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プロローグ④

「遊馬さんこんにちは!魔物倒してきてお腹減ったので何か作って下さい!」


 いきなり家にやってきた襲撃者鷲崎蒼音(ワシザキアオネ)は近くの小学校に通う12歳の少女。ただし、只の少女では無く、魔法少女アルタイルの正体その人だ。


「やぁいらっしゃい今日は生姜焼きを作ってた所だから今準備するよ。」

 まぁさっき食べちゃったからまた準備しないとね?


「生姜焼き!私好きなんですよぉ」

 この子はやせ気味なのに食欲は旺盛なのだ。


「じゃあ居間で待っててね。」

 内心魔王様が何処に隠れたか分からないからドキドキしつつ、居間に蒼音ちゃんを通す。


「おっにく!おっにく!」


「今焼いてくるから待っててねぇ。」

 ふぅ。魔王様はちゃんと隠れられた様だ。後は嵐(蒼音ちゃん)が過ぎるまで何事も起きなければ良いんだが。


(クロト!クロトよ!聞こえているか?)

「はっぴょ」


「ん?どうかしましたか?」


「い、いやなんでもないよ。」

 いきなり魔王様の声が聞こえてきて変な声を出してしまった。


「そうですか。あ、さてはお肉が少ないとかですね?別に怒りませんよ今回の魔物は小型のスライムだったので実はそこまでお腹は空いていないのです!」くぅ~(お腹の音)

 はい、嘘だね。顔赤くして恥ずかしがってるけど今はそれがありがたい。


「お肉の量はいつもと同じだから安心して。」


 魔王様の声はいったいどこから聞こえてきたのかは分からないがいきなり喋りかけられたらビックリしてしまう。


(むぅ……それはすまなかった。今クロトの中に隠れているのだ。)

「は?」

 何言ってるんだこの魔王様は?


「ん?また何かありましたか?」


「あ、あぁご飯が若干少ないかも……」

 動揺を隠す為、咄嗟に口からでまかせを言う。


「そんなぁご飯が少ないなんて……」

 ご飯が少ないからってそんなこの世の終わりみたいな顔しなくても……


 兎に角、魔王様は現在俺の中に隠れているらしいがどうやって話しかけてきているんだろうか?

(あぁ今はクロトの体に憑依している様な状態なのだクロトの方からも頭に考えれば我に話しかける事も出来るぞ)


(こうかな?)

(そうだそうだ!やり方を教えてすぐ出来るとは中々センスがあるぞクロトよ。)

 魔王様の方はどうにかなりそうだ。後はこの食欲の魔王(蒼音ちゃん)をどうにかしないと。


 手早く豚肉を焼き、皿に盛りつける、そしてこんもりご飯と一緒に食欲魔王への贄として差し出す。

「どうぞ、生姜焼きとこんもりご飯に御座います。」


「うむ!くるしゅうないです!」

 ノリの良い子なので即興の寸劇にも乗ってくれる。

(我とキャラが被ってるではないか!?)

(今だけの寸劇だから大人しくしてて?)

(う、うむ……)


「いただきます!」

 そして食の魔王の闘い(おひるごはん)が始まる……!!


 ヒョイパクッヒョイパクッそんな効果音が聞こえてきそうな勢いで皿に盛った贄(豚肉)達がドンドン減っていく。ご飯の山もガリガリ削られていき、あっという間に完食してしまった。オイオイオイ瞬殺だよ。なんとも幸せそうな顔を見てしまうともう少し噛んで食べろとか言うのも憚れる。


 彼女曰く「遊馬さんの料理を食べる時は、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃダメなんです!」らしい。


「ふぅご馳走様でした!今日の料理も美味しかったです。また来週来ても良いんですよね!?」


「お粗末様でした。うん来週の日曜日も来て良いよ。」

 そう、これは彼女との約束なのだ。


「やった!また来週も必ず来ますね!遊馬さんの料理はとっても美味しくて本当なら毎日でも食べたい位なんですよ?」


「毎日は困るなぁ。」

 いや、ホントにすっげぇ食べるから食費を払ってもらっても一人で毎日用意するのはしんどい。


「遊馬さんと出会えて良かったですよぉ週一でもこんなに美味しい物を食べられるんですから。」


「まぁ美味しいって言ってもらえるのは嬉しいかな。帰りは気を付けてね?」

 ご飯食べさせてあげてる自分が言うのもなんだけど見知らぬ人にお菓子で釣られちゃいそうな危うさをいつも感じる。


「はい!ではまた来週絶対来ますね。」


「ホントに気を付けてね?さよならー」

 こうして週に一度の嵐(アルタイルの襲来)が去っていったのだ。

(本当に嵐の様な少女だったな……)


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