無い。

昨日と同じように、パイプ椅子を取り出して調理台の上に、飲み物の入ったグラスと灰皿。自分のタバコとライターを置いて椅子に座って仕事が入ってくるまで待機を始める。


 待機を始めてから直ぐに、カウンターの方からキッチンへと向けて人が複数歩いてくる足音が聞こえてきた。

客はまだ来てないから、オーダーと言う訳では無いと思いつつ、俺はカウンターへと続くキッチンの入り口へと目を向けた。

そこには、ひじき君をはじめとした何人かの若手ホスト達が立っていて、どこか俺に遠慮気味に声を掛けてきた。


 『氷室さん、さっき先輩達から聞いたんだけど、俺達も見ていい?』


 なるほど、スイカを見たくてやって来た訳か。

俺は、ひじき君達の用事の内容を把握すると、冷蔵庫を指で指してから。


 「冷気が逃げるから、開けっ放しにするなよ、後触るな」


 そう注意点だけを言って、ひじき君達のしたいがままに任せた。

ひじき君達、若手ホストは冷蔵庫の中に入っているスイカ2玉を覗き込むように、次々と立ち位置を入れ替えて、眺めていく。


 見慣れ無いとそこまで珍しいもんなのかねぇ? そんな感想を抱きながら、若手ホスト達を眺めていると、フロアの方から客を迎える声が聞こえてきた。

その声が聞こえてる若手ホスト達は、慌ててキッチンから出ていった。


 そして俺は、そんな若手ホスト達を眺めるのを止めて、グラスを掴み一口飲み物を飲んでから、タバコに火を点けた。

そして、ホスト達が仕事をしているのを尻目に、俺だけがゆっくりとした時間を過ごそうとしていた時に、一人の若手ホストがキッチンへと顔を出してきた。今度こそはオーダーかな? そう俺が思っていたら、そのホストの口から。


 『氷室さん、バラのスイカのオーダー入ったよ8番ね』


 早いな……素直にそう思った俺は、火を点けたばかりのタバコを、少しだけ惜しみつつも、灰皿に押し付けて消した後に。


 「りょ~かい、それじゃ皿に盛り代えて他の飾りのフルーツ切ったりするから、20分ぐらい掛かるからな」


 俺から客に出せる物に仕上げる完成品が出来るまでに掛かる時間を聞いたホストは、頷いてからキッチンからフロアへと戻って行った。


 「さて……早速か……メインがバラだけに周りも花にするか……」


 俺は、冷蔵庫の中から彩りと実際に食べる分のフルーツを何種類か取り出して、愛用のナイフを手に、飾り切りを施していく。


 キウイフルーツの両端をペティナイフを使い切り落とした後、丁度真ん中で2つに切り分けた。皮と果肉の間に、カービングナイフを刺し込み、キウイ自体をまな板の上で転がしながら、皮と果肉を切り分ける。切り分けた果肉を厚さ3㎜程度にスライスしていき、スライスした物を切り分けた皮を土台に使い、1枚ずつ並べていく。2段目は、最初に並べた果肉と果肉の間に並べる。

そうやって3段目、4段目と花びらに見立てた果肉を並べ、最後に端の方をスライスした面積の小さな果肉を使い、花の芯になるように置いて、キウイで作ったバラを、2つ作った。


 次にオレンジを取り出して、キウイとほぼ同じ要領でバラの花を2つ作ると、スイカを乗せてもあまりが出来そうな大きめの皿を取り出して、スイカを乗せその周りを飾るようにして、オレンジとキウイのバラを乗せていく。


 空いてる空間に、砕いた氷を散りばめて、半分に切ったイチゴと、房から外した巨峰とマスカットを散りばめて、一つのフルーツの盛り合わせを完成させた。


 俺は自分で作ったばかりのフルーツの盛り合わせの出来具合を確認しながら。


 「これで10万円……俺に5万か……すげ~なホストクラブって所は……」


 そう思わず独り言を漏らした。


 出来上がったフルーツの盛り合わせを、慎重にキッチンからカウンターの上へと移動をさせた俺は、カトラリー類を用意した後に、オーダーが出来た時の決まりでもあるマイクを握る。


 「8番リクエスト」


 俺が店内に向けて、オーダーが出来たから取りに来いと報せると、程なくしてオーダーを持ってきた、ヘルプに着いた若手ホストがやって来た。


 「重いから何時もよりも慎重に運べよ、落としたら客にめっちゃキレられるぞ」


 俺が少しだけ若手ホストを脅かすと、そいつは慎重に歩みも遅く、フルーツの盛り合わせを運んで行く。俺はその後ろ姿を見て、思わず笑ってしまった。


 キッチンに戻った俺は、使った果物類の後片付けとナイフを洗い水気をしっかりと拭き取った後、何時ものパイプ椅子には座らずに、冷蔵庫へと向かった。この調子だと、スイカを器にしたフルーツポンチの方も、直ぐにオーダーが来そうだと思った俺は、そのまま周りを彩る果物の加工をする事にした。

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