魔装少女 起動
「今は周りに人など居らん!我がクロトを守る!」
頼もしい言葉だけど俺は知っている。ヴァイスの今使える魔法に攻撃魔法が無い事を。
「は……逃げ……ろ。」
言葉が上手く喋れない。
「くそぉ!我は親友一人も守れなくて何が魔王だ!」
ヴァイスは泣きながら結界魔法を使って鰐頭の舌の攻撃を防いでいる。
ヴァイスは俺の中から出て行ってしまったが、心の会話はまだ出来る。
(俺を置いて早く逃げてくれよ、カッコつかないだろ?)
「何を馬鹿な事を言っている!二人で家に帰るんだ!」
あぁ……俺の親友はカッコイイな、俺もそんな強さが欲しかったよ。
(最悪クロトだけでも生きて返す!)
……それは駄目だ。絶対駄目だ、俺の為にヴァイスが死ぬのは俺自身が許さない。なら、俺も死ぬ気で生きなければならない。
全身ボロボロだがヴァイスの肩に手を掛ける。そして限界ギリギリの体でヴァイスに声を掛ける。
「二人で……生きて帰る!」
「あぁ!二人で生きて帰るぞ!」
その為にはこんな所で死ぬ訳にはいかない。だとしたらやらなきゃいけない事はただひとつ
「「こいつをぶっ倒す!」」
その瞬間俺とヴァイスの体が光る。鰐頭も急に目の前が光に覆われ堪らず後ろに下がる。
俺達が光の玉になって一つになる。
「な、なんだ?」「これは……まさか!?」
ヴァイスが何か知っているような雰囲気だ。
「これは……忘れられた魔法!?」
「ロストマジック?」
「互いを信頼しないと発動出来ない魔法なのだが、我はクロトの為なら死ぬ覚悟があった。」
「俺はヴァイスの為に、死ぬ気で立ち上がった。」
「互いの為に死ぬ気がなければ発動できない条件だったとは……忘れられるのも納得だ。」
「とりあえずこれは発動中って事なのかな?体が痛くないし、ていうか光の玉?だし。」
「う、うむ発動中なのであろう。」
ロストマジックとやらが発動中なのは分かったけどこの先どうしたらいいのか。すると、ヴァイスが思い出した様に喋り始める。
「あっ!そうだそうだ!お互いが一番強いと思う物を思い浮かべてそれを口したら発動するハズだ!」
なるほどお互いを信頼してるからこそ合わせられるでしょ?って奴か。
「では、せーので行くぞ?準備は良いか?クロトよ?」
「あぁ良いぞ!」
「「せーの!!」」
あの鰐頭を倒す為、そしてヴァイスと生きて帰る為に俺が一番この世で強いと思う物は……
クロトと生きて帰る!そして我がこの世で一番カッコよくて強いと思う物は!……
「魔法少女!!」
「ロボット!!」
「「……」」
あれ?今絶対お互い違う事言ったよね!?今ロボットって言ったよね!?これはどうなるの!?大丈夫なの!?
えっ!?クロトは今なんと言った?魔法少女?我が見た魔法少女とはあの嵐(食欲魔王)だけだぞ!?
「ヴァイスこれ大丈夫なの!?明らかに違う事言っちゃったけど……」
「確かお互いに強いと思った物を口にした時にその口にした存在になる。という魔法なのだがこれはどうなるのだ?」
いや、その情報初めて聞いたんだが?てっきり強いと思った物を呼び出すとか召喚系の魔法だと思ってた。けど自分がその存在になるって知ってたら魔法少女とは言わなかったよ。
「いつまでもこうしてる訳にはいかん!やってみるしかないのだクロトよ!」
「ええい!ままよ!じゃあ後はあれか?その存在になるって事は変身!って言えばいいのか!?」
もうここまで来たら後戻りは出来ない。それに鰐頭ももうこっちに向かって来ている。
ヴァイスの言う通りやってみるしかないのだ。
「じゃあ次こそは合わせるぞ!」
「あ、あぁ!」
「「変身!!」」
そして光の玉は形を変える。