シルエットメイト
ほぼ全裸とはシルエッタの大事な所だけを黒い靄の様な物で隠している。
「なんで服来てないんだよ!」
トイレに行こうとしていたが、そんな事はどうでもいい。急いで脱衣所に向かいバスタオルを引っ掴んでシルエッタの元に戻り、バスタオルを掛ける。
「ん、ありがと、服、着るの、忘れてた」
いやいや、忘れてたじゃ無いでしょ?女の子なんだからそういう事はしっかりしないと。
「忘れてたって……服は着てくれよ……」
家の中でほぼ全裸で歩かれるとか心臓に悪いわ。
「ん、じゃあ着る」
そう言って、シルエッタの黒い靄が大きく広がり、靄がシルエッタを包むと俺がモールに行っていた時のパーカーと似た形の服を着ていた。
「これで、いい?」
「その靄、服になるのか……」
そんな事出来るなら風呂から出た時にやってくれ……
「とりあえずそれで良いから次からは気を付けてね?」
今後もこんな事が続いたら心臓が持たない。
「ふふっ」
なんだその笑いは、頼むからもう止めてくれよ?
「ホントに頼むよ?シルエッタも女の子なんだから裸を見せる様な事は慎んでね?」
「クロトは、私の事、そういう目で、見てるの?」
非常に困る質問を投げないでほしい。
見てると言えば変態のレッテルを張られる事間違い無しだし、見てないと言えばシルエッタに魅力が無いと傷つけてしまう可能性がある。こういう時どういう風にしたら乗り越えられるんだ……?
「シルエッタは可愛いんだからあまり俺を揶揄わないで欲しいな。勘違いしちゃいそうになるから」
シルエッタの頭を撫でつつ、言ってみる。これなら大人な対応って奴じゃないかな?
「……!?わ、わかった、気を付ける」
おっ?上手く切り抜けたか?
「じゃあ居間に戻りな?後はヴァイスが風呂に入るだけだし一緒にゲームでもしようか?」
先に俺はトイレに行かせてもらうけど。
「……」
返事は無いけど多分了解してくれたのだろう。
俺はトイレに向かい、戸を閉める。
「ふぅ」
レース中我慢してたから結構限界だったんだよね。
「クロト?」
戸の反対側からシルエッタが声を掛ける。ひょっとしてシルエッタもトイレしたかったのか?
「今出るからちょっと待って」
「そうじゃない、聞いて欲しい事、ある」
聞いて欲しい事?
「私、見つけた時、クロト、少し寂しそうだった」
「俺が寂しそう?」
「ヴァイス様と、私が出会って、クロト、一歩引いた感じだった」
まぁ仲間と再会するのに邪魔するのも良くないし?
「きっと、クロトは、ヴァイス様が、離れてしまうと、思った?」
確かに、シルエッタと再会したヴァイスは嬉しそうな顔をしていたから俺は無意識に疎外感をその時感じていたかもしれない。
「そう言われれば、俺は確かにあの時シルエッタとヴァイスはお互い嬉しそうだったのを見て、疎外感を感じていたよ」
子供っぽいとは思っている。だが、数少ない親友の一人が居なくなってしまうのでは無いかと思ったのも本心だ。だからあの時俺はヴァイスが出ていかない様にシルエッタに家に来ないか?と言ったのかもしれない。
「クロト、私の、本当の姿、見せてあげる」
ん?シルエッタの本当の姿?
「私達、魔人は、こっちの世界に来るとき、溶け込む為、人の姿になった」
という事は今のシルエッタは仮の姿だったのか。
「多分、クロトは、怖がる、でも、知ってもらいたい」
「どうして?嫌なら隠していても良いよ?」
嫌なら別に隠していても俺は気にしない。
「今日会ったばかり、だから、今なら、私を、追い出しても、問題無い」
仲が良くなってから自身の真の姿を見て怖がられるなら最初に受け入れてもらえるか、拒まれるか分かった方がダメージが少ないって考えか。
「嫌われるかもしれない、でも、私は、クロトと、友達に、なりたい」
彼女は嫌われる覚悟を持って俺と友達になりたい。そう言っている。なら俺は彼女の覚悟に応える必要がある。
「わかった、俺もシルエッタと友達になりたいし、受け入れたい。だから真の姿って奴を見せてくれ」
シルエッタの真の姿を俺は受け入れられるのかは分からない。だが、彼女は俺と友達になりたいと言った。
俺だってシルエッタと仲良くなりたい。ヴァイスの仲間全員と仲良くなりたい。だったら、たとえシルエッタの本当の姿が化け物だとしても俺は受け入れる。
「準備が出来たら言ってくれ。戸を開ける」
トイレから出たらシルエッタがどんな姿になっているかは想像出来ない。
「いいよ」
返事が聞こえた。俺はゆっくり扉を開ける。
目の前には蜘蛛と人間が混ざった様な姿をした生き物が居た。




